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本編

第62話 マヨイは招待する。

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⚫︎真宵

「兄さんでしょ、ギルド作ったの」

 夕飯の片付けも済ませて部屋に戻ろうとしたところで同じく夕飯の片付けを手伝っていた暁から呼び止められた。どうやら僕らがギルドを作ったことに気がついたらしい。

「そうだよ」

「入れてくれない?」

「いいよ」

「やっぱりダメだよね……っていいの!?」

「藍香が誘うって言ってたからね。あと朱莉ちゃんはどうするか聞いてる?僕としては彼女も誘いたいんだけど」

「ちょっと待ってて!」

 暁はそう言い残して自分の部屋へと駆け込んだ。
 たぶん、朱莉ちゃんに連絡を取るつもりなんだろう。
 しばらくして部屋から出てきた暁から「はい、朱莉が話したいって」と言ってスマホを渡された。どうやら朱莉ちゃんと通話が繋がっているようだ。

「もしもし、朱莉ちゃん?」

『こんばんは』

「こんばんは。暁からは何処まで聞いてるかな?」

『えっと、お兄さんがギルドを作って、そのギルドにアカちゃんが入ることになったところまでです。そ、それで、もし迷惑じゃなかったらわたしもギルドに入れて貰えませんか?』

「むしろ僕の方から誘おうと思ってたんだ。大歓迎だよ」

『ありがとうございます!それでギルドに入るにはどうしたらいいんですか?』

「ゲーム内で会えれば僕の方から招待するよ。まだテコにいるようなら後でテコの組合前で合流しようか」

「あ、私も!」

『お願いします。今からログインしますね!』


…………………………………


……………………………


………………………


「お待たせ!」

「お兄さん、お待たせしました」

「大して待ってないし、気にしないでいいよ」

 ログインして組合前で待っていると数分もしない内に暁とクレアちゃんがやってきた。さっそく2人をギルドに招待する。


[クレアがギルド『迷い家』に加入しました]
[アカトキがギルド『迷い家』に加入しました]

[アカトキからフレンド申請が届きました]


 ギルドのメンバーとはフレンドでなくてもギルドコールという機能を使えばフレンドコールと同様に連絡を取ることができるので暁からのフレンド申請を受けるメリットはない。ただ断って仲間外れにするのも気が引けるので仕方なく承認することにした。


「お兄さん、ありがとうございます」

「兄さん、ありがと」

『サブマスのアイです。2人ともよろしく』

『お姉ちゃん?』

『よろしくお願いします』

『って、2人の位階凄っ!32と29ってヤバくない!?』

 僕としては藍香の位階が29なのは意外だった。
 変異種を狩っているなら、藍香の位階は僕に追いついていてもおかしくないはずだ。それなのに僕と別れた時から全く上がっていない。また経験値を消費するスキルでも習得したんだろうか。
 というかギルドのメンバーには位階と素質、あと覚醒は隠せないらしい。口の軽いメンバーを勧誘して情報が漏洩するのはちょっと嫌だな。誘うメンバーは慎重に選ぶとしよう。

『29から何故か上がらないのよね。もう少しリストの上の変異種を倒せば上がるかしら?』

『リスト?』

『変異種?』

『上がらないのは1の位が9の位階になると結構な頻度で発生する現象みたいだよ。掲示板にあった情報だけど、格上のモンスターを倒すと対応した位階まで上限が取り払われるっぽいね』

『位階30相当のモンスターを倒さないとダメってこと?マヨイは何を倒した……あぁ初日の神の使徒?』

『たぶんね。えっと、変異種っていうのはフィールドを徘徊しているボスのことだよ。僕と藍香は組合でテコ周辺に出現する変異種のリストを貰えたんだ。もうアカトキにあげるよ』

『やった!兄さんありがとう!』

『変異種が正式名称なんですか?』

『みたいね。プレイヤーにはボスでも通じるけど、たぶん住民には変異種と言わなければ通じないわ』

『あとギルドの当面の目標は────』

 明後日からのイベントで入手できる装備や素材を確保するため、自分たちの戦力アップと余らせてたプレイヤーと取引する資金や希少素材を集めていることを2人に伝える。
 すると案の定、クレアちゃんが変異種の素材をギルドの資産にするべきだと主張し始めた。確かに彼女に渡した素材がギルドの資産になれば僕らは大助かりだ。しかし、1度渡したものを「必要になったから返せ」というのは虫が良過ぎる。返したいクレアちゃんと返して欲しくない僕との間で言い合いになってしまったが、僕の渡した素材を使ってギルドメンバーの装備を作成するという話に落ち着いた。

『あとパーソナルに所属ギルドが表示されてるけど、それはギルドの総数が増えるまでは隠して欲しいんだ。いいかな?』

 そこまで徹底的に秘密にする意味もないけれど、僕や藍香に大人数を勧誘する気がない以上は目立つ行動は避けた方がいいだろう。

『今だと悪目立ちするからですか?』

『そうだね。お願いできるかな』

『兄さん、この後でクラスメイトと合流することになってるけどギルドに入ったことは言ってもいい?』

『構わないよ。けどアカトキのクラスメイトだからって理由でギルドに入れてあげるほど僕も藍香も甘くない。もし入りたいって言われたら適当な理由で断れ』

 暁は簡単に口を滑らせてしまいそうだから念を押しておく。クレアちゃんは押しに弱いように見えて意外と頑固っぽいので大丈夫だろう。

『それじゃ僕はテコの北側にある山でゴーレム狩りしてくるから』

『お兄さん、いってらっしゃい』

『またねー』

『私も強そうな変異種探して移動するわ。またね』


───────────────
お読みいただきありがとうございます。

私事ではありますが祖母が心筋梗塞で倒れました。
現在、執筆速度が目に見えて落ちています。もしかしたら更新頻度を日・火・木・土の週4から変更するかもしれません。変更する場合は後書きと近況ボードでお知らせいたします。
これからも拙作をよろしくお願いします。
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