【完結】R-18 逃がさないから覚悟して

Hauptteil Akt 14

hundertzweiunddreißig

　すり鉢状になった巨大ホール。顧客毎に部屋が割り振られ、中央のステージを半円状にグルリと囲むオークション会場は、まるで歌劇場の観覧席のようだった。

『まさに、権力者たちが揃い踏みだな。』

　ステージに向けて同じ方向を向いた窓には特殊ガラスがはめられており、中からは問題なく見えるが向こうからは何も見えないようになっている。司会オークショニアが声を上げ、参加するものは部屋からボタンで金額を提示する。特殊なガラスにその金額が表示され、オークショニアが最高額を叩き出した顧客を名指しするのだ。その際に呼ばれる名は割り振られた部屋の名前だった。

『見事に顧客同士が分からないよう徹底されている。』
『くだんねぇことに全力投球だな。』
『珍しく君と意見が合いそうだ。』
『嬉しくもねぇ。』

　つけつけとフィンレーに返す狗狼を見て、アシェル家のバトラーが冷や汗を拭う。その隣には、依然一言も喋らないヤン・ユェルンが座っていた。

　女が不審な動きをしないか、ジュードは片時も目を離さない。

　やがて、ステージに藍里が立たされた。

『さて、次はこちらの女性を。タイプはグラス。種は馬。アハルテケの純血種です。年齢は18歳。出身は天蒼。特筆すべきはこの美しい足！そして……未だ性の喜びを知らぬ無垢な乙女！珍しくも処女でございます！では！』

　藍里を前に押し出すと、男は両手を天に掲げた。煽るように両腕を振り、芝居掛かった身振り手振りで金額を釣り上げていく。

『ツィンクの間！1億 ₰金マルク！』

　とうとう1億を超えた。藍里の容姿は可憐で楚々としており中々人気があるらしい。

『さて、そろそろかな。』

　フィンレーがちらりとアシェル家のバトラーを見る。ゴクリと唾を飲んだ男に微笑んだ。

『必ず競り落としてくれ。』
『は、はい。』

　手元のボタンを操作し、金額を表示する。

『ゴルトの間！2億 ₰金マルク！』

　いきなり倍を付けたフィンレーたちに、オークショニアの声が上擦る。ステージ上で藍里の身体が強張った。

『他にいらっしゃいませんか？よろしいですか？……ではゴルトの間！2億 ₰金マルクで落札です！おめでとうございます！』

　高らかにオークショニアが宣言する。そのままオークションは無事終了し、閉会となった。