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Hauptteil Akt 11
hunderteins
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ラ-ガレンに向かう途中、コインパーキングに車を停めて兄さんのマンションへと足を運んだ。コンシェルジュには顔を覚えられているからロビーには近付けない。仕方がないので敷地をぐるりと囲む緑の中の遊歩道を歩くことにした。所々にカメラやセキュリティガードが立っていて防犯対策がしっかり取られている。マンションの管理は、本家彪束家がしていた。
兄さんが帰国してそのままここに住み始めた時、僕も同じマンションに住みたいと頼んでみたが学生の身では許して貰えなかった。
誰か話を聞けそうなものはいないかと歩きながら視線を走らせる。あいにく人影一つ見つからなかった。
遊歩道は、基本居住者のみしか立ち入り出来ない。だから、ここで会ったらその人はここに住んでいると言うことになる。僕は貴宮家の次男だから、特別に通して貰えただけなのだ。
一周まわると早々に諦めた。誰もいない。授業まで時間もないし、今日はもう出よう。仕方なく踵を返したところで人とぶつかってしまった。ころんと後ろに一回転して、へたりこんだ男の子に慌てて駆け寄る。
「ごめん、大丈夫だった?」
「あ、はい。ごめんなさい。」
ぺこりと頭を下げて立ち上がった。小柄で細く、幼い。多分クシュダートに通い始めくらいじゃないだろうか。なんで平日の昼間にこんなところにいるんだろう?
「こっちこそごめん。怪我は?」
「だいじょぶです。」
ぱたぱたと小さな手で全身叩きながら確かめて頷く。ほっと安堵した。
「君、ここに住んでるの?」
「え?えと。はい。」
「そっか。僕はここに兄が住んでるんだ。」
「あ、そうなんですね。」
ふんわり笑った顔が可愛くて、なんとなく落ち着かない。
「送っていくよ。どっちのタワーになるの?」
「あ、いえ。だいじょぶです。」
両手をぱたぱたと振る仕草があどけない。僕に弟がいたらこんな感じなんだろうか?こんな子が弟なら、きっとすごく可愛がるだろうな。
「そう?」
「はい。」
なんとなく、この子に近づいて兄や、あの二人を探るのは気が進まなかった。
「じゃ、僕はこれで。」
「あ、はい。」
こくこく頷くと、小さく手を振られた。
「えと、んと。また。」
「うん、またね。」
手を振り返すと、ふにゃりと笑った。フェイだと思うけど種はなんだろう?
遅刻するわけには行かないので足早に遊歩道を出る。また会いたいな、となんとなく思った。
兄さんが帰国してそのままここに住み始めた時、僕も同じマンションに住みたいと頼んでみたが学生の身では許して貰えなかった。
誰か話を聞けそうなものはいないかと歩きながら視線を走らせる。あいにく人影一つ見つからなかった。
遊歩道は、基本居住者のみしか立ち入り出来ない。だから、ここで会ったらその人はここに住んでいると言うことになる。僕は貴宮家の次男だから、特別に通して貰えただけなのだ。
一周まわると早々に諦めた。誰もいない。授業まで時間もないし、今日はもう出よう。仕方なく踵を返したところで人とぶつかってしまった。ころんと後ろに一回転して、へたりこんだ男の子に慌てて駆け寄る。
「ごめん、大丈夫だった?」
「あ、はい。ごめんなさい。」
ぺこりと頭を下げて立ち上がった。小柄で細く、幼い。多分クシュダートに通い始めくらいじゃないだろうか。なんで平日の昼間にこんなところにいるんだろう?
「こっちこそごめん。怪我は?」
「だいじょぶです。」
ぱたぱたと小さな手で全身叩きながら確かめて頷く。ほっと安堵した。
「君、ここに住んでるの?」
「え?えと。はい。」
「そっか。僕はここに兄が住んでるんだ。」
「あ、そうなんですね。」
ふんわり笑った顔が可愛くて、なんとなく落ち着かない。
「送っていくよ。どっちのタワーになるの?」
「あ、いえ。だいじょぶです。」
両手をぱたぱたと振る仕草があどけない。僕に弟がいたらこんな感じなんだろうか?こんな子が弟なら、きっとすごく可愛がるだろうな。
「そう?」
「はい。」
なんとなく、この子に近づいて兄や、あの二人を探るのは気が進まなかった。
「じゃ、僕はこれで。」
「あ、はい。」
こくこく頷くと、小さく手を振られた。
「えと、んと。また。」
「うん、またね。」
手を振り返すと、ふにゃりと笑った。フェイだと思うけど種はなんだろう?
遅刻するわけには行かないので足早に遊歩道を出る。また会いたいな、となんとなく思った。
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