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【番外編2】imprägnieren?Auserwählte
自称被害者友の会《side 茉莉》
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それは珍しくCarmの客足が途絶えた午後三時頃。茉莉のバイトが後一時間で終わると言うところで、予想もしなかった人物が訪ねてきた。
「茉莉ちゃん!」
友人の一人だったが、今はそこまで親しくしていない。だから急にバイト先まで突撃される理由が思い浮かばず、名前を呼ばれてきょとんとした。続いた台詞に今度はぎょっとする。
「ねぇ!協力して!あの寝取り女に復讐したいの!」
「へ?」
「あの女よ!上城 萌香!とうとう私のメイニーまで寝取ったのよ!酷いと思わない?!」
確か目の前で吠えている彼女は茉莉が浮気されたと話した時、こう言わなかっただろうか?「茉莉ちゃんにも悪いところが、あったんじゃないの?」と。その一言で、彼女とは疎遠になった。どんな理由であれ、浮気する方が悪いと茉莉は思う。確かにセックスを避け続けた茉莉も悪いが、したがるばかりで話し合おうともしなかった向こうも悪いと思う。なにより浮気する前にちゃんと話し合えばいいし、それが無理なら別れれば良かったのだ。それから新しい恋人を作るのが茉莉にとってはルールだった。だからその時彼女が茉莉にかけた言葉は、とてもじゃないが受け入れ難かった。
「……浮気される方にも、悪いところがあったんじゃない?」
言われたこと、そのままを返すと理不尽にも睨みつけられた。その上キイキイ喚かれる。
「ひどい!なんでそんなこと言うの!」
「いや、ひどいって言われても。」
「私たち、同じ被害者なのに!私の気持ち分かるでしょ?!」
いつ発足したのよ、自称被害者友の会。
半眼と無言で返すと、プウッと頬を膨らませる。少しも可愛くない。
「私のメイニーと茉莉ちゃんの元メイニー。他にも人のメイニー寝取りまくって侍らせてんのよ?悔しくないの?」
「うーん。どうでもいい。」
「……は?どうでもいい?」
「そ。浮気するような奴、どうでもいい。だから、浮気相手もどうでもいい。」
「は?え?」
「だから、やるなら自分で勝手にどうぞ。お帰りはあちらです。」
ドアを指さすと、地団駄を踏み出した。他にお客様がいなくて良かったとため息を付いていると、後ろから声がした。
「どした、枝反。」
見られたくなかったと思いながら振り向くと、とんでもない速さで元友人が狗狼に駆け寄った。
「あの!初めまして!私、茉莉ちゃんの親友で。」
「違います。単なる知り合いです。全然親しくありません。」
被せるように茉莉が割り込むと、グリンと首が周り睨み付けられた。お前はチャッキーか!
「お客様でもないので、お帰り頂くよう案内していたところです。」
「そうか。」
「いいえ!オーダーします!カシオレ一つ!」
居酒屋か。
「……深沢さん、パートナーいるから。お子さんも三人いるから。しかもお相手、番だから。無量大数に一つもないから。」
茉莉が告げると分かりやすく元友人の首が落ちた。
「いい男は、皆相手がいるのね……。」
それはどうだろう。相手がいても浮気する男だっているわけだし一概に言えないのでは?それだと極端な話、浮気した男全員いい男になってしまう。と言うか今現在メイニーを寝取られたと騒いでいるのなら、まだ別れていないのでは?え?怖い!高速で棚上げして棚卸ししたよ!その道のプロか?!
「もういいわ、帰る。」
しょんぼりと肩を落とし、元友人がドアに向かって歩き出す。なんとも言えず見送っていると再びドアが開いた。入ってきた三人に目を剥く。
寝取り女こと上城 萌香とwith Bこと茉莉の元メイニーで浮気ヤロー&元友人のメイニーだった。元友人がビタッと立ち止まる。
「茉莉!」
満面の笑顔で声を掛けてきた能天気な元メイニーに、すんっと表情が抜け落ちた。
頼むから、帰って欲しい。
心からそう願った。だってもうすぐジュードが迎えに来るのだ。
今日は彪束家にフィンレーともども呼ばれているとかで、茉莉をCarmに送り届けたジュードは「必ず迎えに来ますから。一人で帰らず待ってて下さいね?」と言って出て行った。と言うことはもうすぐ来る頃だろう。
「あのー。もし良かったらぁ。お話ししませんかぁ?」
間延びした話し方。くねくねと身体を捩る仕草。緩くウェーブした毛先を人差し指に巻き付けながら、プックリした唇をわざと突き出すこの感じ。どれもこれも胡散臭いあざとさ。なんでこんな女を真似て桜庭さんと貴宮さんに突撃したんだろ、あの頃の私。病んでたとしか思えない。
ところでこれ、誰に話しかけてんの?
「ねぇってばー。茉莉ちゃーん。」
は?私?いつから名前にちゃん付けされるくらい親しくなったっけ?
「茉莉、一緒に座ろ?その、話したいこともあるしさ。」
ぬけぬけと元メイニーが口を挟む。
「私たちぃ。みんなで仲良くしたいなぁって思っててぇ。だからぁ、誰かのメイニーとかぁ?そういうのメンドーじゃないかなぁって?だからぁ。みーんなのメイニーならぁ。ケンカしなくていいでしょー?」
え?何言ってるか一文節も分からない。
「……コロすコロすコロすコロす。」
やめてよ!隣で闇堕ちするの!背後に渦巻き見えてんだけど!その周りをなんかこう、エロイムエッサイム的な禍々しいなにかが!
そこで、はっとして振り返る。既に狗郎はおらず、萌香に見つからなかったことを密かに安堵した。
「茉莉ちゃん!」
友人の一人だったが、今はそこまで親しくしていない。だから急にバイト先まで突撃される理由が思い浮かばず、名前を呼ばれてきょとんとした。続いた台詞に今度はぎょっとする。
「ねぇ!協力して!あの寝取り女に復讐したいの!」
「へ?」
「あの女よ!上城 萌香!とうとう私のメイニーまで寝取ったのよ!酷いと思わない?!」
確か目の前で吠えている彼女は茉莉が浮気されたと話した時、こう言わなかっただろうか?「茉莉ちゃんにも悪いところが、あったんじゃないの?」と。その一言で、彼女とは疎遠になった。どんな理由であれ、浮気する方が悪いと茉莉は思う。確かにセックスを避け続けた茉莉も悪いが、したがるばかりで話し合おうともしなかった向こうも悪いと思う。なにより浮気する前にちゃんと話し合えばいいし、それが無理なら別れれば良かったのだ。それから新しい恋人を作るのが茉莉にとってはルールだった。だからその時彼女が茉莉にかけた言葉は、とてもじゃないが受け入れ難かった。
「……浮気される方にも、悪いところがあったんじゃない?」
言われたこと、そのままを返すと理不尽にも睨みつけられた。その上キイキイ喚かれる。
「ひどい!なんでそんなこと言うの!」
「いや、ひどいって言われても。」
「私たち、同じ被害者なのに!私の気持ち分かるでしょ?!」
いつ発足したのよ、自称被害者友の会。
半眼と無言で返すと、プウッと頬を膨らませる。少しも可愛くない。
「私のメイニーと茉莉ちゃんの元メイニー。他にも人のメイニー寝取りまくって侍らせてんのよ?悔しくないの?」
「うーん。どうでもいい。」
「……は?どうでもいい?」
「そ。浮気するような奴、どうでもいい。だから、浮気相手もどうでもいい。」
「は?え?」
「だから、やるなら自分で勝手にどうぞ。お帰りはあちらです。」
ドアを指さすと、地団駄を踏み出した。他にお客様がいなくて良かったとため息を付いていると、後ろから声がした。
「どした、枝反。」
見られたくなかったと思いながら振り向くと、とんでもない速さで元友人が狗狼に駆け寄った。
「あの!初めまして!私、茉莉ちゃんの親友で。」
「違います。単なる知り合いです。全然親しくありません。」
被せるように茉莉が割り込むと、グリンと首が周り睨み付けられた。お前はチャッキーか!
「お客様でもないので、お帰り頂くよう案内していたところです。」
「そうか。」
「いいえ!オーダーします!カシオレ一つ!」
居酒屋か。
「……深沢さん、パートナーいるから。お子さんも三人いるから。しかもお相手、番だから。無量大数に一つもないから。」
茉莉が告げると分かりやすく元友人の首が落ちた。
「いい男は、皆相手がいるのね……。」
それはどうだろう。相手がいても浮気する男だっているわけだし一概に言えないのでは?それだと極端な話、浮気した男全員いい男になってしまう。と言うか今現在メイニーを寝取られたと騒いでいるのなら、まだ別れていないのでは?え?怖い!高速で棚上げして棚卸ししたよ!その道のプロか?!
「もういいわ、帰る。」
しょんぼりと肩を落とし、元友人がドアに向かって歩き出す。なんとも言えず見送っていると再びドアが開いた。入ってきた三人に目を剥く。
寝取り女こと上城 萌香とwith Bこと茉莉の元メイニーで浮気ヤロー&元友人のメイニーだった。元友人がビタッと立ち止まる。
「茉莉!」
満面の笑顔で声を掛けてきた能天気な元メイニーに、すんっと表情が抜け落ちた。
頼むから、帰って欲しい。
心からそう願った。だってもうすぐジュードが迎えに来るのだ。
今日は彪束家にフィンレーともども呼ばれているとかで、茉莉をCarmに送り届けたジュードは「必ず迎えに来ますから。一人で帰らず待ってて下さいね?」と言って出て行った。と言うことはもうすぐ来る頃だろう。
「あのー。もし良かったらぁ。お話ししませんかぁ?」
間延びした話し方。くねくねと身体を捩る仕草。緩くウェーブした毛先を人差し指に巻き付けながら、プックリした唇をわざと突き出すこの感じ。どれもこれも胡散臭いあざとさ。なんでこんな女を真似て桜庭さんと貴宮さんに突撃したんだろ、あの頃の私。病んでたとしか思えない。
ところでこれ、誰に話しかけてんの?
「ねぇってばー。茉莉ちゃーん。」
は?私?いつから名前にちゃん付けされるくらい親しくなったっけ?
「茉莉、一緒に座ろ?その、話したいこともあるしさ。」
ぬけぬけと元メイニーが口を挟む。
「私たちぃ。みんなで仲良くしたいなぁって思っててぇ。だからぁ、誰かのメイニーとかぁ?そういうのメンドーじゃないかなぁって?だからぁ。みーんなのメイニーならぁ。ケンカしなくていいでしょー?」
え?何言ってるか一文節も分からない。
「……コロすコロすコロすコロす。」
やめてよ!隣で闇堕ちするの!背後に渦巻き見えてんだけど!その周りをなんかこう、エロイムエッサイム的な禍々しいなにかが!
そこで、はっとして振り返る。既に狗郎はおらず、萌香に見つからなかったことを密かに安堵した。
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