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お芝居
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「面白かったですね~」
「そうか」
先ほどの光景を思い出してうっとりとするウェンディに、隣を歩いていたオルガは頷いた。ここは王都に新しくできた劇場である。
「芝居を見に行かないか」とウェンディを誘ったのは、オルガだった。最近人気の一座で、平民にも人気の舞台なのだと教えてくれた。近頃はオルガの仕事も落ち着いてきたようなので、気分転換になるかもとそれに同行することにしたのだ。
楽しみにしたいからと、オルガにお芝居の内容を話すことを禁止していたが、まさか恋愛のお話だとは思わなかった。彼のことだから、もっとバトルとか、怖いものを見たいのかと思っていた。
馬車の中で、お芝居の感想をペラペラと話すウェンディを、オルガは黙って聞いていた。聞き流しているのではなく、時々頷いたり、肯定してくれたり、ちゃんと話を聞いてくれている。
今日見たお芝居は、平民と貴族の恋愛のお話だった。街にお忍びで来ていた貴族の男性が、平民の美しい女性に惚れてしまう。男性は身分を隠して女性に近づき、はれて女性と恋人同士になるが、平民の恋人を男性の両親が黙っていなかった。
別れを迫られた男性が女性に事情を話し、女性は男性を受け入れた。そして、2人の愛の逃避行が始まる。ざっとまあ、そういう内容だった。
「ああいう男が好みなのか」
好み、そういえば今まで恋愛のことについて考えてこなかった気がする。いざ真剣に考えてみると、自分がどういった男性が好みなのかわからなかった。確かに、お芝居の俳優さんは、すらりと背が高くて好青年って感じでよかったけど、なんだか違う気がする。
どちらかと言えば、筋肉質で無愛想で、でも可愛い人が…。
「オルガ様が好みです!」
ウェンディは無意識に爆弾を投下した。もろに攻撃をうけたオルガは息をするのを忘れた。
この女は…!
ウェンディが無自覚にそういう発言をしてしまうことを、一緒に暮らしてきたオルガは分かっている。しかし、自分をそう挑発するような言葉にだんだんと腹が立ってきた。からかってやりたくなった。
向かい合って座っていたオルガは、おもむろにウェンディの隣に移動した。
どうしたのだろう、ときょとんとするウェンディの紅茶色の髪を一筋とって、唇に寄せた。ちゅ、と軽く音を鳴らして、ウェンディのライトブルーの瞳を見つめた。ウェンディの顔はみるみる赤く染まっていく。唇をわなわなと震えさせ、目線は右往左往と揺れている。
「光栄だ。お姫様」
オルガの一撃が、見事ウェンディにクリーンヒットした。ふらりと彼女の体が揺れる。脳の情報処理能力を上回り、キャパオーバーで魂が抜けてしまったウェンディを、寸でのところで支えた。どうやら恋愛の免疫がまったくないらしい。
オルガは、くくくと可笑しそうにウェンディを抱いて馬車をおりた。
「そうか」
先ほどの光景を思い出してうっとりとするウェンディに、隣を歩いていたオルガは頷いた。ここは王都に新しくできた劇場である。
「芝居を見に行かないか」とウェンディを誘ったのは、オルガだった。最近人気の一座で、平民にも人気の舞台なのだと教えてくれた。近頃はオルガの仕事も落ち着いてきたようなので、気分転換になるかもとそれに同行することにしたのだ。
楽しみにしたいからと、オルガにお芝居の内容を話すことを禁止していたが、まさか恋愛のお話だとは思わなかった。彼のことだから、もっとバトルとか、怖いものを見たいのかと思っていた。
馬車の中で、お芝居の感想をペラペラと話すウェンディを、オルガは黙って聞いていた。聞き流しているのではなく、時々頷いたり、肯定してくれたり、ちゃんと話を聞いてくれている。
今日見たお芝居は、平民と貴族の恋愛のお話だった。街にお忍びで来ていた貴族の男性が、平民の美しい女性に惚れてしまう。男性は身分を隠して女性に近づき、はれて女性と恋人同士になるが、平民の恋人を男性の両親が黙っていなかった。
別れを迫られた男性が女性に事情を話し、女性は男性を受け入れた。そして、2人の愛の逃避行が始まる。ざっとまあ、そういう内容だった。
「ああいう男が好みなのか」
好み、そういえば今まで恋愛のことについて考えてこなかった気がする。いざ真剣に考えてみると、自分がどういった男性が好みなのかわからなかった。確かに、お芝居の俳優さんは、すらりと背が高くて好青年って感じでよかったけど、なんだか違う気がする。
どちらかと言えば、筋肉質で無愛想で、でも可愛い人が…。
「オルガ様が好みです!」
ウェンディは無意識に爆弾を投下した。もろに攻撃をうけたオルガは息をするのを忘れた。
この女は…!
ウェンディが無自覚にそういう発言をしてしまうことを、一緒に暮らしてきたオルガは分かっている。しかし、自分をそう挑発するような言葉にだんだんと腹が立ってきた。からかってやりたくなった。
向かい合って座っていたオルガは、おもむろにウェンディの隣に移動した。
どうしたのだろう、ときょとんとするウェンディの紅茶色の髪を一筋とって、唇に寄せた。ちゅ、と軽く音を鳴らして、ウェンディのライトブルーの瞳を見つめた。ウェンディの顔はみるみる赤く染まっていく。唇をわなわなと震えさせ、目線は右往左往と揺れている。
「光栄だ。お姫様」
オルガの一撃が、見事ウェンディにクリーンヒットした。ふらりと彼女の体が揺れる。脳の情報処理能力を上回り、キャパオーバーで魂が抜けてしまったウェンディを、寸でのところで支えた。どうやら恋愛の免疫がまったくないらしい。
オルガは、くくくと可笑しそうにウェンディを抱いて馬車をおりた。
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