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「だから、私に身を委ねて」
「ひっ……やめろ、やめ……!」

 懇願する声は誰にも届かない。無数の影が瞬く間に四肢を拘束され、器用に衣服をはだけさせていく。露わになった胸元に、脇腹に、内腿に纏わりつく奇妙な感触は不快であるはずなのに、触れられた箇所からじわりと熱が広がっていくようで落ち着かない。

「やめ、さわるな……っ!」

 下着を取り払われた下肢に伸びた男の手が、緩やかに性器を握り込む。他人の手で触れられたことなど一度もないそこを無遠慮に扱かれ、突然の刺激に腰が跳ねる。

「っは……ぅ、く……~~ッ」

 先端から滲んだ先走りを塗り込めるように裏筋を撫で上げられると、ぞくぞくとした感覚が背筋を這い上がってくる。直接的な刺激に抗えず、徐々に硬度を増していくそれに羞恥を覚えずにはいられなかった。

「っ……く、ふ……」
「変に我慢しない方が楽ですよ」
「だれ、が……ッあ……!」

 ぐり、と鈴口を抉られれば抗う言葉も紡げず情けない声が漏れる。せめてもの抵抗として男を睨みつけても、愉しげに瞳を歪ませるだけだった。

「では、少し刺激を強くしてみましょうか」
「っ、ぁ……なに、を……」

 ぱ、と男の手が離れ、代わりに一筋の影が伸びてくる。それは先程とは異なり、本当に触手のように粘液を滴らせていた。その先端が大きく口を開けたかと思うと、ぱくりと性器の先端を咥え込んだ。

「っあ、ひ……!?や、ぁ……!」

 生温かい肉の感触に包まれ、背筋が仰け反る。無数の舌のような突起がが這い回る未知の感覚に頭の中が真っ白になる。嫌悪感よりも何倍も強く押し寄せる快感に目の前がちかちかと明滅する。ぢゅう、と音を立てて吸い上げられるたびに腰が跳ね、生理的な涙でじわりと視界が滲む。

「ひっ♡ぁ、ぐ……♡はなせ、はなし、て……っ♡あ♡……ッ!♡」
「ふ、この調子だとすぐに達してしまいそうですね」
「やだ、やめ……っ♡あ゛♡ん、く……ッ♡……~~~~ッ!♡♡」

 射精を促すように強く吸い上げられた途端、耐え切れずに白濁が溢れた。ぞくぞくと全身を駆け巡る快感の波に呑まれて呼吸すらままならず、引き攣った喉から途切れ途切れに息が漏れる。肉筒は一滴残らず搾り取るように脈動し続け、尿道に残った残滓すらも啜り上げられる。

「上質で甘美で……思った通り素晴らしい」
「……っ、う……♡」
「ただ、少し淡白すぎる。私はもっとどろどろに煮詰まった方が好みなのですが」
「っあ゛!?♡なに、っ……♡んぅ゛♡」

 咥え込まれたままの性器の先端に細長い何かが触れ、そのままぐぷ、と狭い穴を割り開くように侵入してくる。痛みは無い、けれど今までに経験したことのない圧迫感に肌が粟立つ。

「ひ……っ♡だめ、うごかさな……♡あ゛っ♡や、ぁ゛♡ぬいて、ぬけってば……っ!♡」

 ぼこぼことした突起が尿道の中を行き来する度に電流のような感覚が走る。本来なら入るはずのない場所に異物を受け入れているという事実が恐ろしくて仕方がない。必死に身を捩って逃げようとしても、拘束された四肢はぴくりとも動かなかった。

「ちゃんと奥まで入ったようですし、そろそろ始めましょうか」
「……ッお゛♡やぇ♡吸われ、っ……~~~~ッ!!♡♡」

 根元まで入り込んだ細い管が無理矢理中のものを吸い上げる。射精感とは違う未知の感覚が込み上げ、ベッドに押さえつけられた腰が大きく跳ねた。膀胱も精巣も強制的に空にされるような恐怖と紙一重の快感に目の前が真っ白に染まる。

「やめ、っ♡また、いく……っ♡ぁ゛♡……は♡ッぅ゛♡♡」
「どうぞ、好きなだけ達してください」
「ひっ♡♡ぁ゛♡だめ♡ぃ゛……、ッく♡♡……ッ!♡♡~~~~ッ゛!♡♡」

 がくがくと身体が震え、射精を伴わない絶頂を迎える。反射的に腰を引いて過ぎた快楽を逃そうとするが、自由を奪われた手足はシーツに僅かに皺を作るだけだった。

「たくさん出した分、今度はいっぱいに満たしてあげましょう」
「……ッあ゛♡も、やらぁ゛♡おわっ、おわって……!♡」

 奥深くに入り込んだままの管から、あらゆるものを吐き出して萎えた性器に熱い液体が流し込まれる。先程までの責め苦に比べれば弱い刺激だが、身体の内側から炙るように熱を高められている気分で落ち着かない。

「ふふ、前立腺が膨れてきましたね。分かりますか?」
「わかんにゃ、ッ♡ん♡……っあ゛♡ぁ……ッ!?♡♡」

 粘液を内壁に塗り込めるように触手が抽送を始め、一際敏感な部分を繰り返し擦り上げられる。陰茎から溢れ出そうとする液体を押し戻しながら奥を突かれると、その度に得体の知れない感覚が背筋を駆け上がってくる。

「ぉ゛♡あ゛♡そこらめ♡♡つよい♡つよ、……ッひ♡こわれ、っ……~~ッ!♡♡」
「壊しはしませんよ。だから安心して感じてください」
「やら♡も、ゆるして……ぁ♡ッひ♡……っ!?♡」

 いつの間にか後孔へと這わされた男の指が、くぷ、と音を立てて中へ入り込む。無遠慮に性器を掻き回す触手とは異なる丁寧な動きで優しく内壁を擦られるうちに、自分にも分からない身体の奥深くからじわじわと甘い疼きが広がってくる。

「ぁ、や……っ♡ぁ、う……ッ♡♡」

 く、と腹側の一点を僅かに力を込めて押し込まれただけで頭の芯が痺れるような快感が走る。連動するように性器を包み込んでいた肉筒にぢゅう、と先端を吸い上げられるとひとたまりもなかった。

「っ、あ゛♡……~~~~ッ!♡♡っん゛♡……ッ♡ふ♡ぅ゛♡……~~♡♡」

 断続的に襲い来る絶頂の波に翻弄されてまともに息すらできない。身体中を巡る熱を少しでも逃そうとして首を振ると、それすら許さないと言わんばかりに口に触手がねじ込まれた。喉奥までを埋め尽くすように入り込んだそれは上顎や頬の内側をぞりぞりと擦り上げ、舌に絡みついては粘液を流し込んでくる。どろりとした液体が喉奥を滑り落ちていく感覚すら気持ち良い。

「……あ゛♡ん、っぐ……♡♡ぅ゛♡~~~~ッ!♡♡」

 ばちん、と視界が弾ける。自分の意思とは関係なく身体が痙攣し、思考は急速に暗闇の底へ引きずり込まれていく。もう何が何だかよく分からない。ようやく迎えた限界に強張っていた全身から力が抜け、抗い難い倦怠感に意識が飲み込まれていく。目の前が真っ暗になる寸前、こちらを見下ろす男の赤色の瞳だけがやけに鮮明に見えた。
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