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掌編小説
10年間の相棒
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4歳にして、光を失い闇の中を彷徨っていたわたしに、君はもう一度“光”を与えてくれた。
君がいたからわたしはまた、この世の光景を見ることが出来た。
君がいなければわたしはまた、光を失い闇の中を彷徨い続けただろう。
君はわたしにとって、なくてはならない存在になった。
そう、この日から君はわたしの―――相棒になったんだ。
わたしが君なしでも光を失わなくなるまで、君はわたしと一緒に人生を歩んでくれた。
でも夜になると、君はわたしの側から離れなくてはならない。
だから夜は闇が増して、怖くて眠れないことが多かった。
だけどそんな夜を乗り越えて、朝が来ると君はまた、1日中わたしの側にいてくれた。
そんな毎日を繰り返して、そして気づけば10年の月日が過ぎていた。
いつものように、半年に1回の通院。
それは突然だった。
その病院の医師に、
「もう大丈夫ですよ。必要なくなりましたよ」
わたしは一度、耳を疑った。
ヒツヨウ ナクナッタ ?
それを理解した時、凄く嬉しかった。
君がいなくてもわたしはもう、光を失うことがなくなったのだ。
だけどそれと同時に、悲しくもなった。
ずっと支えてくれた君をわたしはもう、使わなく―――使えなくなるのだ。
でも、君を見た時……、
『良かったネ、おめでとう』
そう言ってくれてるようだった。
そして家に帰ったわたしは、君をケースの中に大切にしまった。
たとえ今のわたしに必要なくなってもいつかまた、光を失って君に頼る日が来るかもしれない。
10年前にはぼやけて見えなかった君。
手で触れるだけで毎日、君を確認してたね。
君のおかげでわたしは今、君をこんなにはっきり見られているよ。
だから、感謝の気持ちを込めて―――…。
“アリガトウ”
心の中でわたしは、君に呟いた。
忘れないよ。
2005年07月16日(土)
- END -
4歳にして、光を失い闇の中を彷徨っていたわたしに、君はもう一度“光”を与えてくれた。
君がいたからわたしはまた、この世の光景を見ることが出来た。
君がいなければわたしはまた、光を失い闇の中を彷徨い続けただろう。
君はわたしにとって、なくてはならない存在になった。
そう、この日から君はわたしの―――相棒になったんだ。
わたしが君なしでも光を失わなくなるまで、君はわたしと一緒に人生を歩んでくれた。
でも夜になると、君はわたしの側から離れなくてはならない。
だから夜は闇が増して、怖くて眠れないことが多かった。
だけどそんな夜を乗り越えて、朝が来ると君はまた、1日中わたしの側にいてくれた。
そんな毎日を繰り返して、そして気づけば10年の月日が過ぎていた。
いつものように、半年に1回の通院。
それは突然だった。
その病院の医師に、
「もう大丈夫ですよ。必要なくなりましたよ」
わたしは一度、耳を疑った。
ヒツヨウ ナクナッタ ?
それを理解した時、凄く嬉しかった。
君がいなくてもわたしはもう、光を失うことがなくなったのだ。
だけどそれと同時に、悲しくもなった。
ずっと支えてくれた君をわたしはもう、使わなく―――使えなくなるのだ。
でも、君を見た時……、
『良かったネ、おめでとう』
そう言ってくれてるようだった。
そして家に帰ったわたしは、君をケースの中に大切にしまった。
たとえ今のわたしに必要なくなってもいつかまた、光を失って君に頼る日が来るかもしれない。
10年前にはぼやけて見えなかった君。
手で触れるだけで毎日、君を確認してたね。
君のおかげでわたしは今、君をこんなにはっきり見られているよ。
だから、感謝の気持ちを込めて―――…。
“アリガトウ”
心の中でわたしは、君に呟いた。
忘れないよ。
2005年07月16日(土)
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