233 / 238
【外伝】貴方にとっては誤算でも俺たちにとっては正に僥倖
femtiosju
しおりを挟む
クシュダートを無事卒業した俺たちはカフェCarm二号店Condidoを開店させた。意味は隠れ家。会員制のブックカフェだ。場所は深沢家私有地の森。首都栢杠で唯一緑が生い茂る一帯。
大木を利用して、カフェはツリーハウスになっている。
「わ、わぁ。」
ぽかんと梨李が、口を開けたままツリーハウスを見上げた。かなり大きいから驚いたらしい。まぁ普通ツリーハウスと言えば、こじんまりしているものだしな。
俺たちはまず、外観を損ねないよう土台となる大木の耐震性を上げた補強工事をした。そこに構想していたツリーハウスを据える。全面ガラス張り。もちろん、しっかり防弾性。いざという時の避難経路として、分かりづらいが隣の大木までワイヤーが張られている。まぁ、この高さなら。梨李くらい抱えて余裕で飛び降りれるけどな。
「どうだ?」
「気に入りましたか?」
「中見てみる?」
「うん!気に入った!中見る!」
わくわくする!と笑顔で答える梨李を抱き上げ、階段を登る。ツリーハウスは大きな枝ごとに段違いの二階層で建てた。一階がカフェ、二階が俺たち四人の巣になる。
卒業した後、俺たちはすぐゲレンク-パラの準備を進めた。特例の一妻多夫。通常よりも手続きが多い。加えて梨李は十三年前から行方不明者扱いだったため、行政的な手続きが必要だった。まぁそこらへんは彪束家の鶴の一声で大分楽になったけど、それでも煩雑な事務手続きには辟易した。
ようやっと終わった頃、俺たちの誕生日が来て梨李にお祝いしてもらった。その場でプロポーズして、準備していたゲレンク-パラを済ませた。これで俺たちはパートナーとして認められた。
そうして、巣へ俺たちのパートナーを連れてきたのだ。
「すごい!かわいい!」
梨李がはしゃいで店内を歩き回る。壁一面の本。飴色のカウンター。コーヒーの匂い。飾られたカップやソーサー。マグ。適度に間隔が開けられたソファ席がフロアに点在している。
会員制にしたのは、質が悪い客を避けたいからだった。俺たちはただでさえ目立つ。三人いつも一緒にいると、あまり素行が良いとは言えない奴らが擦り寄ってくることが多い。くさってた時期は適当に相手していたが、今となっては煩わしいだけなのでこちらが選ぶ側の店にした。カフェをするのは決めていたが、会員制に踏み切ったのは今回の騒動で痛感したからだ。俺たちだけじゃない。梨李の容姿は人目を惹く。三人で護るのは当たり前だが、余計な虫は近づけたくない。
「りぃ、上も見てみるか?」
「うん!」
「二階は僕たちの巣です。」
「ぼくの部屋もあるの?」
「もちろん。でもいつも一緒だから、必要ないかもね。」
「?」
俺たちが梨李から離れるわけないだろう?ずっと一緒にいる。そうだな、最低でも三人のうち一人は必ず。だったら部屋なんて、あんまり使わないんじゃないか?
きょとんとした梨李を擁が抱き上げた。まろい頬を遵が撫でる。ふにゃんと笑った梨李を見て、これから毎日片時も離れずそばに、いられるのかと思うと堪らなく幸せに感じた。
大木を利用して、カフェはツリーハウスになっている。
「わ、わぁ。」
ぽかんと梨李が、口を開けたままツリーハウスを見上げた。かなり大きいから驚いたらしい。まぁ普通ツリーハウスと言えば、こじんまりしているものだしな。
俺たちはまず、外観を損ねないよう土台となる大木の耐震性を上げた補強工事をした。そこに構想していたツリーハウスを据える。全面ガラス張り。もちろん、しっかり防弾性。いざという時の避難経路として、分かりづらいが隣の大木までワイヤーが張られている。まぁ、この高さなら。梨李くらい抱えて余裕で飛び降りれるけどな。
「どうだ?」
「気に入りましたか?」
「中見てみる?」
「うん!気に入った!中見る!」
わくわくする!と笑顔で答える梨李を抱き上げ、階段を登る。ツリーハウスは大きな枝ごとに段違いの二階層で建てた。一階がカフェ、二階が俺たち四人の巣になる。
卒業した後、俺たちはすぐゲレンク-パラの準備を進めた。特例の一妻多夫。通常よりも手続きが多い。加えて梨李は十三年前から行方不明者扱いだったため、行政的な手続きが必要だった。まぁそこらへんは彪束家の鶴の一声で大分楽になったけど、それでも煩雑な事務手続きには辟易した。
ようやっと終わった頃、俺たちの誕生日が来て梨李にお祝いしてもらった。その場でプロポーズして、準備していたゲレンク-パラを済ませた。これで俺たちはパートナーとして認められた。
そうして、巣へ俺たちのパートナーを連れてきたのだ。
「すごい!かわいい!」
梨李がはしゃいで店内を歩き回る。壁一面の本。飴色のカウンター。コーヒーの匂い。飾られたカップやソーサー。マグ。適度に間隔が開けられたソファ席がフロアに点在している。
会員制にしたのは、質が悪い客を避けたいからだった。俺たちはただでさえ目立つ。三人いつも一緒にいると、あまり素行が良いとは言えない奴らが擦り寄ってくることが多い。くさってた時期は適当に相手していたが、今となっては煩わしいだけなのでこちらが選ぶ側の店にした。カフェをするのは決めていたが、会員制に踏み切ったのは今回の騒動で痛感したからだ。俺たちだけじゃない。梨李の容姿は人目を惹く。三人で護るのは当たり前だが、余計な虫は近づけたくない。
「りぃ、上も見てみるか?」
「うん!」
「二階は僕たちの巣です。」
「ぼくの部屋もあるの?」
「もちろん。でもいつも一緒だから、必要ないかもね。」
「?」
俺たちが梨李から離れるわけないだろう?ずっと一緒にいる。そうだな、最低でも三人のうち一人は必ず。だったら部屋なんて、あんまり使わないんじゃないか?
きょとんとした梨李を擁が抱き上げた。まろい頬を遵が撫でる。ふにゃんと笑った梨李を見て、これから毎日片時も離れずそばに、いられるのかと思うと堪らなく幸せに感じた。
0
お気に入りに追加
122
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる