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【外伝】貴方にとっては誤算でも俺たちにとっては正に僥倖
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クシュダートから帰ると、父さんからリビングのソファに全員座れと言われた俺たちは無言で座った。
ぴりぴりとした気配に三人で(バレたか。)と身構える。
「お前ら。なんか言うことはあるか。」
「あーっと。」
「その。」
「……。」
もごもごと口籠る。やばい、思ったよりも怒らせた。
「言い訳しねぇのは褒めてやる。さっさとなんでやったんか吐け。」
我が親ながら、チンピラみたいだなと思うが口が悪いだけで基本父さんは過保護だ。心配しているのは分かる。
「ちょっと試してみたくなったんだよ。年に一回の検診で俺たちのこと何処まで把握出来るもんなのか。」
「自覚している能力と検査で分かる客観的な数値との乖離はどれほどかと思って。」
「……分からないなら、検診受けなくても良いかなって。」
要するに、それくらいのことに気付かないようなら別に検査は必要ないんじゃないかと思った。
そういう意味のことを告げると父さんが唸った。
「まぁ分からんでもないが。試すようなことすんな。あいつらも暇じゃねぇんだ。」
「悪かったよ。」
「すみませんでした。」
「……ごめん。」
素直に謝ると、父さんが首裏を撫でる。落ち着かない様子が気になった。
「なんかあったわけ?」
「ん?ああ。フィンレーからゲヘリングが動き出したって言われてな。天蒼もターゲットに入ってるから気をつけろってよ。」
「具体的には、どう言う動きなんですか?」
「なんか自国のクシュダートやラ-ガレンに客員教諭として赴任してるらしい。天蒼にはゲヘリングがいねぇから、ヴェルュクから派遣されるだろうってよ。それっぽい奴来てねぇか?」
「……それっぽい。」
(〈もしかして、あの芋臭いカウンセラーが?〉)
([どうでしょう。ヴェルュクからなら医師ではなく所員ですよね?そんな風には見えなかったような。])
(〔……名前も天蒼のだったし。〕)
時期的にはドンピシャ当たりだが、どうにもこうにも、あのカウンセラーが人体実験も厭わないような人物には見えない。
「カウンセラーなら赴任してきたけどな。」
「ぼんやりした印象の人物でした。」
「……無害そう。」
「カウンセラーか……。微妙なとこだな。」
父さんが腕を組んで首を捻る。
「名前は?」
「淼矢 梨李。」
「和名か。まぁそっちは偽名でなんとでもなるしな。男か?女か?」
「会ってないけど、多分男。」
「印象では男です。」
「……痩せてて、無愛想な……男かな。」
「髪と瞳は?」
「髪は茶色。」
「瞳は前髪と眼鏡で見えませんでした。」
「……眼鏡汚れてたし。」
いっちょ身元を洗うか、と父さんが言う。
「念の為、近づくな。」
「そうしたいけど、担任から全員カウンセリングを受けろって言われててさ。」
「必須だからサボるなと注意を受けています。」
「……嫌だけど。」
三人で、ぶちぶち言うと父さんが頷いて話をまとめた。
「一~二回カウンセリング受けたところでバレねぇだろ。それ以外では関わるな。少なくとも身元洗い終わるまでは。分かったな?」
「ああ。」
「はい。」
「うん。」
三人で頷いて、この話は終わった。確かに不穏だとは思うが、やっぱりあのモサいカウンセラーが危険人物とは思えない。まぁ、見てていらいらするから言われなくても率先して関わる気はなかった。
晩御飯だよ。と、ひいばあちゃんが顔を覗かせ声を掛ける。四人で立ち上がってダイニングへと向かった。
ぴりぴりとした気配に三人で(バレたか。)と身構える。
「お前ら。なんか言うことはあるか。」
「あーっと。」
「その。」
「……。」
もごもごと口籠る。やばい、思ったよりも怒らせた。
「言い訳しねぇのは褒めてやる。さっさとなんでやったんか吐け。」
我が親ながら、チンピラみたいだなと思うが口が悪いだけで基本父さんは過保護だ。心配しているのは分かる。
「ちょっと試してみたくなったんだよ。年に一回の検診で俺たちのこと何処まで把握出来るもんなのか。」
「自覚している能力と検査で分かる客観的な数値との乖離はどれほどかと思って。」
「……分からないなら、検診受けなくても良いかなって。」
要するに、それくらいのことに気付かないようなら別に検査は必要ないんじゃないかと思った。
そういう意味のことを告げると父さんが唸った。
「まぁ分からんでもないが。試すようなことすんな。あいつらも暇じゃねぇんだ。」
「悪かったよ。」
「すみませんでした。」
「……ごめん。」
素直に謝ると、父さんが首裏を撫でる。落ち着かない様子が気になった。
「なんかあったわけ?」
「ん?ああ。フィンレーからゲヘリングが動き出したって言われてな。天蒼もターゲットに入ってるから気をつけろってよ。」
「具体的には、どう言う動きなんですか?」
「なんか自国のクシュダートやラ-ガレンに客員教諭として赴任してるらしい。天蒼にはゲヘリングがいねぇから、ヴェルュクから派遣されるだろうってよ。それっぽい奴来てねぇか?」
「……それっぽい。」
(〈もしかして、あの芋臭いカウンセラーが?〉)
([どうでしょう。ヴェルュクからなら医師ではなく所員ですよね?そんな風には見えなかったような。])
(〔……名前も天蒼のだったし。〕)
時期的にはドンピシャ当たりだが、どうにもこうにも、あのカウンセラーが人体実験も厭わないような人物には見えない。
「カウンセラーなら赴任してきたけどな。」
「ぼんやりした印象の人物でした。」
「……無害そう。」
「カウンセラーか……。微妙なとこだな。」
父さんが腕を組んで首を捻る。
「名前は?」
「淼矢 梨李。」
「和名か。まぁそっちは偽名でなんとでもなるしな。男か?女か?」
「会ってないけど、多分男。」
「印象では男です。」
「……痩せてて、無愛想な……男かな。」
「髪と瞳は?」
「髪は茶色。」
「瞳は前髪と眼鏡で見えませんでした。」
「……眼鏡汚れてたし。」
いっちょ身元を洗うか、と父さんが言う。
「念の為、近づくな。」
「そうしたいけど、担任から全員カウンセリングを受けろって言われててさ。」
「必須だからサボるなと注意を受けています。」
「……嫌だけど。」
三人で、ぶちぶち言うと父さんが頷いて話をまとめた。
「一~二回カウンセリング受けたところでバレねぇだろ。それ以外では関わるな。少なくとも身元洗い終わるまでは。分かったな?」
「ああ。」
「はい。」
「うん。」
三人で頷いて、この話は終わった。確かに不穏だとは思うが、やっぱりあのモサいカウンセラーが危険人物とは思えない。まぁ、見てていらいらするから言われなくても率先して関わる気はなかった。
晩御飯だよ。と、ひいばあちゃんが顔を覗かせ声を掛ける。四人で立ち上がってダイニングへと向かった。
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