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2【子育て日記】

2-35 社交界の花(16)※

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「え、ちょ、一旦、落ち着、落ち着いてください」
「楓真くんが、落ち着いてください」
「あ、う、はい……」
 
 
 確かに…と小さく呟き、すーはー…と、人の上で深呼吸を始める楓真くんを下半身下着姿で見上げる間抜けな姿。立てた自分の剥き出しの太ももが視界に入り、なんとも言えない複雑な気持ちで仕方がない。
 
 一度ズボンを履くのはダメだろうか―――
 
 
「つかささん……」
「あ、はい」
 
 
 つい遠い目で現実逃避に走りかけた所に、深呼吸を終えたらしい楓真くんのどこか固い声に呼ばれ現実に連れ戻される。見上げた楓真くんの顔は、今までにない真剣味を帯びていた。
 
 ごくり、と飲み込む楓真くんが果たして何を言うのか―――
 
 
「誰に、いや、誰が選んだんですか、これ……まさか、父さん……?」
「は……?」
 
 
 深呼吸をしても尚、動揺が抜けない楓真くんは何度も言葉を詰まらせながら視線を下着と僕の顔、交互に忙しなく動かしている。
 そんな中で問われた呆れた質問。
 誰が選んだなんて、決まっている。
 
 
「………僕」
「え?」
「~~っ、僕が!自分で!選んだ!」
 
 
 顔が真っ赤になるのを感じながら、ヤケクソで言い放つ。もはや羞恥で涙目だ。
 
 
「っ、つかささんご自身で選ばれた…!?」
「こんな恥ずかしいもの楓珠さんに相談するはずないでしょ!?お馬鹿なの!?もうズボン履いちゃうよ!?」
「あっダメ!ダメです!絶対ダメ!ごめんなさい俺が馬鹿でしたごめんなさい!!」
 
 
 ズボン一枚をめぐってソファの上で繰り広げられる乱闘。奪い返そうとする僕と、奪われまいとする楓真くん。大人気なく声を上げながらの全力の数分間は、体力不足により呆気なく終わりを告げた。
 
 
「は、はぁ…はぁ…」
「っ、」
 
 
 お互い息を切らしながら一旦休戦、とどちらともなく休憩する中、力なくソファに背中を預ける僕は楓真くんよりも息が荒い。これが7つの歳の差か…と情けない有り様に両腕で顔を隠しながら荒い息を整え、さらに下着姿で何やってるんだと我に返る。
 
 そんな僕をじっと見つめる楓真くんの視線がやけに熱い。視線だけでなく、吐く息も、怪しい。
 
 
「ふ、うま…くん?」
「ふー…ふー…このアングルやば……鼻血出そう…」
「……もう出てるよ」
 
 
 興奮に目を血走らせ、鼻血をぐいと拭う姿にも見惚れてしまうほど、イケメンはイケメンだった。
 
 だけど、ゆっくり鑑賞している余裕も次の瞬間には綺麗さっぱり消え去ることとなる。


「つかささん、ごめん、俺、今日マジでやばいかも」


 そんな言葉と共に、内側からガシッと掴まれる太もも。

 一体、何を―――そう問いかける言葉が外に出るより先に楓真くんの動きの方が何倍も早かった。
 

「え……えっ、あ!?うそ、うそうそっ!?楓真く、やめ、そんなとこ…だめ――ぁっ」
 
 
 いまだ僕の股の間に陣取っていた楓真くんは大きな体で窮屈なはずなのにそんな素振りを一切見せず上半身を屈ませたかと思えば、ほんの一瞬前まで見惚れていた綺麗でかっこいい顔を、なんと、惜しみなく、僕の股間へ押し付けてくる。
 
 
「ぁ…あ、やっ、やだ、んぅ…あっ、んんんぅ…」
 
 
 両手で必死に口を塞いでも漏れる声が止まらない。

 楓真くんの高く通った鼻筋が、今の一瞬で再び反応を示す下着越しのソコに擦り付けられる、そんな信じられない光景が目の前で繰り広げられていた。
 
 
 
 
 
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