上 下
34 / 74
第6章 永久の桜の恋物語

第3話 桜の秘密 後編

しおりを挟む
 その日「宮森家」の食卓ではお通夜のようにさめざめとしていた。桜夜が三人娘に対して、妙に上手いしゃべり方で桜と司の過去を話していたからだ。サイカはえぐえぐと人目も憚らずに泣き、リオは涙をハンカチで拭きながら聴いていた。ホムラはなんとかこらえようとしているようだが目じりには涙が溜まっていた。そんな様子に司は顔を赤くし、桜は口元を隠しながら微笑んでいた。

「つまり桜の精霊である桜さんと、人間である“宮森司“の寿命には大きく差があったわけだ。そして当時の桜さんにはどうすることもできず、生まれ変わり、また出逢うのを待つしかなかった。そして……」

 桜夜は顔を赤くしている司に目を向ける。

「その生まれ変わりが彼ってことだよ。ね、司君」

 桜夜の言葉を司が引き継ぐ。

「小さい頃、初めてこの屋敷を訪れたときに出逢ったんだ。神となった宮森家を護っていた桜さんに。まあその頃は桜さんの力も少なくて、見えるのは僕だけ。僕の話を信じてくれるのはじいちゃんと兄さんくらいだった」

 そこでサイカが首をかしげる。

「でも、今は桜さん見えてるよね。わたしたちにも」

「司君が桜さんのことを思い出したからね。それで桜さんの力が強まり、誰でも見れるようになったわけだ。……まあ、司君は自分だけのものとして見えない方がよかったかもしれないけどね?」

 桜夜はニヤリと嗤う。

「いや、そんなヤンデレだかメンヘラだかわからない嗜好してないんで」

「どうだか」

 2人のやり取りに、食卓に笑いが戻った。

◆◆◆

 夜、皆が眠りについたころ、桜夜は寝間着浴衣に羽織を肩にかけた姿で縁側に胡坐をかいて座り、夜桜と月を見ていた。

(初めて先生に出会ったのも、こんな夜だった)

 桜夜は赤い盃に一升瓶からお酒を注ぐ。そして乾杯をするように軽く月に向けて突き出してから口元に近づけようとする。すると不意に風が吹いた。一片の桜の花びらが、盃の中に入り込む。
 それを見て桜夜は微笑むと、桜の花びらごと酒を飲みほした。


to be continued
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。

秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚 13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。 歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。 そしてエリーゼは大人へと成長していく。 ※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。 小説家になろう様にも掲載しています。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...