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2【子育て日記】
2-14 お喋り-夜-(3)
しおりを挟む楓真くんが寝室へと向かってくれている間、僕は僕でとりあえず手が伸びる範囲を片付けようとまずは身体を起こしソファに座りながらリビングを改めて見回す―――が、
「うわぁ…」
つい声が洩れてしまう程、その光景は凄い有様だった。
ふかふか素材のラグの上に容赦なく散らばる使用済みのゴムたち。余裕がなかったのか、中にはきちんと口が縛りきれておらず液体が漏れ出ているものもある。それだけでなく、それらが入っていた箱も転がっているのをソファの上から見つけ、確か今日開けたばかりだったそれは綺麗に全て使い切っていた。
「まだまだ若いよ…楓真くん」
苦笑混じりにこぼした独り言は誰にも拾われず静かな空間に消えていく。
ついさっきまで楓真くんと濃厚に過ごしていた反動で一瞬寂しさを感じるも、微かに聞こえてくる寝室からの声がひとりじゃないと安心させた。
よいしょ、と無駄に声を出しながらいまだ力の入らない下半身に気合を入れ立ち上がる。
その拍子に、ナマでしてもらえない代わりに素股で直接擦って出してもらった時の名残がトロリと太ももを伝った。
「っ――」
あれだけ散々やったのに、そんな些細な感触が甘い刺激として伝わり、小さく声が出てしまいそうになるのを咄嗟に口を押さえ飲み込む。
自分の内ももをツー…と流れる白濁をじっと見つめながら暫くそうやってやり過ごすと、はぁと震える息を吐き出し、ティッシュに手を伸ばして内ももから身体の隅々までその名残を拭いとった。
身体のベタつきを取り除くと、落ちていた服を素早く身につけ、一つ一つ残骸を袋に拾い集めていく。
数は多けれど、案外すぐに集め終わりきゅっと袋の口を結び終えると、あとは所々乾いてカピついている大きなラグだけ。
「……さすがに無理だね」
この大物は楓真くんと協力して明日子供たちが起きてくる前までに取り除きクリーニングに出せばいいや…と諦め今は目を瞑ることを決めた。
一通りやれる事はやり終えてもなお、なかなか戻ってこない楓真くんが気になった。
寝かし付けるのに手こずっているのか…はたまた一緒になって寝てしまっているのかもしれない…それはそれで可愛い光景だなと想像でくすりと笑うと、悲鳴をあげる下半身にムチを打ち寝室へとゆっくり歩き出す。
どこかしらに掴まりながらなんとかリビングを抜け、そのまま情けなくも壁を伝いながら廊下から寝室への短い距離を進む。
すると、楓真くんのボリュームを落とした優しい話し声が少しずつ鮮明に聞こえてきた。
「ふぅくんつぅくん、久しぶりにママを独り占めさせてくれてありがと~」
「二人がいい子で寝ててくれたからパパはたぁっぷりママ補給できたよ。ちょっと無理させすぎたかもだけど…」
耳をすましても聞こえるのは楓真くんの声のみ。
たどり着いた寝室の入口からそっと中を覗くと、こちらへ背中を向ける形でベッドに胡座をかいた楓真くんはチラッと見える感じ両腕それぞれに双子を抱いていた。
「まだしばらくは二人に兄弟を作ってあげれないだろうから、これからも俺たち三人で仲良くママの取り合いしようね~ごめんだけど、パパは大人気なく参戦させていただきます」
「ちょっと楓真くん、何言ってるの」
「あ、つかささん」
静かに様子だけを見るつもりが、ついツッコミを入れこちらの存在を気付かせてしまった。顔だけで振り返る楓真くんの笑顔につられるように寝室へ足を踏み入れると、ベッドへ乗り上げ楓真くんの広い背中におんぶの要領でぴっとりくっつき肩越しに腕の中を覗き込む。
「ぐっすり寝てる……グズってた?」
楓真くんの二の腕を枕にするようにすっぽり収まりすやすや眠る楓莉くんとつくしくんの頭をそっと撫で、赤ちゃん特有の高い体温で滲む汗を拭いながら楓真くんをチラッと見やる。
「ちょっとグズってましたけどまたすぐ寝てくれました。――つかささんは身体、大丈夫ですか?」
「ん、大丈夫だよ、ありがと」
肩越しにぶつかる視線は想像以上に近く、一瞬でついさっきの熱を思い出させる。
どちらともなく自然と身体を乗り出し、双子が眠る上で静かに重なる唇。
くちゅっ、と離れていく間も視線は交わったままだった。
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