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第一章:いざ、王都!
5. ウサギ、トラと対面する
しおりを挟む「はじめまして、ティグレです。よろしくね~!」
アルジェントに連れられ家に入ると、ダイニングルームに金髪美人が座っている。
名をティグレと言うらしい。
何だかとてもナイスバディで、ついそこに目がいってしまうが不可抗力である。
仕事に戻るアルジェントを見送り、紅茶を飲みながらティグレと談笑する。
ティグレは人見知りをしないタイプでネロのことも直ぐに受け入れたようである。
ニコニコとしながら話すその姿にネロもホッと安心する。
話を聞くところ、ティグレはアルジェントの学友で今年26歳の優秀な文官であるらしい。
平民の出身であるようだが学生の頃から優秀で常に学年トップ。
また恋愛に超積極的なようで、ティグレの好みに該当する人がいれば即猛アタック。
そういう意味でも有名であったようだ。
「あ、じゃあ今はアルジェントさんとお付き合いされてる…ってことですか?」
どんなに仲の良い学友といっても、いい大人が2人で暮らしているというのはつまりそう言うことだよな…と思ったネロである。
しかし…「それはない!!」と、勢い良く否定されてしまう。あまりの勢いの良さにネロの体がビクッと跳ねる。
「アルジェントは嫌よぉ~。もっと優秀で~可愛くて美味しそうな男がいいもの!」
なんだか言い分が強者のそれである…。流石トラ。
そんなティグレは余程恋仲だと思われたのが不満だったのか口を尖らせ若干拗ねている…かわいい。
詳しく話を聞くと、侯爵家の三男であるアルジェントがこの家を貰い受け、1人で住むには部屋が余るということでルームシェアを始めたそう。
そこに家から出たい&安く住みたいティグレが飛びついたという。ちなみに以前までもう1人獣人が住んでいたが仕事の関係で出て行った、ということであった。
その話を聞きネロは、部屋が余るからとルームシェアをする貴族…?と少し首を傾げたり…傾げなかったり…。
***
夜になりアルジェントが帰宅したところで改めて話をする。
「あの、これから私は何をすればいいのでしょう…」
「ああ、そうだな。では…」
基本的な仕事は食事の用意、共有スペース(ダイニングやリビング、トイレ、浴室等)の掃除、洗濯ということとなった。
以前はアルジェントの実家の使用人が行っていたらしいのだが、年齢も年齢だったため代わりを雇うことにしたという。求人を見つけたのはラッキーだったようだ。
アルジェントの実家から若い使用人を連れて来ればいいのでは…?と思ったのだが「色目を使われるのは面倒」ということらしい。…なんかあったのかもしれない。
ただ、求人であってもアルジェントを見て色目使う人も現れるだろうに…と、ネロは目の前の端正な顔立ちを見て思う。琥珀色の瞳が宝石のように綺麗で吸い込まれそうである。
ネロもアルジェントの容姿や彼の優しさについ惹かれてしまう人の気持ちが分からなくもないが、それよりも“雇用主に嫌われたくない“という気持ちの方が強い。
雇用主に嫌われ仕事がなくなってしまえば職と家を同時に失うことになる。
そんなの嫌だ。それだけは困る。
というわけでネロは、「絶対色目なんて使いません!!」という固い意志のもと、
「頑張ります!よろしくお願いします!」
と、アルジェントとティグレを前にして勢いよく頭を下げるのであった。
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