上 下
10 / 11
掌編小説

10年間の相棒

しおりを挟む
 .




 4歳にして、光を失い闇の中を彷徨っていたわたしに、君はもう一度“光”を与えてくれた。
 君がいたからわたしはまた、この世の光景を見ることが出来た。
 君がいなければわたしはまた、光を失い闇の中を彷徨い続けただろう。
 君はわたしにとって、なくてはならない存在になった。
 そう、この日から君はわたしの―――相棒になったんだ。

 わたしが君なしでも光を失わなくなるまで、君はわたしと一緒に人生を歩んでくれた。
 でも夜になると、君はわたしの側から離れなくてはならない。
 だから夜は闇が増して、怖くて眠れないことが多かった。
 だけどそんな夜を乗り越えて、朝が来ると君はまた、1日中わたしの側にいてくれた。

 そんな毎日を繰り返して、そして気づけば10年の月日が過ぎていた。

 いつものように、半年に1回の通院。
 それは突然だった。
 その病院の医師に、

「もう大丈夫ですよ。必要なくなりましたよ」

 わたしは一度、耳を疑った。

 ヒツヨウ ナクナッタ ?

 それを理解した時、凄く嬉しかった。
 君がいなくてもわたしはもう、光を失うことがなくなったのだ。
 だけどそれと同時に、悲しくもなった。
 ずっと支えてくれた君をわたしはもう、使わなく―――使えなくなるのだ。

 でも、君を見た時……、


『良かったネ、おめでとう』


 そう言ってくれてるようだった。
 そして家に帰ったわたしは、君をケースの中に大切にしまった。
 たとえ今のわたしに必要なくなってもいつかまた、光を失って君に頼る日が来るかもしれない。
 10年前にはぼやけて見えなかった君。
 手で触れるだけで毎日、君を確認してたね。
 君のおかげでわたしは今、君をこんなにはっきり見られているよ。
 だから、感謝の気持ちを込めて―――…。


“アリガトウ”


 心の中でわたしは、君に呟いた。




 忘れないよ。
 2005年07月16日(土)




 - END -
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【R 18】現役小学校教師と秘密のSEX

kira jun(仮)
エッセイ・ノンフィクション
先生だってオナニーするんだよ

AIセンセーと私

np03999
エッセイ・ノンフィクション
ド素人が、手探りでOpenAI ChatGPTを使い、『センセーと日本語』と戦う記録。 使用アプリは、チャッピー(無料)です。 めちゃくちゃ協力的で、私のニーズに寄り添ってくれるアプリ。いつかいい感じのすんごいやつを生成したい。 頼んますよセンセー!! ※使っている(いや、使われている)人は、ただのBL大好き一般人です。特別な知識もなければ、特殊な訓練も受けたことはありません。オメガバースでいうところのベータです。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

『これ』が食べたい!

かがみゆえ
エッセイ・ノンフィクション
個人的に食べたいものへ思いを馳せるお話です。1話ずつ完結です。 (※その食べ物によっては、2話目・3話目が存在することがあります。) 食べ物のことを考えると、『あぁ、こんなことがあったなぁ~』と思い出すことがあるので、その食べ物にまつわるエピソードも書いてたりしています。 ⚠️カクヨム様とエブリスタ様にも投稿しています。 .

「繊細さんの日々のこと」

黒子猫
エッセイ・ノンフィクション
「繊細さん」の私が、日常で感じたことなどを綴ります。 ちなみに私は内向型HSPです✨

校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話

赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

処理中です...