1 / 3
全部、嘘だった
1
しおりを挟む「は?本気とかありえねーだろ。昨日も弁当作ってきてさ、罰ゲームで付き合ってやっただけなのにマジきめー」
背中に当たる冷たい壁。
ひやりと、身体の芯から冷めていく感覚に落ちた。
…ぐらり、視界がぶれる。
「……え……?」
零した自分の声が、やけに鼓膜を刺激する。
(…『罰ゲーム』って言った…?)
確かに、そう聞こえた。聞き間違いではない。
…確かに、彼はそう言った。
今背にしている壁の向こうには、穂積がいる。
教室で、友人と話す恋人がいる。
”明日も会おうぜ。次は俺がデートプラン考えとくから。楽しみにしとけよ”
頭を撫でてそう優しく笑ってくれたのも、
”紘人といると楽しいっつーか、癒される、からさ…、俺、…男と付き合ったことないし、こんなの思うのも初めてで、けど、一緒にいたいと思う。”
照れくさそうに笑ってそう言ってくれたのも、
この二か月間…おれに向けてくれた言葉全てが、
『罰ゲーム』…だった…?
不思議と涙は出なかった。
それでも渇いた感情と、今見た、聞いた現実と、自分の心の落差で、平衡感覚を失う。
耳が、聞こえなくなれば良いのにと思った。目が見えなくなればと思う。
好きじゃないなら、最初から付き合ってくれなければ良かったのにと思った。
嬉しいと思った。楽しいと、彼といる時間が好きだと思ってしまった。幸せだと感じてしまった。
…あの瞬間の自分全てを、今すぐにでも捨て去りたいと思った。
「別れよう」
告げた言葉に迷いはなかった。
動かしにくいと思っていた頬と唇はすんなり動いた。
震えてはいない…震えない、躊躇わない、きっとこれで終われる。うまくさよならできる。ちゃんとできる、と俯いていた顔を上げる。
59
お気に入りに追加
110
あなたにおすすめの小説
手切れ金
のらねことすていぬ
BL
貧乏貴族の息子、ジゼルはある日恋人であるアルバートに振られてしまう。手切れ金を渡されて完全に捨てられたと思っていたが、なぜかアルバートは彼のもとを再び訪れてきて……。
貴族×貧乏貴族
こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件
神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。
僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。
だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。
子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。
ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。
指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。
あれから10年近く。
ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。
だけど想いを隠すのは苦しくて――。
こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。
なのにどうして――。
『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』
えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)
浮気三昧の屑彼氏を捨てて後宮に入り、はや1ヶ月が経ちました
Q.➽
BL
浮気性の恋人(ベータ)の度重なる裏切りに愛想を尽かして別れを告げ、彼の手の届かない場所で就職したオメガのユウリン。
しかしそこは、この国の皇帝の後宮だった。
後宮は高給、などと呑気に3食昼寝付き+珍しいオヤツ付きという、楽しくダラケた日々を送るユウリンだったが…。
◆ユウリン(夕凛)・男性オメガ 20歳
長めの黒髪 金茶の瞳 東洋系の美形
容姿は結構いい線いってる自覚あり
◆エリアス ・ユウリンの元彼・男性ベータ 22歳
赤っぽい金髪に緑の瞳 典型的イケメン
女好き ユウリンの熱心さとオメガへの物珍しさで付き合った。惚れた方が負けなんだから俺が何しても許されるだろ、と本気で思っている
※異世界ですがナーロッパではありません。
※この作品は『爺ちゃん陛下の23番目の側室になった俺の話』のスピンオフです。
ですが、時代はもう少し後になります。
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
お試し交際終了
いちみやりょう
BL
「俺、神宮寺さんが好きです。神宮寺さんが白木のことを好きだったことは知ってます。だから今俺のこと好きじゃなくても構わないんです。お試しでもいいから、付き合ってみませんか」
「お前、ゲイだったのか?」
「はい」
「分かった。だが、俺は中野のこと、好きにならないかもしんねぇぞ?」
「それでもいいです! 好きになってもらえるように頑張ります」
「そうか」
そうして俺は、神宮寺さんに付き合ってもらえることになった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる