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第6章 永久の桜の恋物語
第3話 桜の秘密 後編
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その日「宮森家」の食卓ではお通夜のようにさめざめとしていた。桜夜が三人娘に対して、妙に上手いしゃべり方で桜と司の過去を話していたからだ。サイカはえぐえぐと人目も憚らずに泣き、リオは涙をハンカチで拭きながら聴いていた。ホムラはなんとかこらえようとしているようだが目じりには涙が溜まっていた。そんな様子に司は顔を赤くし、桜は口元を隠しながら微笑んでいた。
「つまり桜の精霊である桜さんと、人間である“宮森司“の寿命には大きく差があったわけだ。そして当時の桜さんにはどうすることもできず、生まれ変わり、また出逢うのを待つしかなかった。そして……」
桜夜は顔を赤くしている司に目を向ける。
「その生まれ変わりが彼ってことだよ。ね、司君」
桜夜の言葉を司が引き継ぐ。
「小さい頃、初めてこの屋敷を訪れたときに出逢ったんだ。神となった宮森家を護っていた桜さんに。まあその頃は桜さんの力も少なくて、見えるのは僕だけ。僕の話を信じてくれるのはじいちゃんと兄さんくらいだった」
そこでサイカが首をかしげる。
「でも、今は桜さん見えてるよね。わたしたちにも」
「司君が桜さんのことを思い出したからね。それで桜さんの力が強まり、誰でも見れるようになったわけだ。……まあ、司君は自分だけのものとして見えない方がよかったかもしれないけどね?」
桜夜はニヤリと嗤う。
「いや、そんなヤンデレだかメンヘラだかわからない嗜好してないんで」
「どうだか」
2人のやり取りに、食卓に笑いが戻った。
◆◆◆
夜、皆が眠りについたころ、桜夜は寝間着浴衣に羽織を肩にかけた姿で縁側に胡坐をかいて座り、夜桜と月を見ていた。
(初めて先生に出会ったのも、こんな夜だった)
桜夜は赤い盃に一升瓶からお酒を注ぐ。そして乾杯をするように軽く月に向けて突き出してから口元に近づけようとする。すると不意に風が吹いた。一片の桜の花びらが、盃の中に入り込む。
それを見て桜夜は微笑むと、桜の花びらごと酒を飲みほした。
to be continued
「つまり桜の精霊である桜さんと、人間である“宮森司“の寿命には大きく差があったわけだ。そして当時の桜さんにはどうすることもできず、生まれ変わり、また出逢うのを待つしかなかった。そして……」
桜夜は顔を赤くしている司に目を向ける。
「その生まれ変わりが彼ってことだよ。ね、司君」
桜夜の言葉を司が引き継ぐ。
「小さい頃、初めてこの屋敷を訪れたときに出逢ったんだ。神となった宮森家を護っていた桜さんに。まあその頃は桜さんの力も少なくて、見えるのは僕だけ。僕の話を信じてくれるのはじいちゃんと兄さんくらいだった」
そこでサイカが首をかしげる。
「でも、今は桜さん見えてるよね。わたしたちにも」
「司君が桜さんのことを思い出したからね。それで桜さんの力が強まり、誰でも見れるようになったわけだ。……まあ、司君は自分だけのものとして見えない方がよかったかもしれないけどね?」
桜夜はニヤリと嗤う。
「いや、そんなヤンデレだかメンヘラだかわからない嗜好してないんで」
「どうだか」
2人のやり取りに、食卓に笑いが戻った。
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夜、皆が眠りについたころ、桜夜は寝間着浴衣に羽織を肩にかけた姿で縁側に胡坐をかいて座り、夜桜と月を見ていた。
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桜夜は赤い盃に一升瓶からお酒を注ぐ。そして乾杯をするように軽く月に向けて突き出してから口元に近づけようとする。すると不意に風が吹いた。一片の桜の花びらが、盃の中に入り込む。
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to be continued
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