192 / 238
【外伝】貴方にとっては誤算でも俺たちにとっては正に僥倖
sexton
しおりを挟む
なんなんだろう、これ。
一年生のグラスから始まったカウンセリングは、あまり順調とは言えなかった。指示された項目に沿って質問し、相手に答えてもらう。それ自体は別段難しくない。ただ、他に何か悩みはないか、困ったことはないか。そう言ったことをうまく聞き出せと言われている。特に思春期特有の性的な悩み。不当なハラスメントを受けたことはないか?逆に恋人との関係性で悩んでいないか?世間話程度に話を振る。しかし元々人とのコミュニケーションを率先して取るタイプではない為、危惧していた通り、カウンセリングは形だけで終わっていた。
これ、やる意味あるの?
よく分からない。それに自分はフェイだからかグラス相手の生徒から心理的隔たりを感じてしまう。別に仲良しこよし、しましょうねと言う気はない。だが、警戒されているのは単純に面白くない。
別に獲って食ったりしないのに。
反して、少数ではあるが最近フェイの生徒たちが保健室へ頻繁に顔を出すようになっていた。まだカウンセリングをしていないので、関わる機会はないと言うのに何故だか分からない。
しかも生活能力の低いカウンセラーを見かねたのか、お弁当やらジュースやらを差し入れに持ってくる。中には散らかってしまった保健室の片付けまでしてくれるフェイまでいた。気味が悪い。
「淼矢さん、こんにちは。」
顔を上げると、扉から顔を出して覗いているのは少し前から来るようになった二年生だった。本人曰く、生徒会の副会長をしているらしい。汚れた眼鏡の位置を確かめる。前髪もいつも通り目元を覆っていた。こんなに冴えない見た目をしていると言うのに、なんなんだろう。
ブサ専とか?
勿体無い、整った顔立ちをしているのに。進学校で副会長。しかも来月からは生徒会長に就任すると言う。所謂勝ち組だろうに、趣味が悪いとは。
むずむずして首筋をペンで、かりかりと掻く。
「どうしましたか?」
「あの、実は間違って買ってしまって。良ければ一緒にどうかと。」
そう言いながら保健室に入り、目の前にジュースを二本差し出す。
なるほど。そう来たか。
「ありがとうございます。ですが、いつも貰ってばかりで。」
「気にしないで下さい。」
気にするよ、一応こちとら職員扱いなんだから。いつもいつも生徒から貢ぎ物貰ってたら周りの印象悪くなるし。
困ったなぁと俯いていると、がやがやと廊下が騒がしくなった。続いて扉が開く。
「淼矢さーん。怪我したから診てー。」
「ぼく、カウンセラーだから。治療出来ないよ。」
「保健室にいるじゃん。」
「それはここを与えられたってだけで。」
「えー。」
「養護教諭の先生いる方の保健室に行って。」
「冷たーい!」
ブーブー騒ぐ生徒に困っていると、目の前に副会長が立ちはだかった。
「おい、困らせるな。」
「あぁ?関係ないだろ?」
「あるに決まってるだろ。」
「お前副会長だかなんだか知らねーけど調子こいてんなよ?」
「なんだと?」
「深沢の犬が!」
グルグルと喉が鳴り出し威圧が膨れ上がる。
なんなんだよもう!勘弁してよ!
頭を抱えて俯く。威圧の張り合いは衆目を集め、駆けつけた教師に自分まで注意された。
一年生のグラスから始まったカウンセリングは、あまり順調とは言えなかった。指示された項目に沿って質問し、相手に答えてもらう。それ自体は別段難しくない。ただ、他に何か悩みはないか、困ったことはないか。そう言ったことをうまく聞き出せと言われている。特に思春期特有の性的な悩み。不当なハラスメントを受けたことはないか?逆に恋人との関係性で悩んでいないか?世間話程度に話を振る。しかし元々人とのコミュニケーションを率先して取るタイプではない為、危惧していた通り、カウンセリングは形だけで終わっていた。
これ、やる意味あるの?
よく分からない。それに自分はフェイだからかグラス相手の生徒から心理的隔たりを感じてしまう。別に仲良しこよし、しましょうねと言う気はない。だが、警戒されているのは単純に面白くない。
別に獲って食ったりしないのに。
反して、少数ではあるが最近フェイの生徒たちが保健室へ頻繁に顔を出すようになっていた。まだカウンセリングをしていないので、関わる機会はないと言うのに何故だか分からない。
しかも生活能力の低いカウンセラーを見かねたのか、お弁当やらジュースやらを差し入れに持ってくる。中には散らかってしまった保健室の片付けまでしてくれるフェイまでいた。気味が悪い。
「淼矢さん、こんにちは。」
顔を上げると、扉から顔を出して覗いているのは少し前から来るようになった二年生だった。本人曰く、生徒会の副会長をしているらしい。汚れた眼鏡の位置を確かめる。前髪もいつも通り目元を覆っていた。こんなに冴えない見た目をしていると言うのに、なんなんだろう。
ブサ専とか?
勿体無い、整った顔立ちをしているのに。進学校で副会長。しかも来月からは生徒会長に就任すると言う。所謂勝ち組だろうに、趣味が悪いとは。
むずむずして首筋をペンで、かりかりと掻く。
「どうしましたか?」
「あの、実は間違って買ってしまって。良ければ一緒にどうかと。」
そう言いながら保健室に入り、目の前にジュースを二本差し出す。
なるほど。そう来たか。
「ありがとうございます。ですが、いつも貰ってばかりで。」
「気にしないで下さい。」
気にするよ、一応こちとら職員扱いなんだから。いつもいつも生徒から貢ぎ物貰ってたら周りの印象悪くなるし。
困ったなぁと俯いていると、がやがやと廊下が騒がしくなった。続いて扉が開く。
「淼矢さーん。怪我したから診てー。」
「ぼく、カウンセラーだから。治療出来ないよ。」
「保健室にいるじゃん。」
「それはここを与えられたってだけで。」
「えー。」
「養護教諭の先生いる方の保健室に行って。」
「冷たーい!」
ブーブー騒ぐ生徒に困っていると、目の前に副会長が立ちはだかった。
「おい、困らせるな。」
「あぁ?関係ないだろ?」
「あるに決まってるだろ。」
「お前副会長だかなんだか知らねーけど調子こいてんなよ?」
「なんだと?」
「深沢の犬が!」
グルグルと喉が鳴り出し威圧が膨れ上がる。
なんなんだよもう!勘弁してよ!
頭を抱えて俯く。威圧の張り合いは衆目を集め、駆けつけた教師に自分まで注意された。
0
お気に入りに追加
110
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる