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【外伝】貴方にとっては誤算でも俺たちにとっては正に僥倖

trettionio

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「やぁ、初めまして。」

 鷹揚に笑う彪束家リーダー、彪束 氷午。銀色の髪、若葉色の瞳。珍し過ぎる色。梨李の髪は後天的なものだが、この人は産まれつきだと言う。目立って仕方のない色だ。

 後ろに立つバトラー。かなりの手練だ。ジュードのおっさんといい勝負。これなら梨李がここにいる間、確かに安全だ。でも理屈じゃなく、番は自分たちで護りたい。

「深沢 濫です。」
「深沢 擁です。」
「深沢 遵です。」

 三人揃って会釈する。同席した父さんと篤臣もいる応接室。梨李に会う前にこの席は設けられた。

「さて。今回のことなんだけれど。」
 にこっと笑ったあと、冷気を感じる威圧が漏れ出てきた。

「私は、そうだね。というやつかな。今後二度とそんな気が起きないよう、今いるゲヘリングを殲滅したいと考えているんだ。」
「「「……。」」」
「もちろん、狂った志を継いで後に続くような不届な輩も含めてね。根絶やしにしてやりたい。」
「同感ですね。」
「そうかい?話が早くて助かるよ。じゃあ君たちも協力してくれるかな?」
「どういう役割をお求めですか?」
「そうだねぇ、有体に言えば餌になってもらいたい。」
「……デコイ、ですか。」
「そういうこと。君たちの能力、共感だけれど。奴らにとっては喉から手が出るほど欲しいものだよね?しかも三人もいる。」

 三人揃って頷く。出来ればカルロッソ・アルツベルンはこの手で殺したい。

「では。そういうことだから。篤臣、あとは頼んだよ。」
「……はぁ、分かりました。」

 丸投げされて、げんなりした篤臣を見る。この調子でいつも、ぺいっと押し付けられているのだろう。

「お前ら、無茶するんじゃねえぞ。」
「分かってる。」
「出来る範囲でやります。」
「任せて。」
 父さんが不服そうに腕を組んで睨んでくる。デコイはもちろん、関わらせたくないんだろう。でも、番に手を出された。その落とし前を自分たちでつけたいと思ってる俺たちの気持ちは分かるらしく、それ以上は口を出さなかった。

 そうして俺たちは、愛しい番との面会へ、いそいそと向かったのだった。
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