上 下
5 / 32
第一章:いざ、王都!

5. ウサギ、トラと対面する

しおりを挟む

「はじめまして、ティグレです。よろしくね~!」

 アルジェントに連れられ家に入ると、ダイニングルームに金髪美人が座っている。
 名をティグレと言うらしい。
 何だかとてもナイスバディで、ついそこに目がいってしまうが不可抗力である。

 仕事に戻るアルジェントを見送り、紅茶を飲みながらティグレと談笑する。
 ティグレは人見知りをしないタイプでネロのことも直ぐに受け入れたようである。
 ニコニコとしながら話すその姿にネロもホッと安心する。

 話を聞くところ、ティグレはアルジェントの学友で今年26歳の優秀な文官であるらしい。

 平民の出身であるようだが学生の頃から優秀で常に学年トップ。
 また恋愛に超積極的なようで、ティグレの好みに該当する人がいれば即猛アタック。  
 そういう意味でも有名であったようだ。

「あ、じゃあ今はアルジェントさんとお付き合いされてる…ってことですか?」

 どんなに仲の良い学友といっても、いい大人が2人で暮らしているというのはつまりそう言うことだよな…と思ったネロである。

 しかし…「それはない!!」と、勢い良く否定されてしまう。あまりの勢いの良さにネロの体がビクッと跳ねる。

「アルジェントは嫌よぉ~。もっと優秀で~可愛くて美味しそうな男がいいもの!」

 なんだか言い分が強者のそれである…。流石トラ。
 そんなティグレは余程恋仲だと思われたのが不満だったのか口を尖らせ若干拗ねている…かわいい。

 詳しく話を聞くと、侯爵家の三男であるアルジェントがこの家を貰い受け、1人で住むには部屋が余るということでルームシェアを始めたそう。 

 そこに家から出たい&安く住みたいティグレが飛びついたという。ちなみに以前までもう1人獣人が住んでいたが仕事の関係で出て行った、ということであった。

 その話を聞きネロは、部屋が余るからとルームシェアをする貴族…?と少し首を傾げたり…傾げなかったり…。


 ***

 夜になりアルジェントが帰宅したところで改めて話をする。

「あの、これから私は何をすればいいのでしょう…」
「ああ、そうだな。では…」
 

 基本的な仕事は食事の用意、共有スペース(ダイニングやリビング、トイレ、浴室等)の掃除、洗濯ということとなった。

 以前はアルジェントの実家の使用人が行っていたらしいのだが、年齢も年齢だったため代わりを雇うことにしたという。求人を見つけたのはラッキーだったようだ。

 アルジェントの実家から若い使用人を連れて来ればいいのでは…?と思ったのだが「色目を使われるのは面倒」ということらしい。…なんかあったのかもしれない。

 ただ、求人であってもアルジェントを見て色目使う人も現れるだろうに…と、ネロは目の前の端正な顔立ちを見て思う。琥珀色の瞳が宝石のように綺麗で吸い込まれそうである。
 
 ネロもアルジェントの容姿や彼の優しさについ惹かれてしまう人の気持ちが分からなくもないが、それよりも“雇用主に嫌われたくない“という気持ちの方が強い。

 雇用主に嫌われ仕事がなくなってしまえば職と家を同時に失うことになる。
 そんなの嫌だ。それだけは困る。


 というわけでネロは、「絶対色目なんて使いません!!」という固い意志のもと、


「頑張ります!よろしくお願いします!」


 と、アルジェントとティグレを前にして勢いよく頭を下げるのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

夫の告白に衝撃「家を出て行け!」幼馴染と再婚するから子供も置いて出ていけと言われた。

window
恋愛
伯爵家の長男レオナルド・フォックスと公爵令嬢の長女イリス・ミシュランは結婚した。 三人の子供に恵まれて平穏な生活を送っていた。 だがその日、夫のレオナルドの言葉で幸せな家庭は崩れてしまった。 レオナルドは幼馴染のエレナと再婚すると言い妻のイリスに家を出て行くように言う。 イリスは驚くべき告白に動揺したような表情になる。 子供の親権も放棄しろと言われてイリスは戸惑うことばかりでどうすればいいのか分からなくて混乱した。

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

運命の番?棄てたのは貴方です

ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。 番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。 ※自己設定満載ですので気を付けてください。 ※性描写はないですが、一線を越える個所もあります ※多少の残酷表現あります。 以上2点からセルフレイティング

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

訳あり侯爵様に嫁いで白い結婚をした虐げられ姫が逃亡を目指した、その結果

柴野
恋愛
国王の側妃の娘として生まれた故に虐げられ続けていた王女アグネス・エル・シェブーリエ。 彼女は父に命じられ、半ば厄介払いのような形で訳あり侯爵様に嫁がされることになる。 しかしそこでも不要とされているようで、「きみを愛することはない」と言われてしまったアグネスは、ニヤリと口角を吊り上げた。 「どうせいてもいなくてもいいような存在なんですもの、さっさと逃げてしまいましょう!」 逃亡して自由の身になる――それが彼女の長年の夢だったのだ。 あらゆる手段を使って脱走を実行しようとするアグネス。だがなぜか毎度毎度侯爵様にめざとく見つかってしまい、その度失敗してしまう。 しかも日に日に彼の態度は温かみを帯びたものになっていった。 気づけば一日中彼と同じ部屋で過ごすという軟禁状態になり、溺愛という名の雁字搦めにされていて……? 虐げられ姫と女性不信な侯爵によるラブストーリー。 ※小説家になろうに重複投稿しています。

処理中です...