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Hauptteil Akt 14

hunderteinunddreißig

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 合流地点近くのホテルで身体を休め、念入りに準備を整える。
 今回のオークションから客は厳選され、乗船出来るものは厳しい基準をクリアしたものに限られていた。ヘンディル側から招待されていないものは過去取引があっても参加出来ないようになっている。つまり、全て上客。付き合いが長く、金払いがいい。そしてヘンディル側からは信頼の証として、バトラーに限り銃などの持ち込みが許されている。

『別に銃以外でもいいんだよな?』
 狗狼がジュードに確認すると、頷いて装備を広げた。

『銃の次に特殊警棒もよく見られます。異なる武器であれば併用持ち込みは可能です。』
『ふぅん。これは?』
『これはブレスレットタイプのステンカーボネートワイヤーです。ここを引っ張って引き出すと。』
 説明しながら、引き出す。殆ど音がせず、極細のワイヤーが現れた。

『音を立てず落としたい時に、向いていますね。』
『ほー。いいな。』

 背後から忍び寄り、頸部に巻き付けて落とす。静かに動く時に重宝しそうだと狗狼は喜んだ。

『三つとも、持っていけるんだよな?』
『異なる武器、ですので。』

 今回、客はアシェル家のバトラーとその紹介で特別枠として参加が許されたフィンレー。
 アシェル家のバトラーにジュード。フィンレーに篤臣と狗狼が付くことになった。

『しかし、よく考えたな。あの女を使うとはよ。』
 武器を弄りながら、狗狼がフィンレーに投げかける。スイートルームのリビングで寛いでいたフィンレーが楽しそうに笑った。

『ヘンディルの首魁、シュウ・リーウェンはヤン・ユェルンを気に入っているからね。』
『それで餌にしたと。』
 篤臣が受けると、機嫌良くフィンレーが頷いた。

『ああ。ツェアシュテールから逃げ出し、アシェル家に逃げ込んだと情報を流した。その後アシェル家のバトラーから匿っているから今度のオークションに連れて行くと連絡させたんだよ。代わりと言ってはなんだが特別枠で友人を帯同させてくれないかと交渉させたんだ。ヘンディルは私と知って、二つ返事だったそうだよ。』
『まさか、ツェアシュテールのトップ様とは思わねぇよな。未来の上客だってんで小躍りしたんじゃねえか?』
 小馬鹿にした狗狼にフィンレーが微笑む。

『そのまま、踊ってもらうつもりだよ。死ぬまでね。』
『おーこわ。』
 肩を竦めた狗狼を見ていた篤臣が、眼光鋭くフィンレーに視線を向けた。

『……フィンレー、シュウ・リーウェンの容姿は?』
 こいつだけは、俺が仕留める。

『赤茶色に金と黒が数束ずつ混じった髪。白に近い灰色の瞳。細身。』
『変わった色だな。』
『ヤン・ユェルン曰く、自分と同じ混合種だと。』
『混合種?』
 聞いたこともない単語に篤臣が問い返す。

『どうやら造語だね。多種多様なフェイが混ざって種別不詳という意味らしい。』
『……。』
『恐らく、想像したくもないような状況を繰り返して世代を繋ぎ生まれたのがシュウ・リーウェンなんだろう。ヤン・ユェルンを気に入ったのは同族意識があるのかも知れないな。』

 人身売買組織。繰り返される性の搾取。結果運悪く生まれてきたものは。

 それは俺が考えることじゃない。

 篤臣は思考を切り替えると、狗狼と同じく武器を確認し与えられた部屋に入った。
 明日いよいよ協力者と合流し夜、乗船する。アシェル家のバトラーとヤン・ユェルンは表向き招待客でパートナー同士として乗船するのだ。そこにバトラーとしてジュードが付く。実際は護衛ではなく二人の監視として。

 ヤン・ユェルンは既に廃人だ。歩けはするが話は出来ない。息をするだけの人形と化している。目は洞のようで、感情が一切ない。異常に気付かれないようレース編みのベールが付いた帽子とそれに合わせたドレスを用意している。

 明日、あの女の顔を見て平静を保てるだろうか。

 篤臣はベッドに横たわると深く息を吸い、吐いた。

 最優先事項を誤るな。ウルを助け出す。何があっても。前回のような下手は打たない。もう、後がない。

 やがて深い眠りに落ちた篤臣は、そのまま翌日の朝まで起きることはなかった。
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