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第3章
負の根源(1)
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王と王の雛鳥がお茶会中、何者かに盛られた毒によって倒れた。
その知らせはすぐさま王宮内に駆け巡ると城内は一気に混乱に陥る中、様々な反応が生まれた。
心から悲しみ心配する者。
回復を祈る者。
心配しつつ、裏ではほくそ笑む者―――。
そんな麻痺した機関を立て直すべく、機敏に指揮を執る従者によって厳しい警備体制が敷かれ、運ばれていく二人を見送って以来、どちらとも面会が許されないどころか、二人の容態や何処で療養しているのかさえアランは知ることが出来なかった。
そして、直接的に拘束されるとまではいかずとも、お茶の席へ同席していたアラン達もまた、毒を盛った犯人の疑いがかけられつつあり、各自に割り当てられた部屋で待機するよう言われ、現在事実上の軟禁状態だった。
あのお茶会からまる二日が経過した。
決まった時間に三食の食事が運ばれてくる以外、完全に人との関わりが絶たれている。
食事を運ぶメイドも必要以上に会話を許されないのか何を聞いても得る情報は無いに等しかった。
ルイやカイとも顔を合わせていない。
そろそろ大人しくしておくのも我慢の限界―――
そう思っているのはアランだけではなかった。
コンッ―コンッ――
守衛以外が寝静まった深夜、アランの部屋の窓が静かに叩かれた。
そろそろ動く頃だと思っていたアランは特に驚くことなく窓辺へ近付くと鍵を開け窓からの来訪者を招き入れる。
トンっと床に足を下ろす二組。
「やっほー団長ぉ~」
「こんばんは、お久しぶりです団長」
二日ぶりに会ったルイとカイは相も変わらず飄々とした笑みを浮かべ、安定の空気感でアランへフリフリ手を振っていた。
そんな二人にフッと笑うと窓を閉めるよう指示を出し自分はベッドへ腰掛ける。
脚を組み、目の前に立つ部下二人を見据えた。
「丁度そろそろかと思ってた」
「俺も、そろそろ団長が俺たちに会いたくなってるかなって思って急ぎましたよ~」
「不自由ながらも情報集めに頑張った僕たちをどうぞ心ゆくまで褒めてください」
さぁ撫でろ、と言わんばかりに座るアランの高さに合わせて頭をずずいっと押し付けてくる双子に「わかった、わかったから」と折れ、両手を伸ばすアランだった。
「それで、わかったことは」
「まず、王も雛ちゃんも今のところ生きてます。意識は戻ってないみたいですが」
「でも妙なのが、王の寝室で療養を受けてるのがひとりっぽいんすよね…それがどっちかがわかんないんすけど、おそらく王の方かな、って。じゃあ雛ちゃんは何処にいるのかって話なんすけど、場所は濁されたけどもうひとりの見回り当番にあたるのがイヤだってメイドさん言ってたっす」
相変わらずお前らは――と苦笑しながら再び頭を撫で回す。
この部下二人はアランが求めているものをしっかり持ってくる。
そんな孤児出身のルイとカイが若くして騎士団副団長の地位におさまれたのは、アランの推薦以外にも群を抜いて秀でた実力があったから。
戦闘はもちろんのこと、聞き込み、潜入、情報収集。どんな状況下でも立ち回れる二人の能力は今まで何度も騎士団の役に立ち、苦言を呈する口だけのお飾り貴族を黙らせてきた。
アランに頭を撫でられながら猫みたいにふにゃりと笑うルイとカイ。出会った頃の、この世は全員敵、お互いしか信じないという牙むき出しの野良猫がすっかり飼い慣らされて……と感慨深くなってしまうのは共に過ごしてきた年月がより濃いものだったから。
―――なんて、一瞬の懐古をすぐさま頭の隅にしまっておき、本題へ戻す。
「それで、見回りのタイミングは」
「「丁度この時間帯」」
「行くぞ」
「「らじゃー!」」
良くない噂が城外まで広がるこの国の負の根源を叩き一掃する。
他国のアランがそこまで首を突っ込んでいいものなのか―――そんな考えはとっくに捨てた。
いまはただ、アラン・マクレーンという個人が守りたい人の守りたいものを守るだけだった。
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