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1 おばあちゃん家から異世界へ行けます
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私はおばあちゃん子だった。クズ伯父の母親とはとても思えないほど優しくていい人だ。
ある日お婆ちゃんが亡くなると遺産目当てで家に押し入り金目の物を探すが全く無く、ほぼお婆ちゃんが住んでいた家くらいしか価値がなかった。
だが新築で立地も良かったので文句を言いつつも、無理矢理相続権を主張して伯父がお婆ちゃんの家を奪い取ってしまう。孫である私は何も出来ずに思い出の場所を取られ、無力感で一杯となりその日は号泣した。
しかし半年後1本の電話で事態は大きく動く。
警察からの連絡で伯父が行方不明らしい。
伯父はおばあちゃん家を貰うと賃貸として出していたが1人、2人と消えてしまって事故物件となってしまったらしい。
それでも駅が近いので家賃を低くしたらまた入ってくれたらしいのだが、その人もやっぱり消えてしまう。
さすがの伯父も気味が悪いと壊そうとしたら、今度は伯父が消えたらしいのだ。
解体業者が連絡がつかないと伯父の彼女に連絡したが全く居場所が分からない。そこから行方不明の捜索として家に連絡が来たのだが、まぁ面倒くさいことこの上ない。
あの伯父は居なくなってからも迷惑をかけ続けるんだから根っからのクズだ。
結局伯父は見つからず行方不明のままとなる。解体もなくなり私はこれ幸いと、おばあちゃんの家を貰った。
(まぁ、借りてる事になるかもしれないけど……)
「ただいま」
もう住めないと諦めていた家に戻ってこれて1人玄関で懐古していた。
「神様……た、すけて……」
荷解きがある程度終わった頃、小さな子供の声が聞こえたので、もしかしたら空き家の間に子供が事件に巻き込まれたかと思い、急いで探すとトイレの隣にある物置部屋から微かに聞こえる。
「……を……たす……け……て……」
「大丈夫よ! 今助けるから!!」
慌てて扉を開けて中に入ると、そこは全く見たことのない古ぼけた豪邸の一室だった。
「えっ?」
「……助けてくれるの?」
呆気にとられてると、下から子供の声が聞こえた。
「じゃ、メリーを助けて!!!」
泣きじゃくったのだろう顔がぐちゃぐちゃだ。でもそれよりもその子の格好に驚いた。汚いドレスを着ている。
何がなんたか分からない内にスカートの裾を引っ張られながら隣の部屋に行くとベッドに死にそうな子供がいた。
「メリーが死んじゃう! 助けて!!」
確かにベッドの子供は苦しそうに息をしている。色々混乱しているが、この子は確かに見過ごせない。
「分かったわ! 今、色々持っているから待ってて!!」
私は出て来た扉に戻り急いで買い物に出掛けた。近くのドラッグストア、スーパー、衣料品店などを回って粗方買い揃えると、そのまま先ほどの扉から子供たちの所に戻った。
「戻ったよ! まだ大丈夫?」
「うん。メリーまだ生きてる!」
そこからは大変だった。メリーと言う子供も同じように汚くて臭いので、熱はあるけど軽く体を拭いて新しく買った下着とパジャマを着させた。そして経口補水液と飲むゼリーを与えてから子供用の漢方薬を飲ませた。
次にエアーマットレスと言う名の浮き袋フロートを膨らませ、シーツを付ければ簡易の新しいベッド誕生だ。
「ベッドの上にベッドを作るのも変だけど、埃を吸わない為にも仕方ないね」
「メリー大丈夫?」
「まだ熱はあるけどもう少し様子を見ようね」
「うん」
するとお腹がなる音がした。
「お腹すいてるの?」
「……」
「じゃ、一緒にごはん食べようか!」
「……いいの?」
「うん! 一緒に食べよ!」
「うん!」
しかしこの子もとても臭い。食事より先に風呂かな……
「ではその前にお風呂に入ろうか!」
「? お風呂ないよ?」
「お風呂場が、無いってこと?」
「うん。浴槽もないよ」
なんてこった! ビニールプールは流石にない。時期的にも売ってないだろうし、何か代用品無いだろうか……
とりあえず何か無いか屋敷の中を見回る事にした。すると奇妙な事に幼子2人しかこの屋敷には人がいない。いくらなんでもおかしい。
「いや、今はそれより風呂場だ。軽く見てなければ先にご飯にしよう」
「えっ。ご飯お預け? マリーお腹ペコペコ」
「うっ……」
悲しい顔を見たらそんなこと言えなかった。仕方なく家に戻り先程スーパーで買ったお弁当をレンチンして持ってきた。
埃を被ってた机と椅子を軽く掃除してテーブルクロスをかける。そこに飲み物とお弁当を置いた。
「良い匂い!!」
「こんな物でごめんね。自炊する時間がなくてさ」
「? 何で謝るの? ご飯食べれるから嬉しいよ?」
「……そっか。じゃ、熱いから気を付けてね」
「うん! 温かいご飯だ! 器も面白いね! 軽い!!」
女の子は初めて見るご飯に『これは何?』と聞きながら目を輝かせ、美味しい、美味しいと喜んで完食した。
「そう言えば名前聞いてなかったね。私は佐藤花(さとう はな)だよ。花って呼んでね」
「うん! 私はマリーだよ!」
こうして私と幼いマリーは出会った。
そしてこの出会いが、失踪事件だったと分かるにはもう少し先の話になる……
ある日お婆ちゃんが亡くなると遺産目当てで家に押し入り金目の物を探すが全く無く、ほぼお婆ちゃんが住んでいた家くらいしか価値がなかった。
だが新築で立地も良かったので文句を言いつつも、無理矢理相続権を主張して伯父がお婆ちゃんの家を奪い取ってしまう。孫である私は何も出来ずに思い出の場所を取られ、無力感で一杯となりその日は号泣した。
しかし半年後1本の電話で事態は大きく動く。
警察からの連絡で伯父が行方不明らしい。
伯父はおばあちゃん家を貰うと賃貸として出していたが1人、2人と消えてしまって事故物件となってしまったらしい。
それでも駅が近いので家賃を低くしたらまた入ってくれたらしいのだが、その人もやっぱり消えてしまう。
さすがの伯父も気味が悪いと壊そうとしたら、今度は伯父が消えたらしいのだ。
解体業者が連絡がつかないと伯父の彼女に連絡したが全く居場所が分からない。そこから行方不明の捜索として家に連絡が来たのだが、まぁ面倒くさいことこの上ない。
あの伯父は居なくなってからも迷惑をかけ続けるんだから根っからのクズだ。
結局伯父は見つからず行方不明のままとなる。解体もなくなり私はこれ幸いと、おばあちゃんの家を貰った。
(まぁ、借りてる事になるかもしれないけど……)
「ただいま」
もう住めないと諦めていた家に戻ってこれて1人玄関で懐古していた。
「神様……た、すけて……」
荷解きがある程度終わった頃、小さな子供の声が聞こえたので、もしかしたら空き家の間に子供が事件に巻き込まれたかと思い、急いで探すとトイレの隣にある物置部屋から微かに聞こえる。
「……を……たす……け……て……」
「大丈夫よ! 今助けるから!!」
慌てて扉を開けて中に入ると、そこは全く見たことのない古ぼけた豪邸の一室だった。
「えっ?」
「……助けてくれるの?」
呆気にとられてると、下から子供の声が聞こえた。
「じゃ、メリーを助けて!!!」
泣きじゃくったのだろう顔がぐちゃぐちゃだ。でもそれよりもその子の格好に驚いた。汚いドレスを着ている。
何がなんたか分からない内にスカートの裾を引っ張られながら隣の部屋に行くとベッドに死にそうな子供がいた。
「メリーが死んじゃう! 助けて!!」
確かにベッドの子供は苦しそうに息をしている。色々混乱しているが、この子は確かに見過ごせない。
「分かったわ! 今、色々持っているから待ってて!!」
私は出て来た扉に戻り急いで買い物に出掛けた。近くのドラッグストア、スーパー、衣料品店などを回って粗方買い揃えると、そのまま先ほどの扉から子供たちの所に戻った。
「戻ったよ! まだ大丈夫?」
「うん。メリーまだ生きてる!」
そこからは大変だった。メリーと言う子供も同じように汚くて臭いので、熱はあるけど軽く体を拭いて新しく買った下着とパジャマを着させた。そして経口補水液と飲むゼリーを与えてから子供用の漢方薬を飲ませた。
次にエアーマットレスと言う名の浮き袋フロートを膨らませ、シーツを付ければ簡易の新しいベッド誕生だ。
「ベッドの上にベッドを作るのも変だけど、埃を吸わない為にも仕方ないね」
「メリー大丈夫?」
「まだ熱はあるけどもう少し様子を見ようね」
「うん」
するとお腹がなる音がした。
「お腹すいてるの?」
「……」
「じゃ、一緒にごはん食べようか!」
「……いいの?」
「うん! 一緒に食べよ!」
「うん!」
しかしこの子もとても臭い。食事より先に風呂かな……
「ではその前にお風呂に入ろうか!」
「? お風呂ないよ?」
「お風呂場が、無いってこと?」
「うん。浴槽もないよ」
なんてこった! ビニールプールは流石にない。時期的にも売ってないだろうし、何か代用品無いだろうか……
とりあえず何か無いか屋敷の中を見回る事にした。すると奇妙な事に幼子2人しかこの屋敷には人がいない。いくらなんでもおかしい。
「いや、今はそれより風呂場だ。軽く見てなければ先にご飯にしよう」
「えっ。ご飯お預け? マリーお腹ペコペコ」
「うっ……」
悲しい顔を見たらそんなこと言えなかった。仕方なく家に戻り先程スーパーで買ったお弁当をレンチンして持ってきた。
埃を被ってた机と椅子を軽く掃除してテーブルクロスをかける。そこに飲み物とお弁当を置いた。
「良い匂い!!」
「こんな物でごめんね。自炊する時間がなくてさ」
「? 何で謝るの? ご飯食べれるから嬉しいよ?」
「……そっか。じゃ、熱いから気を付けてね」
「うん! 温かいご飯だ! 器も面白いね! 軽い!!」
女の子は初めて見るご飯に『これは何?』と聞きながら目を輝かせ、美味しい、美味しいと喜んで完食した。
「そう言えば名前聞いてなかったね。私は佐藤花(さとう はな)だよ。花って呼んでね」
「うん! 私はマリーだよ!」
こうして私と幼いマリーは出会った。
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