134 / 238
Hauptteil Akt 12
hundertachtzehn
しおりを挟む
あの恐ろしい爆破シーンを見せられたあと。ウルと新のすぐ前に座っていた男が振り返り、新の腕を乱暴に掴んだ。ニヤニヤと下卑た笑いを浮かべながら『さぁて、じゃあ楽しませてもらおうかなぁ。』と歌うように話しかけてくる。
ぞっとして腕を振り払おうとしたが、強くて敵わなかった。ウルもしがみついて何とか外そうとはしてくれたけれど、びくともしない。
『おい、やめとけ。』
『ああ?何でだよ?上納前は構わねえだろ?』
『いつもはな。』
『今回は別だ。ユェルン様と、二人も捕まったんだぞ。』
『監視に回した奴が戻ったらすぐ船に行こう。』
『そうだな、報告しねぇと。』
『絶対機嫌が悪くなるよな。』
『狩りは上手くいったのによ。』
『アゲンツも吹き飛ばしたしな。』
『だからって呑気に遊んでたなんて知られたら。』
『間違いなく殺されるな。』
『……そうか。そうだな。』
忌々しそうに男が手を離す。
『間が悪いよなぁ。』
『なぁ。』
『せっかくの上物なのによ。』
『こっちはガキだしなぁ。』
『見た目は同じく上物だけどなぁ。』
『ガキには勃たねぇわ。』
『ついでに連れてきたから上納はするけど。売れるかなコイツ。』
『たまにいるじゃん、ペドフェリア。』
『だな。』
新は共通言語を理解出来るが、ウルは理解出来ないようだった。青ざめた顔で、きょろきょろと視線を彷徨わせているが腑に落ちない顔をしている。
良かった。意味が分かったらますます怯えるだろうから。
さっき偶然知ってしまったウルの秘密。幅広の垂れ耳。恐らくロップイヤー。兎。そして狼の狗狼とは従兄弟。つまり。
タイプがミックスの兎。とんでもない希少種だ。知られればオークションの目玉どころではない。どんな目に遭うか想像もつかない。
絶対知られないようにしなければ。ウルの手を握ると、ぎゅっと握り返された。見上げてくる瑠璃色の瞳。その中に怯えは見当たらない。
信じてるんだ。貴宮くんも狗狼くんも無事で、必ず助けに来るって。だったら、せめてそれまでは僕がウルくんを守らないと。
身を寄せ合い、離れまいと二人くっつく。男たちに無理矢理薬を嗅がされ、意識を失っている間にそのまま船へと運ばれた。やがて二人が目を覚ますと綺麗で豪華な客室の一室で揃いの服を着せられ、首には薄い金属製の首輪が着けられていた。
「これ、なにか細工がしてありそうだね。」
「うん……なんだろ。」
ウルが首輪に触れる。
「たぶん、逃走防止用の首輪だろうね。」
「ビリビリッてするとか?」
「うん……。」
電気ショックも充分怖いが新が恐れているのは薬物だった。
「外せないものは仕方ないから、とにかく無事でいられるように気を付けよう。」
「うん、助けが来るまでの辛抱だよね。」
「……ウルくん、本当にごめんね。僕が君のところに行かなかったら。巻き込まずに済んだのに……。」
「ううん。頼ってくれて嬉しかったよ、いつも新くんには助けてもらってたから。」
「ウルくん……。」
「あと、僕の。」
「ストップ。」
「?」
「そのことは、話さないほうがいい。」
新は声を顰めて警告した。部屋中至る所に監視カメラがあるのを目線で教える。
「多分、見られてるし聴かれてる。口にしない方がいいよ。」
「そ、か。うん。わかった。気を付ける。」
「あと、アイツらに話しかけられても返事はしないで。いい?」
「?そなの?わかった。」
もし天蒼の言葉が分かるものがいて、歳を聞かれたウルが迂闊にも答えたら。間違いなく手を出される。子供だと思われている方が安全だった。
「お互い離れないようにしよう。」
「うん。」
こくこくとウルが頷く。それから二人は客室に監禁されたまま、片時も離れずじっとしていた。
ぞっとして腕を振り払おうとしたが、強くて敵わなかった。ウルもしがみついて何とか外そうとはしてくれたけれど、びくともしない。
『おい、やめとけ。』
『ああ?何でだよ?上納前は構わねえだろ?』
『いつもはな。』
『今回は別だ。ユェルン様と、二人も捕まったんだぞ。』
『監視に回した奴が戻ったらすぐ船に行こう。』
『そうだな、報告しねぇと。』
『絶対機嫌が悪くなるよな。』
『狩りは上手くいったのによ。』
『アゲンツも吹き飛ばしたしな。』
『だからって呑気に遊んでたなんて知られたら。』
『間違いなく殺されるな。』
『……そうか。そうだな。』
忌々しそうに男が手を離す。
『間が悪いよなぁ。』
『なぁ。』
『せっかくの上物なのによ。』
『こっちはガキだしなぁ。』
『見た目は同じく上物だけどなぁ。』
『ガキには勃たねぇわ。』
『ついでに連れてきたから上納はするけど。売れるかなコイツ。』
『たまにいるじゃん、ペドフェリア。』
『だな。』
新は共通言語を理解出来るが、ウルは理解出来ないようだった。青ざめた顔で、きょろきょろと視線を彷徨わせているが腑に落ちない顔をしている。
良かった。意味が分かったらますます怯えるだろうから。
さっき偶然知ってしまったウルの秘密。幅広の垂れ耳。恐らくロップイヤー。兎。そして狼の狗狼とは従兄弟。つまり。
タイプがミックスの兎。とんでもない希少種だ。知られればオークションの目玉どころではない。どんな目に遭うか想像もつかない。
絶対知られないようにしなければ。ウルの手を握ると、ぎゅっと握り返された。見上げてくる瑠璃色の瞳。その中に怯えは見当たらない。
信じてるんだ。貴宮くんも狗狼くんも無事で、必ず助けに来るって。だったら、せめてそれまでは僕がウルくんを守らないと。
身を寄せ合い、離れまいと二人くっつく。男たちに無理矢理薬を嗅がされ、意識を失っている間にそのまま船へと運ばれた。やがて二人が目を覚ますと綺麗で豪華な客室の一室で揃いの服を着せられ、首には薄い金属製の首輪が着けられていた。
「これ、なにか細工がしてありそうだね。」
「うん……なんだろ。」
ウルが首輪に触れる。
「たぶん、逃走防止用の首輪だろうね。」
「ビリビリッてするとか?」
「うん……。」
電気ショックも充分怖いが新が恐れているのは薬物だった。
「外せないものは仕方ないから、とにかく無事でいられるように気を付けよう。」
「うん、助けが来るまでの辛抱だよね。」
「……ウルくん、本当にごめんね。僕が君のところに行かなかったら。巻き込まずに済んだのに……。」
「ううん。頼ってくれて嬉しかったよ、いつも新くんには助けてもらってたから。」
「ウルくん……。」
「あと、僕の。」
「ストップ。」
「?」
「そのことは、話さないほうがいい。」
新は声を顰めて警告した。部屋中至る所に監視カメラがあるのを目線で教える。
「多分、見られてるし聴かれてる。口にしない方がいいよ。」
「そ、か。うん。わかった。気を付ける。」
「あと、アイツらに話しかけられても返事はしないで。いい?」
「?そなの?わかった。」
もし天蒼の言葉が分かるものがいて、歳を聞かれたウルが迂闊にも答えたら。間違いなく手を出される。子供だと思われている方が安全だった。
「お互い離れないようにしよう。」
「うん。」
こくこくとウルが頷く。それから二人は客室に監禁されたまま、片時も離れずじっとしていた。
0
お気に入りに追加
110
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる