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魔法少女

悪態

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「いくら安価でもRPGの弾頭は、なかなか入手しづらいんだがな」

「警視庁で買ってくれるんじゃないのか?」

 撤収作業をしながら、竜聖と藤十郎が話している。

「あの死体の山、どうするんだろうねぇ」

 聡里の疑問に、

「研究機関が持って帰るんじゃねーの? 警察も絡んでるし」

 咲が答える。

 つばきは黙々と働いている。

 10メートルほど離れた場所に居る警察官十数名は、近寄ってくる気配が無い。

「強行突破したから、直ぐ拘束かと思ったが様子をうかがってるな」

 と、藤十郎。

「私たちに銃で撃たれたら怖いもんな」

 咲が笑う。

「依頼人から連絡が回ったんだろう。今頃統率を取られても遅いがな」

 竜聖がため息を吐く。

 すると、1台の高級車が警察官たちをかき分けて現れた。高級車は竜聖たちに近づいて止まった。

 後部座席のドアが開き、中から1人の男性が現れた。

「やぁ、こちらの不手際で済まなかったね」

 40代と思しきスーツの男性。つま先からネクタイまで高級さを漂わせているこの人物が綿貫慶心だった。

 一応の謝罪は口にしているが、あまり気にしていないだろう。

「いえ。撤収作業も終わったので、僕らは帰ります。」

「昼食くらいご馳走させて欲しかったんだが」

「他の依頼もありますから」

「そうか、ではまた今度」

「銃弾などの請求は後日送付します。では失礼します」

 事務的な態度と笑顔を見せ、竜聖たちはワゴンに乗り込む。

「あぁそれと、東京に出現した魔物は全部消滅したと報告があったよ。君らが倒したのが本体、親玉だったのかな」

 そんな事を知るはずも無いので、リアクションはしない。

 全員が乗り込み、ワゴンのバックドアを閉めたとたん、咲が悪態をつく。

「相変わらずいけ好かねーオヤジだ。こぎれいな格好で現場に来るなよ」

「いけ好かなくても依頼人だ。いつ裏切るとも知れないが、僕らが生きていくのには必要な人物だよ」

 竜聖がたしなめるが、納得はしていないらしい。

「私お腹空いたからぁ、ファミレス寄って行こうよぉ」

 咲の矛先を食へ向ける作戦の聡里。

「ラーメンが良い。この近くに行ってみたいお店がある」 

 無言だったつばきが口を開いた。

「お前滅多に主張しないくせに、主張したら絶対に譲らないよな」

 ラーメンに決定したがごとく店を勧める彼女を見て咲は笑顔になる。

「キャッ」

 突然、聡里が悲鳴を上げた。

「どうした?」

 咲が聞くと、

「今蜘蛛が咲ちゃんの肩にくっついてたからぁ」

 確認するも、蜘蛛はいない。

「まぁ、蜘蛛くらいどうでもいいか」

 気にした様子も無い咲に対し、聡里は蜘蛛を探している。

「ほら、車出すぞ」

 藤十郎はそう言ってアクセルを踏み込む。

 車内に弛緩した空気が漂うなか、シートの下に蜘蛛がいた。身体は真っ黒で、8つの目も口も無い不気味な蜘蛛だった。
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