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第24話 カミシロ山
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「ハァ……ハァ……!」
カミシロ山へ足を踏み入れたアキは走っていた。
カミシロ山がどうなっているかなど、アキには周りを観察する余裕はなかった。
『いやぁーーーっ!!! 誰か助けてぇーーーっ!!!』
アキの手を振り払い、一人でカミシロ山へ足を踏み入れた典子の叫び声。
典子がふざけて叫んだとか、典子ではない“何か”がアキを誘うために典子の真似をしたのか。
理由を知るためにも、一刻も早く典子を見つけ出すこと。
それがアキの最優先だった。
「のりちゃん! のりちゃん、何処にいるの!?」
辺りは薄暗くて視界が悪い。
自分が何処を走っているのか分からない。
それでもアキは走り続ける。
パキッ
何かが折れる音が近くで聞こえた。
「きゃあ!」
「!」
その直後に聞こえた典子の声。
「のりちゃん!」
アキは典子の声がした方へ向かう。
「え……」
そして、典子の姿を見付けた。
だけど、アキは自分の目に映った光景が信じられなかった。
「う"んっ、ん"ーっ、あ"ぁ……!」
何故か呻き声を出しながら匍匐前進をしている典子と向き合うように鉢合わせするアキ。
典子の身体は震えていた。
「あ、あぁ、アキ……」
顔を上げたらアキがいたことに気付いて、強張りながらホッとしたような表情を浮かべる典子。
アキは典子を見付けられて安心出来る事態ではなかった。
「うっ」
匍匐前進をしている典子の後ろに、“幽霊”がいたのだ。
典子は目的だった“幽霊”に出会したことになる。
“幽霊”はゆらゆらと揺れる黒い物体。
黒い物体の正体は、髪の毛。
髪の長い“人間”が一歩進む度に左、右、左…と交互に大きく揺れて歩くことで長い髪の毛が揺れている。
前髪も同じくらいの長さで顔を覆っていて、どんな顔をしているのか分からない。
ただ、ゆっくりとこちらに近付いて来ていた。
「え?」
アキはカミシロ山付近で見掛けた時には気付けなかったことに気付く。
“幽霊”は土栄中学校の制服を着ていた。
アキと典子が普段から自分が着ている制服だ、見間違えるわけがなかった。
(土栄中の生徒だったの……?)
“幽霊”の正体は、土栄中学校の女子生徒だったようだ。
それよりも、
「のりちゃん」
アキは自分を見ながら匍匐前進の姿勢のまま動かない典子に手を貸して、匍匐前進からしゃがませる姿勢に変える。
「う、あ……」
尋常じゃない典子の怯えに、アキは危機感を抱く。
典子に何があったのか聞き出すのは無理そうだ。
(あれ?)
アキは“幽霊”が右手に何かを持っていることに気付く。
それが何か分かった瞬間。
ニタァ……
身体が揺れて前髪から僅かに見えた“幽霊”の口元が弧を描いた気がした。
「っ、逃げるよ!」
アキは無理矢理典子を立たせて、典子の手を引っ張りながら走り出した。
“幽霊”の右手には―――斧が握られていた。
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「ハァ……ハァ……!」
カミシロ山へ足を踏み入れたアキは走っていた。
カミシロ山がどうなっているかなど、アキには周りを観察する余裕はなかった。
『いやぁーーーっ!!! 誰か助けてぇーーーっ!!!』
アキの手を振り払い、一人でカミシロ山へ足を踏み入れた典子の叫び声。
典子がふざけて叫んだとか、典子ではない“何か”がアキを誘うために典子の真似をしたのか。
理由を知るためにも、一刻も早く典子を見つけ出すこと。
それがアキの最優先だった。
「のりちゃん! のりちゃん、何処にいるの!?」
辺りは薄暗くて視界が悪い。
自分が何処を走っているのか分からない。
それでもアキは走り続ける。
パキッ
何かが折れる音が近くで聞こえた。
「きゃあ!」
「!」
その直後に聞こえた典子の声。
「のりちゃん!」
アキは典子の声がした方へ向かう。
「え……」
そして、典子の姿を見付けた。
だけど、アキは自分の目に映った光景が信じられなかった。
「う"んっ、ん"ーっ、あ"ぁ……!」
何故か呻き声を出しながら匍匐前進をしている典子と向き合うように鉢合わせするアキ。
典子の身体は震えていた。
「あ、あぁ、アキ……」
顔を上げたらアキがいたことに気付いて、強張りながらホッとしたような表情を浮かべる典子。
アキは典子を見付けられて安心出来る事態ではなかった。
「うっ」
匍匐前進をしている典子の後ろに、“幽霊”がいたのだ。
典子は目的だった“幽霊”に出会したことになる。
“幽霊”はゆらゆらと揺れる黒い物体。
黒い物体の正体は、髪の毛。
髪の長い“人間”が一歩進む度に左、右、左…と交互に大きく揺れて歩くことで長い髪の毛が揺れている。
前髪も同じくらいの長さで顔を覆っていて、どんな顔をしているのか分からない。
ただ、ゆっくりとこちらに近付いて来ていた。
「え?」
アキはカミシロ山付近で見掛けた時には気付けなかったことに気付く。
“幽霊”は土栄中学校の制服を着ていた。
アキと典子が普段から自分が着ている制服だ、見間違えるわけがなかった。
(土栄中の生徒だったの……?)
“幽霊”の正体は、土栄中学校の女子生徒だったようだ。
それよりも、
「のりちゃん」
アキは自分を見ながら匍匐前進の姿勢のまま動かない典子に手を貸して、匍匐前進からしゃがませる姿勢に変える。
「う、あ……」
尋常じゃない典子の怯えに、アキは危機感を抱く。
典子に何があったのか聞き出すのは無理そうだ。
(あれ?)
アキは“幽霊”が右手に何かを持っていることに気付く。
それが何か分かった瞬間。
ニタァ……
身体が揺れて前髪から僅かに見えた“幽霊”の口元が弧を描いた気がした。
「っ、逃げるよ!」
アキは無理矢理典子を立たせて、典子の手を引っ張りながら走り出した。
“幽霊”の右手には―――斧が握られていた。
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