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第1章

浮かぶ淫紋(4)※

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「ぁ、んぅ、あっ…」
 
 
 
 濃密な空気がねっとりまとわりつくような空間。
 
 
 
「ひ、ぁ…」
 
 
 
 健気に喘ぐ雛鳥を真ん中に、三つの影が絡み合う。
 
 何ものにも邪魔されない、性のやり取り。
 
 二人の大男を相手に、雛鳥は快楽の海へドロドロに溶かされていく。
 
 


 
 未だ王に縋り付く雛鳥の背後から手を伸ばしたアランは、どこを触っても吸い付いてくる肌触りに夢中になって体中を撫で回し、雛鳥を鳴かす愉しさを味わっていた。
 あえて直接的な部分には触れず、背中、脇腹、臀部、内腿、と触れる度、健気に震える中心がトロリと蜜を垂らすのをじっと見つめる。
 
 
 
 性に関して淡白なアランだが、決して経験がないわけではなかった。
 今でこそ責任のある立場に立ち紳士を地で行くことで有名ではあるが、一時期知られざる荒れた暗黒時代がアランにも存在した。
 
 
 きっかけは、大切な人の突然の訃報。
 
 
 いつの日か専属の騎士として再会出来るその日を楽しみにそれぞれの道を進むべく笑顔で別れた、大切な人。これまで努力を重ね我武者羅に突き進んできただけに、突如生きる目標を失い、強い喪失感にしばらく現実が受け入れられなかった。
 
 何もする気が起きず、夜の街で適当に後腐れのない相手で欲を発散し、快楽に溺れるだけのなんの生産性もない日々。
 
 
 そんな腐りきった日々に終止符を打つきっかけもまた、その人だった。
 
 遺品として届いた一通の手紙。
 
 今までも、自由に国を離れることができない相手の立場から、やり取りは全て手紙のみだったが今回は訳が違う。
 情けないくらい震えてしまう手で開いた最後の手紙に書かれていたのは、呆れるくらい自分の事は一切書かれておらず、新しくできたという“小さなお友達”の存在がびっしり刻まれていた。
 


 ----------
 
 
 新しくできた小さなお友達は、
 とある事情から親を知らず、
 愛される事も知らず、生きてきてしまいました。
 
 あんなにも可愛らしく笑うのに、
 名前を呼ばれるだけで喜ぶ姿が愛おしくて、
 ―――切なかった。

 
 あの子が生きてきたこれまで分以上にたっぷりの愛情を注いであげたかった。
 わたくしが他国への嫁入りで家を出る時、泣きじゃくってくれたかわいいわたくしの弟――アランにしてあげれなかった分、“ヒナセ”にしてあげたかった。
 

 結局わたくしは中途半端ね…。

 
 アラン、いつの日か交わしたあの約束を、わたくしにではなく、ヒナセちゃんにしてあげれることは可能かしら?
 きっとあなたも一目見ればあの子が気に入るわ。
 なんせ、とってもかわいい子だもの。

 
 ヒナセちゃんを、よろしくね。
 
 
 ----------


 
 かつて、この世で一番大切で、当時幼いながらこの人の為に命を使いたいと本気で思うほど外見も中身も綺麗で可憐な年の離れた自慢の姉は、隣国の王のもとへ嫁入りをした。
 ―――そして、亡くなった。
 姉は居なくなってしまったのに、アランに残した言葉がいつまでもアランを縛り続けてきた。
 
 いつか、機会があれば……そう思い続け早十年。
 
 
 
 その子は今、目の前で羞恥に体を震わせ、か細く鳴いていた。
 
 
 
 
 
 *****
 
 
 
「……ヒナセ」
「っ!?」
 
 
 突如呼ばれた自分の名前に、ヒナセは肩が大きく跳ねた。
 
 呼んだのは陛下では無い。
 
 
 
 では、なぜ―――
 
 なぜ、騎士団長さんが、僕の名前を知って……
 
 
 
 頭の中がすごい勢いでグルグル回り、気を取られていたせいで一瞬反応が遅れた。
 
 
「!?」
 
 
 気付いた時には視界が反転し、背中を陛下に預け、背後から伸びてきた手によって立てた足を大きく開かれる。
 
 
「ぇ……あっ!?」

「騎士殿、いつの間に名前を知るほどこの雛鳥と密会を交わしていたのか…」
 
 
 足を開く陛下の手が前から奥へひくつく穴目掛けて這っていき、到達すると同時にずぶ…と指を埋めていく。
 

「人の飼い鳥に勝手に餌付けしてもらっては困る」
 
「あっあぁ…ぁ」
 
 
 目の前の騎士様に情けない姿、表情、全てをさらけ出す淫らな格好。

 

 気持ちいい、気持ちいい…

 指、気持ちいい…


 でも、もっと、

 もっと、太くて、硬いのが、


 ほしい……


 
 赤く浮かぶ淫紋がずくんっと怪しく疼いた。
 
 
 
 
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