【BL】欠陥Ωのオフィスラブストーリー

プロローグ

0-3橘つかさの人生

　
　そして、まるで神様から与えられた試練はそれだけでは終わらなかった。
　
　
　さらに追い打ちをかけるように、楓真くんに想いを寄せるオメガが社内で起こした事件に巻き込まれ、拉致のうえ、薬によって強制的に引き起こされた発情期。
　ここでも僕の拒絶反応は顔を見せた。
　楓真くん以外のアルファのフェロモンに嘔吐しながら、無理やりの行為。受けた精は受精に至る前に体内で害として殺し、望むも望まないも妊娠ができない体となっていた。

　
　意識のない状態で駆けつけた楓真くんに助け出され、警察沙汰にまでなった事件。
　一週間の昏睡の末、目覚めた瞬間にそばに居てくれたのは――楓珠さんだった。
　
　静かに語ってくださった楓珠さんの話から、首謀者や関わった人物全てが会社から締め出された。その中には昔からの幹部までいたが、今回こそ楓珠さんは容赦なく切り捨て、穏やかに話す顔の裏に静かな怒りを感じた。
　全て終わったのだと知らされたが、そんな事より他のアルファに汚された僕を楓真くんはどう思うのか、それだけが怖かった。
　この場に楓真くんが居ないことが、より最悪の発想を想像させた。
　
　だけど、そんな心配は楓真くんの顔を見た瞬間全てが吹き飛んだ。僕の身体の事だけを心配し、自分のフェロモンが害にならないか気にしてなかなか傍に近寄ろうとしない年下のかわいいアルファ。
　
　
　こんなにも人を愛おしいと思ったことは無い。
　
　
　呼び寄せ抱きしめ合いながら自然と強くお互いを求め、奇跡みたいなタイミングでやってきた発情期。
　
　辛く大変な試練を乗り越え、楓真くんと番となった瞬間だった。