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魔法少女
BGM
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「お疲れさん。電波は良好に受信してるぜ」
運転席に座る藤十郎がそう言って出迎えた。
竜聖と咲は後部座席に設置されている受信機に耳を澄ませた。
すると、ノイズと共に微かに話し声が聞こえた。
『もしもし。ええ、今帰ったわ。あの子の部屋に盗聴器を付けていった』
「どうやら電話中だな」
ちゃんと受信できるかを確認するため、少しの間聞き続ける。
『ええ、でも信じるしかないわよ。私たちには出来なかったんだから。――そんな事を言うんだったら、私に押し付けないで貴方も何か考えてッ!!』
「盗聴器があると知って喧嘩を始めるとは思わなかったな」
竜聖が微かに笑う。
「最近の盗聴器がよくできてるって知らないんだろ。部屋にさえ入らなきゃ聞こえないと思ってんだ」
咲は詰まらなそうだ。
「真剣に聞いてても疲れるだけだぜ? BGMくらいに思ってた方が精神的に楽だ」
藤十郎はバックミラー越しに言うと、シートを倒しリラックスの体制に入る。
「喧嘩がBGMってヤバイ趣味だな」
咲のツッコミに、彼は確かにな! と言って笑った。
「さて、これから5時間交代で監視に入る。最初は僕と兎徒野だ」
ローテーションを組み、時間交代で見張る。長丁場覚悟の情報収集だった。
咲は事務所に帰り、車には2人だけが残される。盗聴対象の舞花が学校にいるうちはのんびりとしたものだった。
兎徒野は仮眠を始め、竜聖はノートPCで事務作業を始めた。
学校から舞花が帰って来ても、やることは盗聴器の音を聞くことのみ。自室に鞄を置き、階下の母親と少し話をして戻ってくる。そして夕飯まで勉強をしているのか、鉛筆と紙がこすれる音を立て、父親の帰宅後に夕飯が始まる。
「俺たちも交代の時間か」
藤十郎はシートで大きく伸びをして、首の骨をゴキゴキと鳴らした。
「次は吾観利と送か」
竜聖もPCの電源を落とし、ため息を吐く。
暫くすると、車の窓がノックされ、咲とつばきがやって来た。
「交代だ」
咲がそう言って運転席のドアを開ける。
その間にも瀬戸家には平和が満ちていた。
夕食の後、舞花は風呂に入り自室に帰って来た。
そこから暫くの間、電話で友人と思しき相手と他愛のないお喋りに華を咲かせ、ベッドに潜り込む音を拾った。
「何もなかったな」
先ほどの電話で、黒幕と言えるような奴に連絡を取るのかと期待したが、それは外れた。深夜を迎え、咲たちも交代の時間になった。
「お疲れぇ」
やって来た聡里が交代を告げる。
「対象はさっき眠った。これと言った報告は無い」
咲がそう報告すると、聡里と同じく交代要員の藤十郎が、了解と頷いた。
「はぁ、動くなら早めに動いてほしいもんだな」
5時間の缶詰に飽きた咲が、そう呟いたが、願いは口に出してはいけなかったらしく、何もないまま3日が過ぎた。
運転席に座る藤十郎がそう言って出迎えた。
竜聖と咲は後部座席に設置されている受信機に耳を澄ませた。
すると、ノイズと共に微かに話し声が聞こえた。
『もしもし。ええ、今帰ったわ。あの子の部屋に盗聴器を付けていった』
「どうやら電話中だな」
ちゃんと受信できるかを確認するため、少しの間聞き続ける。
『ええ、でも信じるしかないわよ。私たちには出来なかったんだから。――そんな事を言うんだったら、私に押し付けないで貴方も何か考えてッ!!』
「盗聴器があると知って喧嘩を始めるとは思わなかったな」
竜聖が微かに笑う。
「最近の盗聴器がよくできてるって知らないんだろ。部屋にさえ入らなきゃ聞こえないと思ってんだ」
咲は詰まらなそうだ。
「真剣に聞いてても疲れるだけだぜ? BGMくらいに思ってた方が精神的に楽だ」
藤十郎はバックミラー越しに言うと、シートを倒しリラックスの体制に入る。
「喧嘩がBGMってヤバイ趣味だな」
咲のツッコミに、彼は確かにな! と言って笑った。
「さて、これから5時間交代で監視に入る。最初は僕と兎徒野だ」
ローテーションを組み、時間交代で見張る。長丁場覚悟の情報収集だった。
咲は事務所に帰り、車には2人だけが残される。盗聴対象の舞花が学校にいるうちはのんびりとしたものだった。
兎徒野は仮眠を始め、竜聖はノートPCで事務作業を始めた。
学校から舞花が帰って来ても、やることは盗聴器の音を聞くことのみ。自室に鞄を置き、階下の母親と少し話をして戻ってくる。そして夕飯まで勉強をしているのか、鉛筆と紙がこすれる音を立て、父親の帰宅後に夕飯が始まる。
「俺たちも交代の時間か」
藤十郎はシートで大きく伸びをして、首の骨をゴキゴキと鳴らした。
「次は吾観利と送か」
竜聖もPCの電源を落とし、ため息を吐く。
暫くすると、車の窓がノックされ、咲とつばきがやって来た。
「交代だ」
咲がそう言って運転席のドアを開ける。
その間にも瀬戸家には平和が満ちていた。
夕食の後、舞花は風呂に入り自室に帰って来た。
そこから暫くの間、電話で友人と思しき相手と他愛のないお喋りに華を咲かせ、ベッドに潜り込む音を拾った。
「何もなかったな」
先ほどの電話で、黒幕と言えるような奴に連絡を取るのかと期待したが、それは外れた。深夜を迎え、咲たちも交代の時間になった。
「お疲れぇ」
やって来た聡里が交代を告げる。
「対象はさっき眠った。これと言った報告は無い」
咲がそう報告すると、聡里と同じく交代要員の藤十郎が、了解と頷いた。
「はぁ、動くなら早めに動いてほしいもんだな」
5時間の缶詰に飽きた咲が、そう呟いたが、願いは口に出してはいけなかったらしく、何もないまま3日が過ぎた。
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