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第1章 不死身の魔女
第5話 最終決戦
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「さて、そろそろ行きますか」
傷の癒えた桜夜は、少女たちが寝静まったあと、病院の庭に出ていた。フェニキアに刺した桜吹雪と、その鞘は共鳴しあい、どこにいるかも不明な魔女のアジトを示していた。この反撃できるチャンスを逃すわけにはいかなかった。
「契約の名の下に、主をその剣の下へ導け」
彼が呪文を唱えると、彼の手に握られた鞘が輝き、桜吹雪本体がある場所へのゲートを開いた。桜夜は真剣な表情でゲートをくぐった。しばらくたったあと、そんな桜夜を追うように3人娘がゲートを潜ったことを彼は知らなかった。
◆◆◆
ゲートの先は魔女の座る玉座の間だった。魔女は妖艶な笑みを浮かべて桜夜を迎えた。
「あら、あなたが娘たちをたぶらかした男ね」
「お初にお目にかかります。お母様?」
桜夜は魔女ににこやかに言葉を返し、右手を自身の胸に当てながら頭を下げる。
「ふふ、確かに面白い男ね。あんな出来損ないたちでよければくれてやるわ」
「ありがとうございます。それでは、ご息女たちにはもう手だししないとお約束いただけますか」
「ええ、ただし……あなたが四方院家の秘密を話すならね!」
魔女が黒いイカズチを放つ。それを桜吹雪の鞘で受け止めたものの、サイカの放つイカズチとはあまりにも威力が異なり、鞘は遠く後方へと吹き飛ばされてしまった。
「っ。知りたい秘密ってなんなんだ?」
「知れたこと、四方院の初代宗主が不死を捨てたことをあたしはしっている。その術をあたしは知りたい」
「……それは無理だ。四方院にそんな術は……」
「黙れ!」
黒の大洪水が桜夜を襲い、水の中に閉じ込めてしまった。
(くっ……息が……)
「……なにを遊んでいるの? あなたももっているんでしょう? 不死の力を」
魔女の言葉に桜夜はにやりと笑った。不意に黒い水が弾けとび、桜夜から黄金のファイアボールが生まれ、魔女に向かって飛んだ。そのファイアボールは鳥に姿を変え、進んでいく。
「……フェニックス。やはりね」
魔女の影から黒い鳥が出現し、フェニックスとぶつかり合う。
「魔獣フェニキア」
水から解放された桜夜はそうつぶやくと、フェニキアに刺さったままの桜吹雪を呼び戻し、一気に魔女に切りかかる。しかし魔女はその攻撃を杖で簡単に受け止めた。
遠距離戦を得意とする魔女に対して桜夜は近距離戦を得意としている。すぐに魔女の杖を切り落とすと、魔女の腹部、魔力の源たる丹田を貫くべく桜吹雪を動かす。同時に魔女も右手に邪悪な魔力貯め桜夜の腹を貫いた。
「ぐっ……!」
桜夜の顔が激痛で歪む。だがそれを無視し、彼もまた魔女の丹田を貫いた。
「ぐわああああ! な、なんだ、その刀は」
魔女は驚き、桜夜から手を引き抜く。桜夜の顔はさらに苦痛に歪んだが、なんとか口を話す。
「……これはな、神殺しの刀だ。さあ、あなたは神より高等な生き物かな? 不死身の魔女」
十分に丹田に神殺しの力を注ぎ込むと、刀を引き抜き、桜夜はよろよろと後ろに下がった。それを守るようにフェニックスが降り立つ。そしてまた苦しむ魔女の下にフェニキアが降り立つ。
「くっ、やはり契約の大本たるフェニキアを切らなければだめか?」
フェニックスと同等以上の力を持つフェニキアでも桜吹雪の力なら倒せるかもしれない。しかしフェニキアは一度桜吹雪を刺されても死ななかった。そうなるとより強力な攻撃を加えなければならない。しかしそれをするには桜夜は消耗し過ぎていた。
「……あとはわたしたちに任せてください」
腹部を押さえてうずくまる桜夜の後ろから、声をかけられ、桜夜は振り向く。もちろんその間もフェニックスが敵の警戒を怠らない。そんな彼の後ろには白いローブに身を包んだ、守ると約束した少女たちがいた。
「なぜ来た」
桜夜の問いにサイカたちが答える。
「わたしたちはわたしたちはなりに不死の倒し方を探していました」
「不死はただ殺しても倒せねえ」
「ですがその血を引き継ぐわたくしたあたなら、母の魂を浄化できるはずです」
3人が桜夜の前に立ち、儀式を始めようとする。しかし当然フェニキアが邪魔をしようとするが、こちらにもフェニックスがいる。フェニックスは上手くフェニキアを誘導し戦場から遠ざけていく。その間にサイカたちは母を三角形を描くように囲んだ。
「お母さん。今たすけてあげるね」
3人の少女は膝をついて、両手を組み、祈りを捧げる。するとサイカから黄色い光が、ホムラからは赤い光が、リオからは青い光が溢れだし、魔女を包んだ。
魔女は包み込む光に苦悶したが、光が混じりあって白に変わる頃には安らかな笑みさえ浮かべていた。
「……これは、三原色の祈り、か」
桜夜は呟く。かつてバチカン市国を訪れた際に聞いた伝説だった。3人の聖女の清らかな祈りが混じり合い、邪悪な魔女を浄化した。それが三原色の祈りだ。
こうして不死身の魔女は浄化された。口元に笑みすら浮かべながら。契約者を失ったフェニキアは絶叫しながら消滅する。こうして不死身の魔女の物語は幕を下ろした。
to be continued
傷の癒えた桜夜は、少女たちが寝静まったあと、病院の庭に出ていた。フェニキアに刺した桜吹雪と、その鞘は共鳴しあい、どこにいるかも不明な魔女のアジトを示していた。この反撃できるチャンスを逃すわけにはいかなかった。
「契約の名の下に、主をその剣の下へ導け」
彼が呪文を唱えると、彼の手に握られた鞘が輝き、桜吹雪本体がある場所へのゲートを開いた。桜夜は真剣な表情でゲートをくぐった。しばらくたったあと、そんな桜夜を追うように3人娘がゲートを潜ったことを彼は知らなかった。
◆◆◆
ゲートの先は魔女の座る玉座の間だった。魔女は妖艶な笑みを浮かべて桜夜を迎えた。
「あら、あなたが娘たちをたぶらかした男ね」
「お初にお目にかかります。お母様?」
桜夜は魔女ににこやかに言葉を返し、右手を自身の胸に当てながら頭を下げる。
「ふふ、確かに面白い男ね。あんな出来損ないたちでよければくれてやるわ」
「ありがとうございます。それでは、ご息女たちにはもう手だししないとお約束いただけますか」
「ええ、ただし……あなたが四方院家の秘密を話すならね!」
魔女が黒いイカズチを放つ。それを桜吹雪の鞘で受け止めたものの、サイカの放つイカズチとはあまりにも威力が異なり、鞘は遠く後方へと吹き飛ばされてしまった。
「っ。知りたい秘密ってなんなんだ?」
「知れたこと、四方院の初代宗主が不死を捨てたことをあたしはしっている。その術をあたしは知りたい」
「……それは無理だ。四方院にそんな術は……」
「黙れ!」
黒の大洪水が桜夜を襲い、水の中に閉じ込めてしまった。
(くっ……息が……)
「……なにを遊んでいるの? あなたももっているんでしょう? 不死の力を」
魔女の言葉に桜夜はにやりと笑った。不意に黒い水が弾けとび、桜夜から黄金のファイアボールが生まれ、魔女に向かって飛んだ。そのファイアボールは鳥に姿を変え、進んでいく。
「……フェニックス。やはりね」
魔女の影から黒い鳥が出現し、フェニックスとぶつかり合う。
「魔獣フェニキア」
水から解放された桜夜はそうつぶやくと、フェニキアに刺さったままの桜吹雪を呼び戻し、一気に魔女に切りかかる。しかし魔女はその攻撃を杖で簡単に受け止めた。
遠距離戦を得意とする魔女に対して桜夜は近距離戦を得意としている。すぐに魔女の杖を切り落とすと、魔女の腹部、魔力の源たる丹田を貫くべく桜吹雪を動かす。同時に魔女も右手に邪悪な魔力貯め桜夜の腹を貫いた。
「ぐっ……!」
桜夜の顔が激痛で歪む。だがそれを無視し、彼もまた魔女の丹田を貫いた。
「ぐわああああ! な、なんだ、その刀は」
魔女は驚き、桜夜から手を引き抜く。桜夜の顔はさらに苦痛に歪んだが、なんとか口を話す。
「……これはな、神殺しの刀だ。さあ、あなたは神より高等な生き物かな? 不死身の魔女」
十分に丹田に神殺しの力を注ぎ込むと、刀を引き抜き、桜夜はよろよろと後ろに下がった。それを守るようにフェニックスが降り立つ。そしてまた苦しむ魔女の下にフェニキアが降り立つ。
「くっ、やはり契約の大本たるフェニキアを切らなければだめか?」
フェニックスと同等以上の力を持つフェニキアでも桜吹雪の力なら倒せるかもしれない。しかしフェニキアは一度桜吹雪を刺されても死ななかった。そうなるとより強力な攻撃を加えなければならない。しかしそれをするには桜夜は消耗し過ぎていた。
「……あとはわたしたちに任せてください」
腹部を押さえてうずくまる桜夜の後ろから、声をかけられ、桜夜は振り向く。もちろんその間もフェニックスが敵の警戒を怠らない。そんな彼の後ろには白いローブに身を包んだ、守ると約束した少女たちがいた。
「なぜ来た」
桜夜の問いにサイカたちが答える。
「わたしたちはわたしたちはなりに不死の倒し方を探していました」
「不死はただ殺しても倒せねえ」
「ですがその血を引き継ぐわたくしたあたなら、母の魂を浄化できるはずです」
3人が桜夜の前に立ち、儀式を始めようとする。しかし当然フェニキアが邪魔をしようとするが、こちらにもフェニックスがいる。フェニックスは上手くフェニキアを誘導し戦場から遠ざけていく。その間にサイカたちは母を三角形を描くように囲んだ。
「お母さん。今たすけてあげるね」
3人の少女は膝をついて、両手を組み、祈りを捧げる。するとサイカから黄色い光が、ホムラからは赤い光が、リオからは青い光が溢れだし、魔女を包んだ。
魔女は包み込む光に苦悶したが、光が混じりあって白に変わる頃には安らかな笑みさえ浮かべていた。
「……これは、三原色の祈り、か」
桜夜は呟く。かつてバチカン市国を訪れた際に聞いた伝説だった。3人の聖女の清らかな祈りが混じり合い、邪悪な魔女を浄化した。それが三原色の祈りだ。
こうして不死身の魔女は浄化された。口元に笑みすら浮かべながら。契約者を失ったフェニキアは絶叫しながら消滅する。こうして不死身の魔女の物語は幕を下ろした。
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