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魔法少女
緊急
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平日は朝から学校なので、監視はしない。午後3時あたりに瀬戸邸を訪れて5時間ごとの待機。
舞花は、夕方まで友達を自室に呼んでお喋りに興じたり、鉛筆と紙がこすれる音だけが響いたり。
実に健全な小学生だった。
4日目の朝、監視を切り上げてきた聡里とつばきが事務所に戻って来た。
「監視終了だ。異常なし」
竜聖に報告して、車のキーも返す。
「朝飯いるか?」
藤十郎が咲とつばきに尋ねる。
「何か軽いもん作ってくれ。食ったら寝る」
「私はいい、寝る」
咲はソファに座り、眠るために部屋から出て行く。
事務所内に設置されている給湯室で、ベーグルを焼き始めた藤十郎。それを待ちながら、咲はテレビの画面を見る。朝のニュース番組では、動物園の特集が放送されていた。
『こちらが、つい先日生まれた赤ちゃんライオンです。カワイイですねぇ』
女性のリポーターがこれでもかと笑顔を振りまく。
咲としてはチャンネルを変えたいところではあったが、聡里が画面に食い付いているので、変えられない。
(変えたら怒るよな)
可愛いもの好きの聡里から可愛いものを奪うと物凄く恨めしい表情になるので、あきらめの気持ちを持ってリモコンから手を放す。
すると、
「ほらよ」
そう言って藤十郎が咲の前にベーグルと紅茶を置いた。
横半分に切られたベーグルは軽くトーストされ、具には目玉焼きと厚く切られたハムが挟まっていた。
いただきます。と言ってから咲はベーグルをかじる。
カリカリのベーグルに半熟の黄身。厚く切られたハムからも肉汁が出てくる。ソースにはマヨネーズを使っているが、藤十郎の特性なのか微かに酸味が強い。それが全体を引き締め、さっぱりとした印象を与える。
それを無言で食べきり、紅茶を飲み干した。
「さて、1眠りするかな」
ソファから立ち上がり伸びをする。大きく深呼吸をして、だるそうに事務所から出て行こうとした時、誰かの携帯電話が着信を知らせた。
「はい」
そう電話に出たのは竜聖だった。
咲は、嫌な予感と共に立ち止まり竜聖の方を見る。
「はい、はい。解りました。こちらも人員を、……全員ですか? 今抱えている案件があるので、…………。解りました」
そう言って通話終了のボタンを押した。
「緊急の依頼だ」
その一言で、咲の嫌な予感が現実となった。
つばきも起こされ、全員が事務所に集まり、竜聖から依頼内容が語られた。
舞花は、夕方まで友達を自室に呼んでお喋りに興じたり、鉛筆と紙がこすれる音だけが響いたり。
実に健全な小学生だった。
4日目の朝、監視を切り上げてきた聡里とつばきが事務所に戻って来た。
「監視終了だ。異常なし」
竜聖に報告して、車のキーも返す。
「朝飯いるか?」
藤十郎が咲とつばきに尋ねる。
「何か軽いもん作ってくれ。食ったら寝る」
「私はいい、寝る」
咲はソファに座り、眠るために部屋から出て行く。
事務所内に設置されている給湯室で、ベーグルを焼き始めた藤十郎。それを待ちながら、咲はテレビの画面を見る。朝のニュース番組では、動物園の特集が放送されていた。
『こちらが、つい先日生まれた赤ちゃんライオンです。カワイイですねぇ』
女性のリポーターがこれでもかと笑顔を振りまく。
咲としてはチャンネルを変えたいところではあったが、聡里が画面に食い付いているので、変えられない。
(変えたら怒るよな)
可愛いもの好きの聡里から可愛いものを奪うと物凄く恨めしい表情になるので、あきらめの気持ちを持ってリモコンから手を放す。
すると、
「ほらよ」
そう言って藤十郎が咲の前にベーグルと紅茶を置いた。
横半分に切られたベーグルは軽くトーストされ、具には目玉焼きと厚く切られたハムが挟まっていた。
いただきます。と言ってから咲はベーグルをかじる。
カリカリのベーグルに半熟の黄身。厚く切られたハムからも肉汁が出てくる。ソースにはマヨネーズを使っているが、藤十郎の特性なのか微かに酸味が強い。それが全体を引き締め、さっぱりとした印象を与える。
それを無言で食べきり、紅茶を飲み干した。
「さて、1眠りするかな」
ソファから立ち上がり伸びをする。大きく深呼吸をして、だるそうに事務所から出て行こうとした時、誰かの携帯電話が着信を知らせた。
「はい」
そう電話に出たのは竜聖だった。
咲は、嫌な予感と共に立ち止まり竜聖の方を見る。
「はい、はい。解りました。こちらも人員を、……全員ですか? 今抱えている案件があるので、…………。解りました」
そう言って通話終了のボタンを押した。
「緊急の依頼だ」
その一言で、咲の嫌な予感が現実となった。
つばきも起こされ、全員が事務所に集まり、竜聖から依頼内容が語られた。
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