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第1章 不死身の魔女

エピローグ

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 魔女との戦いのあと、桜夜は昏睡状態に陥った。魔女が異常なのであって、フェニックスと契約をしている桜夜はそこまで不死身ではなかった。確かに傷の治りは早いし、ウィルスや毒物に対しての耐性も強い。恐らくガン細胞すら駆逐できるだろう。
 だが今回のように深傷をおってしまえば、回復のために昏睡に陥ることもあった。
桜夜が目覚めたのは決戦から7日後、四方院本邸に用意された自分の部屋にしかれた布団でだった。上半身を起こし、寝巻きの胸元から手を入れて自身の腹に触る。もう傷痕すらなかった。

「今度は僕が不死身の化け物になるのかねえ」

 なんとなく呟くと窓の外を見る。桜夜が友人からもらい育てた、永久の桜が咲いていた。しばらく桜を眺めていると部屋のドアがノックされた。彼にしてはめずらしくぼんやりしていたため気づかなかった。すると部屋のドアが開けられ、3人の少女が入ってきたサイカ、ホムラ、リオだった。

「桜夜さん、目が覚めたんですね」

「もう大丈夫なのか?」

「お水いりますか?」

 と、かしましく尋ねてくる少女たちに顔を向けると桜夜は困ったように笑った。

「おっと、3人でしゃべったら答えにくいですね。とにかく無事に目が覚めてよかった」

 サイカが代表してそういうと3人は桜夜を三角形に囲むように座った。彼の苦笑が深まる。

「なんだ? 三原色の祈りを始めるのか?」

 そんな桜夜の言葉に、リオは口元を隠して笑う。

「違いますわ。わたくしたち、桜夜様が目覚めたらお伝えしたいことがあって」

「いいか? 一回しか言わないからちゃんと聞いとけよ?」

「じゃあみんないくよ。せーのっ」

「「「わたしたちをお嫁さんにしてください!」」」

 三方向から飛びかかられ、桜夜はもみくちゃにされる。当初の契約は果たした、もうかかわり合う必要もないのに、彼女立ちはこの「化け物」と関わりたがるのか。しかし不思議と抵抗や拒否をする気にはならず、彼は永久の桜を眺めた。そして自分が笑っていることに気づいた。

第1章 「不死身の魔女」 完
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