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第10章 イグドラシルとの闘い

第3話 ローマの平日 後編

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 時は戻ってヴェネツィアの拠点では、目を覚ましたリオとホムラの協力を得て情報収集を行い、鷹司が誘拐した(正確には家出を幇助し匿った)少女の名はリン・イグドラシル。現イグドラシル家の当主の1人娘で、ウイルスによる大粛清に反対していた人物だった。また作戦実行において重要となる鍵を持っているという。また鷹司が計画的に誘拐した訳でもない故、こうして連携に齟齬が出ているようだった。そんな中、目をつむって椅子に腰かけていた。桜夜が目を開いた。

「見つけた」

 ついに鷹司とリンの存在を見つけた桜夜は立ち上がる。

「リオ! 認識疎外の魔法を。鳳凰で突っ込む!」

「はい!」

◆◆◆

 ローマ市街の路地裏で鷹司は肩を押さえて蹲る。それをかばうのはまだ幼い少女だった。

「退いてください。お嬢様」

 男は平たんな声でそう言うが、少女は決意を宿した目で動かなかった。

「仕方ありませんね」

 男は肉弾戦で鷹司を黙らせようと動く。鷹司もまた残る腕で対抗する。かつて桜夜と引き分けた実力は老いとケガで劣れることもなく。やすやすと迫って来た男の顔面を殴り飛ばす。

「!?」

 だがその腕は男の顔面を貫通しただけだった。殴った感触がまるで泥を殴ったようで鷹司に一瞬だけ隙が生まれてしまった。その隙を逃さず、男は銃弾を鷹司にありったけ打ち込んだ。

「ぐはっ」

「おじさま!」

 口から、体中から血を流しながら、鷹司は片膝をつく。それでも意識を保っていたのはさすがの一言だった。だが男の仲間も追いつき、絶体絶命の危機に瀕しているのは変わらなかった。血がつくのもかまわず、リンは鷹司に抱き着いた。鷹司は少女の背中に手を回し、つぶやく。

「大丈夫だ。あとはあいつが……」

薄れゆく意識の中、鷹司は男たちの前に立ちふさがる誰かを夢想した。

to be continued
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