穢れた世界に銃弾を～日常の無い復讐者たちの日常～

魔法少女

聡里と亜紀１

「ねぇ、かくれんぼは止めようよぉ」

　聡里は逃げた小林亜紀を追い、校舎から離れた位置にある体育館まで来ていた。彼女の背を追いかけ走っていた聡里だが、体育館の辺りで見失ってしまったのだった。

　この辺りに隠れているのだろうが、辺りには数本の木々とフットサルゴールなどの、授業で使うであろう道具が置いてあることで遮蔽物の役割を果たしていた。

「別に撃たないのにぃ」

　撃たなくていいのなら撃たない。元からそういう性格だった聡里は、今回の件でも銃を置いていこうとした程だった。竜聖にダメだと言われ、仕方なく銃を担いでいるに過ぎない。

　暗闇に目を凝らしていると、後ろから声がした。

「逃げ隠れしていたのは、皆から離れておきたかったからです」

　聡里の背後に現れた亜紀。

「そうなんだぁ」

　あくまでも笑顔。微笑みを崩さぬまま聡里は振り向いた。

　彼女の目に飛び込んできたのは、ゴシックの衣装を身に着けた亜紀の姿。その姿に聡里の目はハートになった。

「可愛い～♡」

　そう言ってものすごいスピードで亜紀に迫り、抱き付いた。

「え！？　ちょっ！　え！？！？」

　いきなり抱き付かれてはなす術もなく聡里の胸に、というよりも防弾ベストとタクティカルベストに押しつぶされて呼吸もままならない。

　なんとか首を動かし窒息から免れる。

「ぷは！　何なんですかいきなり！！」

　当然の抗議を受け、聡里は謝罪した。

「ごめんねぇ。可愛かったから、ついぃ」

　無理やり拘束から逃げ、亜紀は距離を取る。

「私たちは敵なんですよ。解ってます？　今のタイミングで殺せたのに、なんで」

　それには困った笑顔を返すしかない。聡里にとって可愛いは正義なのだ。目の前にゴシックドレスの女の子がいれば、無条件で抱き付きたくなるのが性さがだ。

「なんで、と言われてもぉ。可愛いものには抱き付きたくなるでしょ？」

「なりません」

「えぇ？」

　聡里の考えでは、こうやって話を長引かせていれば自分以外の皆が、他の子を確保してくれるだろうというものだった。