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4【エピローグ】
4-1 家族
しおりを挟む-4年後-
「こぉら2人とも、早く朝ごはん食べる準備しないとパパ行っちゃうよ?」
朝の家庭はどこも時間とのタイムアタック
テレビから流れる教育番組で子供たちの気をそらし、洗濯機は朝からフル回転。たった今2回目の脱水が終わった知らせがピーピーと鳴り響いている。うるさい音を消しに行きたくともスクランブルエッグとタコさんウィンナーを同時に焼くフライパンから離れられない。
その間にも、我が家の小さな怪獣二匹は今日も朝から元気に暴れ回っていた。
「まぁま、ふぅくんとあそぼ、あぁそぉぼぉ~」
しっぽ付きの恐竜着ぐるみパジャマをまとった全身緑色の元気な怪獣 楓莉くん 通称ふぅくん
「まぁま、くちゅしたないない」
うさぎの耳が垂れ下がった着ぐるみパジャマをまとった全身真っ白ののんびり怪獣 つくしくん 通称つぅくん
それぞれ見た目も個性も僕と楓真くん二人を受け継いだこの子達は正真正銘僕が産んだ双子たち。番になって数年、やっと実った尊い命は2倍となって僕らの元へやってきてくれた。
「ふぅくん、ママ今忙しいから遊ばないよ、あとで一緒にパパにいってらっしゃいしようね。
つぅくん、お探しの靴下はおしりの下にあるみたいだよ、1回おしりあげてみな?」
1歳ながらに、僕の言葉をしっかり理解する2人は面白いくらいそれぞれの反応を見せてくれる。
遊んでもらえないと知った瞬間、楓真くんそっくりの顔に絶望の表情を貼り付け仁王立ちで立ち尽くすふぅくん。
ぽってりと足を投げ出すように座っていた体勢からゴロンと転がり自分のおしりの下からやっとお目当ての靴下を見つけたつぅくんは僕そっくりの顔で嬉しそうに顔を輝かせている。
そんな対極的な2人の姿にふふ、と笑っていると、絶賛絶望中のふぅくんに動きがあった。
最近自分の力で立ち上がりよちよち歩くようになったとは思えないしっかりとした二本足で立ち尽くすふぅくんは、嬉しそうな顔のつぅくんに気付くと、恐竜の行進のようにドシドシ突進し、コケっと転んだかと思えばそのままゴロンゴロン横に転がってつぅくんの元へ到達する。そして、きっとわけもわからず一緒になって顔を輝かしていた。
キャッキャ楽しそうに遊ぶ恐竜とうさぎの格好をした双子の笑顔をダイニングキッチンから眺める朝。
平和だなぁ……
「つかささん、俺そろそろ出るね」
つい手を止めて双子を眺めてしまっていると、ネクタイを締めながら出勤スタイルのスーツがビシッと決まった楓真くんが顔を出す。
途端―――
「ぱぁぱいっちゃやぁぁぁぁっ」
「ぱぁぱつぅくんくちゅしたはけたぁ~」
双子の攻撃が始まった。
「う……今日も我が子が天使してる……」
「こら楓真くん!子供たち吸ってないで早く準備して!楓珠さん待たせてるよ!」
スーツのシワなど全く気にもとめず、自分の股下くらいしかない双子の身長に全力で合わせるよう屈み込むと両腕に抱き、スーハースーハーする変態パパな楓真くんを呆れた表情で見つめてしまう。
すると不意に、つかささんと呼ぶ優しい声。
片手で双子をまとめて抱き上げ立ち上がる楓真くんは、もう片方の腕を広げて待つ。楓真くんの首にぶら下がりながら後ろの僕を見るよう頭をだらぁんとそらす双子もまぁまと僕を呼んでいる。
そんなよくある日常の一部分。
だけど―――自然と潤む視界。
「つかささん」
「「まぁま」」
こんなにも愛おしい家族に囲まれ、僕は本当に、幸せだ。
〔完〕
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