上 下
57 / 64
4【エピローグ】

4-1 家族

しおりを挟む

 
 -4年後-
 
 
 
 
 
「こぉら2人とも、早く朝ごはん食べる準備しないとパパ行っちゃうよ?」
 
 
 朝の家庭はどこも時間とのタイムアタック
 
 テレビから流れる教育番組で子供たちの気をそらし、洗濯機は朝からフル回転。たった今2回目の脱水が終わった知らせがピーピーと鳴り響いている。うるさい音を消しに行きたくともスクランブルエッグとタコさんウィンナーを同時に焼くフライパンから離れられない。
 
 その間にも、我が家の小さな怪獣二匹は今日も朝から元気に暴れ回っていた。
 
 
「まぁま、ふぅくんとあそぼ、あぁそぉぼぉ~」
 
 しっぽ付きの恐竜着ぐるみパジャマをまとった全身緑色の元気な怪獣 楓莉ふうりくん 通称ふぅくん
 
 
「まぁま、くちゅしたないない」
 
 うさぎの耳が垂れ下がった着ぐるみパジャマをまとった全身真っ白ののんびり怪獣 つくしくん 通称つぅくん
 
 
 それぞれ見た目も個性も僕と楓真くん二人を受け継いだこの子達は正真正銘僕が産んだ双子たち。番になって数年、やっと実った尊い命は2倍となって僕らの元へやってきてくれた。
 
 
「ふぅくん、ママ今忙しいから遊ばないよ、あとで一緒にパパにいってらっしゃいしようね。
 つぅくん、お探しの靴下はおしりの下にあるみたいだよ、1回おしりあげてみな?」
 
 
 1歳ながらに、僕の言葉をしっかり理解する2人は面白いくらいそれぞれの反応を見せてくれる。
 
 遊んでもらえないと知った瞬間、楓真くんそっくりの顔に絶望の表情を貼り付け仁王立ちで立ち尽くすふぅくん。
 ぽってりと足を投げ出すように座っていた体勢からゴロンと転がり自分のおしりの下からやっとお目当ての靴下を見つけたつぅくんは僕そっくりの顔で嬉しそうに顔を輝かせている。
 
 そんな対極的な2人の姿にふふ、と笑っていると、絶賛絶望中のふぅくんに動きがあった。
 
 最近自分の力で立ち上がりよちよち歩くようになったとは思えないしっかりとした二本足で立ち尽くすふぅくんは、嬉しそうな顔のつぅくんに気付くと、恐竜の行進のようにドシドシ突進し、コケっと転んだかと思えばそのままゴロンゴロン横に転がってつぅくんの元へ到達する。そして、きっとわけもわからず一緒になって顔を輝かしていた。
 キャッキャ楽しそうに遊ぶ恐竜とうさぎの格好をした双子の笑顔をダイニングキッチンから眺める朝。
 
 
 平和だなぁ……
 
 
「つかささん、俺そろそろ出るね」
 
 
 つい手を止めて双子を眺めてしまっていると、ネクタイを締めながら出勤スタイルのスーツがビシッと決まった楓真くんが顔を出す。
 
 
 途端―――
 
 
「ぱぁぱいっちゃやぁぁぁぁっ」
「ぱぁぱつぅくんくちゅしたはけたぁ~」
 
 
 双子の攻撃が始まった。
 
 
「う……今日も我が子が天使してる……」
 
「こら楓真くん!子供たち吸ってないで早く準備して!楓珠さん待たせてるよ!」
 
 
 スーツのシワなど全く気にもとめず、自分の股下くらいしかない双子の身長に全力で合わせるよう屈み込むと両腕に抱き、スーハースーハーする変態パパな楓真くんを呆れた表情で見つめてしまう。
 
 すると不意に、つかささんと呼ぶ優しい声。
 
 片手で双子をまとめて抱き上げ立ち上がる楓真くんは、もう片方の腕を広げて待つ。楓真くんの首にぶら下がりながら後ろの僕を見るよう頭をだらぁんとそらす双子もまぁまと僕を呼んでいる。
 
 
 そんなよくある日常の一部分。
 
 だけど―――自然と潤む視界。
 
 
 
「つかささん」
「「まぁま」」
 
 
 
 こんなにも愛おしい家族に囲まれ、僕は本当に、幸せだ。
 
 
 
 
 〔完〕
 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

親友だと思ってた完璧幼馴染に執着されて監禁される平凡男子俺

toki
BL
エリート執着美形×平凡リーマン(幼馴染) ※監禁、無理矢理の要素があります。また、軽度ですが性的描写があります。 pixivでも同タイトルで投稿しています。 https://www.pixiv.net/users/3179376 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/98346398

可愛くない僕は愛されない…はず

おがこは
BL
Ωらしくない見た目がコンプレックスな自己肯定感低めなΩ。痴漢から助けた女子高生をきっかけにその子の兄(α)に絆され愛されていく話。 押しが強いスパダリα ‪✕‬‪‪ 逃げるツンツンデレΩ ハッピーエンドです! 病んでる受けが好みです。 闇描写大好きです(*´`) ※まだアルファポリスに慣れてないため、同じ話を何回か更新するかもしれません。頑張って慣れていきます!感想もお待ちしております! また、当方最近忙しく、投稿頻度が不安定です。気長に待って頂けると嬉しいです(*^^*)

捨てられオメガの幸せは

ホロロン
BL
家族に愛されていると思っていたが実はそうではない事実を知ってもなお家族と仲良くしたいがためにずっと好きだった人と喧嘩別れしてしまった。 幸せになれると思ったのに…番になる前に捨てられて行き場をなくした時に会ったのは、あの大好きな彼だった。

僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした

なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。 「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」 高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。 そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに… その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。 ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。 かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで… ハッピーエンドです。 R18の場面には※をつけます。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

冷酷組長の狂愛

さてぃー
BL
関東最大勢力神城組組長と無気力美男子の甘くて焦ったい物語 ※はエロありです

束縛系の騎士団長は、部下の僕を束縛する

天災
BL
 イケメン騎士団長の束縛…

処理中です...