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3【SS】
3-1鬼は外(1)
しおりを挟む「「いやぁぁぁぁっっっ」」
「ふぅくん、つぅくん、落ち着いて、大丈夫大丈夫だよ~」
「「びえぇぇぇぇぇぇぇっっ」」
双子の激しく泣き叫ぶ声が響き渡るここは自宅のリビング。
床に仰向けにジタバタ暴れる楓莉とダンゴムシになって震えながら顔を隠すつくし。泣き方からも二人それぞれの個性が光る様子を感心しながら、なんとか泣き止むよう宥めるのに必死な僕。そんな三人をどうしたものかと何も出来ずただリビングの入口で立ち尽くす楓真くんの顔には赤い鬼のお面が付けられていた。
遡ること数日前。
夕食も終わり穏やかに四人でリビングで過ごしていると付けていたテレビには去年の節分行事で鬼が退治される様子が映し出されていた。
そっかもうすぐ節分か…と特別何を思うでもなくぼーっとソファに座って眺めていると、ソファのすぐ下、カーペットで戯れて遊んでいたはずの二人はいつの間にかじーっとテレビを凝視していることに僕の隣に座る楓真くんが先に気付き、その事を僕に知らせた。熱心に見つめる姿に微笑ましく思いながら楓真くんが二人に話しかける。
「ねぇふぅくんつぅくん、もしテレビの中の鬼さんがパパとママをいじめてきたら二人は助けてくれる?」
「あい!あーい!!ふぅくん、おにさんパーンチすりゅ!」
「んー…んー…つぅくんちょっとこあい…」
元気に手を上げる楓莉と、ふるふる震えながら今にも泣きそうなつくし。そんなつくしの様子に気付いた楓莉はのしかかる勢いでぎゅーっと抱きしめると満面の笑みで声高々に「らいじょーぶ!!」と叫ぶ。
「つぅくんもふぅくんがまもゆよー!」
双子とはいえ、数秒先に生まれた楓莉。弟を守るという頼もしいお兄ちゃんの姿に僕も楓真くんも感動していた。
「楓莉は頼もしいお兄ちゃんだね」
「ふぅくん、これからもつぅくんを守ってあげてね」
「まもゆ!つぅくんだいじーー!」
「ふぅくんありあとぉ」
カーペットにペタンと座り小さなおててでぎゅぅと抱きしめ合う二人の尊い兄弟愛に親は揃って感涙の涙で天を仰いでいた。
そんなやり取りがあって、2月3日節分当日。
鬼のお面を被った楓真くんが無駄にリアルな演技で登場した途端、つくしは予想していたことだが、楓莉までも大絶叫で泣き出したのだった。
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