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お茶会
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月日が過ぎるのは早いもので、ウェンディがこの公爵邸にやってきてから3年が経った。
家族仲も良好で、カロラインもフィリスもそんなシャルナーク家を微笑ましく見守っていた。
そんな中、王宮からお茶会の招待状が届いた。他の貴族たちも参加する大規模なお茶会だ。ウェンディもユリウスも貴族の知り合いがいないため断ろうとしたオルガだったが、「王宮のお誘いを断るなんて…!」とフィリスに止められ、しぶしぶ参加することとなった。お茶会に初参加のユリウスとウェンディは喜んでいた。
お茶会当日、会場に到着すると、すでにたくさんの人で溢れかえっていた。
そのほとんどの人の目的は、普段社交界に顔を出さないシャルナーク家を一目見ようとする人たちだった。会場入りするとすぐに大勢の視線が集まり、オルガに近寄ってきた。ユリウスと同年代の子どもたちも来ているようで、そわそわしているユリウスの背をオルガは優しく押した。楽しんでおいで、とウェンディが言うと、手を振って走り出していった。
しかし、人気なのは彼らだけではない。妻であるウェンディにもたくさんの女性陣たちが詰め寄ってきて、ぜひ一緒のテーブルでお茶をしようと手を引かれる。
普段はずっと屋敷にいて侍女以外の女性たちと絡める機会はほとんどない。行ってみたいな、とオルガは見つめると、こくんと頷いてくれた。あっさり許可をくれたオルガに、ウェンディは喜んで女性達についていった。
「公爵様とはどうやって出会ったのですか?」
「私は陛下の紹介って聞いたけど本当かしら?」
「結婚生活はどんな感じなの?」
女性達が好きなのはゴシップである。当然、彼女は質問攻めにあっていた。ウェンディとしては、他の女性たちの話を聞きたいのだけど、そんなことを聞ける雰囲気ではないので、楽しい公爵家での暮らしやオルガに素晴らしいところなどをにこやかに答えていく。
好奇心いっぱいな女性たちの質問は尽きることなく、だんだん喋り疲れてきたウェンディは席を立って、ウェイターに水をもらえるように頼んだ。
快く承諾したウェイターはすぐに水の入ったグラスをとってきてくれた。礼を言って受け取ろうとしたとき、つるりとそれは落ちていった。嫌な音を立てて、水が撒き散った。
「な、なにするのよ!」
ウェンディの隣に座っていたローズ夫人は怒号を浴びせた。ドレスと髪に水が少しかかったようで、ウェンディはすぐに謝罪したが、夫人の怒りは全く収まる気配がなかった。
「貴方ね、公爵様と結婚したからっていい気になるんじゃないわよ!」
「そ、そんなことは」
「公爵様との生活を自慢話みたいにペラペラ話して。ほんとにむかつくわ!」
いや、質問されたから答えただけですけど。と言いたいところをぐっと我慢して、頭を下げ続けた。会場は騒然として、騒ぎを聞きつけたオルガとユリウスがウェンディのもとまで駆け付けた。慌てて周りの女性たちがローズ夫人を諌める。
「何があった」
「あの、私がローズ夫人に誤って水をかけてしまって」
オルガは夫人のドレスと髪に水がかかっているのを見て、ちっと舌打ちをした。ユリウスはウェンディの手を優しく握ってくれている。
「そんなことくらいで__」
「やめてください!私が悪いんです。ローズ夫人、本当にすみませんでした」
自分に対して怒りの感情を見せるオルガの様子を見て、夫人は青ざめた。まさか、あの冷血な公爵がここまで妻を大切にしているとは思わなかったのだ。厳しい視線を向ける公爵に萎縮して、あっさりウェンディの謝罪を受け入れた。
騒ぎはいったん沈静化し、お茶会は再び再会されたが、とてもここにいられるような心境ではなかった。顔色の悪いウェンディを見かねて、オルガたちは屋敷に戻ることにした。
家族仲も良好で、カロラインもフィリスもそんなシャルナーク家を微笑ましく見守っていた。
そんな中、王宮からお茶会の招待状が届いた。他の貴族たちも参加する大規模なお茶会だ。ウェンディもユリウスも貴族の知り合いがいないため断ろうとしたオルガだったが、「王宮のお誘いを断るなんて…!」とフィリスに止められ、しぶしぶ参加することとなった。お茶会に初参加のユリウスとウェンディは喜んでいた。
お茶会当日、会場に到着すると、すでにたくさんの人で溢れかえっていた。
そのほとんどの人の目的は、普段社交界に顔を出さないシャルナーク家を一目見ようとする人たちだった。会場入りするとすぐに大勢の視線が集まり、オルガに近寄ってきた。ユリウスと同年代の子どもたちも来ているようで、そわそわしているユリウスの背をオルガは優しく押した。楽しんでおいで、とウェンディが言うと、手を振って走り出していった。
しかし、人気なのは彼らだけではない。妻であるウェンディにもたくさんの女性陣たちが詰め寄ってきて、ぜひ一緒のテーブルでお茶をしようと手を引かれる。
普段はずっと屋敷にいて侍女以外の女性たちと絡める機会はほとんどない。行ってみたいな、とオルガは見つめると、こくんと頷いてくれた。あっさり許可をくれたオルガに、ウェンディは喜んで女性達についていった。
「公爵様とはどうやって出会ったのですか?」
「私は陛下の紹介って聞いたけど本当かしら?」
「結婚生活はどんな感じなの?」
女性達が好きなのはゴシップである。当然、彼女は質問攻めにあっていた。ウェンディとしては、他の女性たちの話を聞きたいのだけど、そんなことを聞ける雰囲気ではないので、楽しい公爵家での暮らしやオルガに素晴らしいところなどをにこやかに答えていく。
好奇心いっぱいな女性たちの質問は尽きることなく、だんだん喋り疲れてきたウェンディは席を立って、ウェイターに水をもらえるように頼んだ。
快く承諾したウェイターはすぐに水の入ったグラスをとってきてくれた。礼を言って受け取ろうとしたとき、つるりとそれは落ちていった。嫌な音を立てて、水が撒き散った。
「な、なにするのよ!」
ウェンディの隣に座っていたローズ夫人は怒号を浴びせた。ドレスと髪に水が少しかかったようで、ウェンディはすぐに謝罪したが、夫人の怒りは全く収まる気配がなかった。
「貴方ね、公爵様と結婚したからっていい気になるんじゃないわよ!」
「そ、そんなことは」
「公爵様との生活を自慢話みたいにペラペラ話して。ほんとにむかつくわ!」
いや、質問されたから答えただけですけど。と言いたいところをぐっと我慢して、頭を下げ続けた。会場は騒然として、騒ぎを聞きつけたオルガとユリウスがウェンディのもとまで駆け付けた。慌てて周りの女性たちがローズ夫人を諌める。
「何があった」
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オルガは夫人のドレスと髪に水がかかっているのを見て、ちっと舌打ちをした。ユリウスはウェンディの手を優しく握ってくれている。
「そんなことくらいで__」
「やめてください!私が悪いんです。ローズ夫人、本当にすみませんでした」
自分に対して怒りの感情を見せるオルガの様子を見て、夫人は青ざめた。まさか、あの冷血な公爵がここまで妻を大切にしているとは思わなかったのだ。厳しい視線を向ける公爵に萎縮して、あっさりウェンディの謝罪を受け入れた。
騒ぎはいったん沈静化し、お茶会は再び再会されたが、とてもここにいられるような心境ではなかった。顔色の悪いウェンディを見かねて、オルガたちは屋敷に戻ることにした。
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