【完結】R-18 逃がさないから覚悟して

【外伝】貴方にとっては誤算でも俺たちにとっては正に僥倖

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　《共感能力保有者の番に現れる症例について》

　共感で繋がる個体同士が番に選ぶのは同一人物である。

　選ばれた番は通常より愛情や性衝動を過分に受ける傾向にある。

　共感能力保有者と番に年齢差があり尚且つ番が先に生を受けていた場合。後に産まれた共感能力保有者に対し、番は年齢に関わらずフェロモンを過剰に放出する傾向にあることが確認されている。これは本能で互いの存在を早期に認識させる為と見られている。

　この過剰なフェロモン放出は、相手が共感能力保有者に限り起こるとされ、症例が少なく番側の病気であると誤認されやすい。結果正確な診断を受け適切な処置を施されるのは稀である。

　番が性被害に遭うケースも多く、対策としてはフェロモン放出のコントロールなどが上げられる。しかし正確なデータなどは現在確認されていない。





　《フェロモンを過剰に放出することにより、誤った診断を下された番に対し行われた実験記録の概要》

　共感能力保有者の番に見られる傾向と認識されることが稀なフェロモンの過剰放出。当時研究者たちの間では、フェロモン過多症と誤認され、コントロールと言う中長期的で不確かな対処法は敬遠された。

　この時、研究者たちが確実な方法の一つとして提唱したものが染色体の変異実験である。後に非人道的な研究として、これらの行為は世界各国で禁忌指定されることとなった。今日において、これらの実験を行った場合、関係者は全員居住国において最も重い刑が課せられると国際法で定められている。

　○染色体の変異を促すことにより、番に起きた弊害○

　処置された番は、染色体の変異により髪や瞳の色が変わり身体も変化する。

　◎男性体の場合
　……乳房が膨らみ、陰茎が収縮。肥大したクリトリスのようになる。処置された時期によっては精通を迎えない。
　◎女性体の場合
　……乳房が萎み、脂肪が減少。身体全体の丸みが無くなる。処置された時期によっては生理を迎えない。


　
　これらの処置を受けたことによる、一番の弊害は、フェロモンが抑制され匂いが無くなることにある。

　番同士が、お互いの存在を認識するにあたり、もっとも確実なツールであると言える匂いが無くなることにより、双方番同士と認識することが困難となる。種によっては存在有無の認識も不可。

　こういったケースの場合、番同士であるにも関わらず、不快感や嫌悪感などをお互い持つ傾向にあると言われている。これは本来の染色体を人工的に無理矢理変異させられた結果、種の本能で唯一の存在を不当に扱われたことに対する生理的な忌避からくるものだと類推される。





ー記録・保管責任者　ネアリチュア主席調査官　ミハイル・ウェガンー