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14 魔王陛下
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魔王城に付くと私は勇者たちを置いて早速陛下にお目通りをお願いした。ただでさえ遅れているのにこれ以上は待ってなどいられない。
(クソッ、魔王城までの道のりを知っていたら、こいつら置いてさっさと先へ行くのに……帰りは絶対別々にする!!)
心のなかで悪態をついている間に訪問を許され、私は魔王陛下の御前に案内された。
「おや? 新しい勇者かね?」
「いえ。私はアルファー伯爵家が娘リコリスと申します。この度は魔王陛下におかれましてー……「あー、よいよい! ここでは時間が欲しいのでな、挨拶は省くように言っておる」
魔王陛下自ら会話を遮断された。……確かに忙しそうではある。
「で、今回はどの地域なのだ?」
「いえ、今回はダンジョンの件だけではございません。こちらの書状をご確認下さい」
近くの側近に書状を渡して私は最敬礼をとる。暫くすると魔王陛下は小さく溜め息を吐き、私に「楽にせよ」とひと言のべた。
「魅了か……しかもこれは高位種案件かもしれんな。……確かに面倒だ……」
陛下が書状を読みながら眉間に皺を寄せていると側にいたインテリア悪魔みたいな人が助言をする。
「吸血姫に頼みますか?」
「いや、女となると面倒が増える。……令嬢、すまないが暫くこれについて会議をしたい。そなたは魔素に耐性がどのくらいある?」
「私自身にはほぼありませんが、私は生まれながらに状態異常無効が付いておりますし、魔法も状態異常回復が使えるので魔力切れをおこさなければ問題ございません」
「そうか。では申し訳ないが少し時間を貰う」
「はい。よろしくお願い致します」
私は魔王陛下の御前を去るとメイドと護衛の2人と共に貴賓室に案内された。
「こちらのお部屋をお使い下さい。他の貴賓室より離れておりますが、この部屋は魔素が極端に少ない特殊構造となっておりますので体調不良の心配は少ないと思われます」
「まぁ。それは魔王陛下にお礼を言わねばなりませんね」
私は伯爵令嬢らしく礼をのべるとメイドは軽く頭を下げた。
「それでは私たちはここより入ることが出来ませんので、ご用の際は中のベルをご使用下さい」
「えぇ。ありがとう。わかったわ」
メイドは会釈するとお茶を用意してくると言ったが疲れているので先に休みたいと伝える。
(……そういえば結局勇者たちは来なかったな……まっ、いいけど。きっと城に到着して思いっきり性女たちと盛り上がってるだろうし、向こうが来るまで無視しておこう!)
こうして5日ほど魔王城に滞在して結果を待った。中々難航しているようで、やはりもっと早く着きたかったとあの色ボケカップルに糾弾したくなった。
(城に帰ったら無事ではすまさないからな!!)
「お待たせしました。ご案内させていただきます」
そして6日目の朝、メイドに案内され会議室に通されるとそこは重々しい空気でこちらも緊張する。
(えっ? 何?!!)
「先ずはアルファー伯爵令嬢、此度のこと感謝する」
急に顔色の悪いイケオジがお礼を言ってきたので私はとりあえず頷くことしか出来なかった。
「いきなりの礼で戸惑っただろう。詳しい話をする。すまないが空いている手前の席についてくれ」
イケオジに言われるがままに席へ着くと、そのまま話は続けられた。
「今回人間側に起きた魅了事件は、恐らく我が家から盗まれた秘宝『蠱惑の瞳』の仕業と思われる」
「……??」
「『蠱惑の瞳』とは小さな髪飾りで我ら一族以外がその身に着けると己の願望を全て叶えるために強力な魅了魔法を放す厄介な魔道具だ」
(髪飾り……確かにあのハチャメチャヒロインは髪に豪華なバラのリボンみたいなのをつけてたな……)
「しかも一度身に着けると全ての願望を満たすまで暴走し、願いが叶うと代償として魔力と生命力を根こそぎ奪って行く。それでも足りない場合は近くにいる者たちからも奪っていくのでとても危険なのだ」
「!! では、どうすればよいのですか?!!」
「まぁ、落ち着きたまえ。対処は我々が勿論する。やっと秘宝のありかが分かったのだ」
「では、一刻も早く此方に……あっ!!……」
「そうだ。行きたいのは山々だが、魔王陛下の血縁者以外が人間側に行くと正気を無くしてしまう」
(後少しなのに……どうしたら……)
「そこでアルファー伯爵令嬢の力を借りたい」
「? 私ですか?」
「あぁ。状態異常の魔法をかけて貰いそちら側に赴きたいと考えている」
(!! そうか! その手があったか!!)
「私で良ければ勿論構いません。その為にこちらに伺ったのですから!」
「では時間もない。ドラゴンでの飛行となるが構わないか?」
「?!! ドラゴン?!」
「酔いやすいか?」
「い、いえ。 そのドラゴンには乗ったことがございませんのでなんと申していいか……」
「そうか。では馬車酔いはあるか?」
「いえ、それはございません」
「なら大丈夫だ。すまないが準備できしだい向かいたい」
「はい。かしこまりました」
急に慌ただしい帰省になるがドラゴンに乗ると言う夢のような話に私の心は浮わついていた。
(クソッ、魔王城までの道のりを知っていたら、こいつら置いてさっさと先へ行くのに……帰りは絶対別々にする!!)
心のなかで悪態をついている間に訪問を許され、私は魔王陛下の御前に案内された。
「おや? 新しい勇者かね?」
「いえ。私はアルファー伯爵家が娘リコリスと申します。この度は魔王陛下におかれましてー……「あー、よいよい! ここでは時間が欲しいのでな、挨拶は省くように言っておる」
魔王陛下自ら会話を遮断された。……確かに忙しそうではある。
「で、今回はどの地域なのだ?」
「いえ、今回はダンジョンの件だけではございません。こちらの書状をご確認下さい」
近くの側近に書状を渡して私は最敬礼をとる。暫くすると魔王陛下は小さく溜め息を吐き、私に「楽にせよ」とひと言のべた。
「魅了か……しかもこれは高位種案件かもしれんな。……確かに面倒だ……」
陛下が書状を読みながら眉間に皺を寄せていると側にいたインテリア悪魔みたいな人が助言をする。
「吸血姫に頼みますか?」
「いや、女となると面倒が増える。……令嬢、すまないが暫くこれについて会議をしたい。そなたは魔素に耐性がどのくらいある?」
「私自身にはほぼありませんが、私は生まれながらに状態異常無効が付いておりますし、魔法も状態異常回復が使えるので魔力切れをおこさなければ問題ございません」
「そうか。では申し訳ないが少し時間を貰う」
「はい。よろしくお願い致します」
私は魔王陛下の御前を去るとメイドと護衛の2人と共に貴賓室に案内された。
「こちらのお部屋をお使い下さい。他の貴賓室より離れておりますが、この部屋は魔素が極端に少ない特殊構造となっておりますので体調不良の心配は少ないと思われます」
「まぁ。それは魔王陛下にお礼を言わねばなりませんね」
私は伯爵令嬢らしく礼をのべるとメイドは軽く頭を下げた。
「それでは私たちはここより入ることが出来ませんので、ご用の際は中のベルをご使用下さい」
「えぇ。ありがとう。わかったわ」
メイドは会釈するとお茶を用意してくると言ったが疲れているので先に休みたいと伝える。
(……そういえば結局勇者たちは来なかったな……まっ、いいけど。きっと城に到着して思いっきり性女たちと盛り上がってるだろうし、向こうが来るまで無視しておこう!)
こうして5日ほど魔王城に滞在して結果を待った。中々難航しているようで、やはりもっと早く着きたかったとあの色ボケカップルに糾弾したくなった。
(城に帰ったら無事ではすまさないからな!!)
「お待たせしました。ご案内させていただきます」
そして6日目の朝、メイドに案内され会議室に通されるとそこは重々しい空気でこちらも緊張する。
(えっ? 何?!!)
「先ずはアルファー伯爵令嬢、此度のこと感謝する」
急に顔色の悪いイケオジがお礼を言ってきたので私はとりあえず頷くことしか出来なかった。
「いきなりの礼で戸惑っただろう。詳しい話をする。すまないが空いている手前の席についてくれ」
イケオジに言われるがままに席へ着くと、そのまま話は続けられた。
「今回人間側に起きた魅了事件は、恐らく我が家から盗まれた秘宝『蠱惑の瞳』の仕業と思われる」
「……??」
「『蠱惑の瞳』とは小さな髪飾りで我ら一族以外がその身に着けると己の願望を全て叶えるために強力な魅了魔法を放す厄介な魔道具だ」
(髪飾り……確かにあのハチャメチャヒロインは髪に豪華なバラのリボンみたいなのをつけてたな……)
「しかも一度身に着けると全ての願望を満たすまで暴走し、願いが叶うと代償として魔力と生命力を根こそぎ奪って行く。それでも足りない場合は近くにいる者たちからも奪っていくのでとても危険なのだ」
「!! では、どうすればよいのですか?!!」
「まぁ、落ち着きたまえ。対処は我々が勿論する。やっと秘宝のありかが分かったのだ」
「では、一刻も早く此方に……あっ!!……」
「そうだ。行きたいのは山々だが、魔王陛下の血縁者以外が人間側に行くと正気を無くしてしまう」
(後少しなのに……どうしたら……)
「そこでアルファー伯爵令嬢の力を借りたい」
「? 私ですか?」
「あぁ。状態異常の魔法をかけて貰いそちら側に赴きたいと考えている」
(!! そうか! その手があったか!!)
「私で良ければ勿論構いません。その為にこちらに伺ったのですから!」
「では時間もない。ドラゴンでの飛行となるが構わないか?」
「?!! ドラゴン?!」
「酔いやすいか?」
「い、いえ。 そのドラゴンには乗ったことがございませんのでなんと申していいか……」
「そうか。では馬車酔いはあるか?」
「いえ、それはございません」
「なら大丈夫だ。すまないが準備できしだい向かいたい」
「はい。かしこまりました」
急に慌ただしい帰省になるがドラゴンに乗ると言う夢のような話に私の心は浮わついていた。
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