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Hauptteil Akt 10

dreiundneunzig

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 狗狼から"新が標的になった"と連絡を受けた篤臣は取るものもとりあえずCarmへと向かった。フィンレーとジュードに連絡すると、直接話を聞きたいから同行すると言う。三人で訪ねると、新がのんびりとクッキーを齧っていた。

「新くん。」
「あ、貴宮くん。ごめんね、忙しいのに。」
「いや。深沢から連絡貰ったんだけど。大丈夫?」
「うん。狗狼くんに護衛付けるって言われて、ここで待ってるんだ。」
「そっか。」

 新の前に、篤臣とフィンレーが腰掛ける。その側にジュードが立った。

「早速で悪いんだけど、この二人も一緒に話を聞かせて貰えるかな?イーサンとジェット。俺の同僚。」
「初めまして。」
「同席させて頂きます。」
 フィンレーとジュードがそれぞれ会釈した。

「こちらこそ、初めまして。笹川 新と申します。」
 ぺこりと新が会釈し返す。狗狼が近寄ってきて、新の隣に座った。

「オレも同席すっからな。」
 ふんぞり返った狗狼を、篤臣が改めてフィンレーとジュードに紹介する。ウルの従兄弟だと聞いて、頷くと互いに挨拶を交わした。

 最初から時系列に説明した新が一息吐くと、フィンレーが口を開いた。

「間違いなさそうだな。ジェット、彼の護衛を手配しろ。」
「畏まりました。」
 携帯を取り出し、ジュードが操作する。ここへ来るまでに、新の基本情報は取得していた。写真も込みで指示書と一緒に手配する。

「おい、護衛はこっちで。」
 言いかけた狗狼をフィンレーが制した。

「ツェアシュテールのアゲンツを付ける。」
「なんだって?」
「今からすぐ人員を確保して回す。コネがあるんだ。任せて貰えないか。」
 むっと狗狼が押し黙った。フィンレーを見つめると、鼻を鳴らす。

「いいだろう。」
「それから並行して、調べたいことがある。その由月 藍里さんの住んでいた部屋を調べたい。」
「部屋をですか?」
 新が聞き返すとフィンレーが頷いた。

「ああ。携帯があれば調べたい。なければパソコンでもいい。クラウドに何か残ってる可能性がある。例えば。」
「側近の女に関わる情報とかね。」
 フィンレーの後を継いで篤臣が付け加える。新が頷いた。

「分かりました。祖父を通して連絡してみます。捜索の手伝いだと言えば恐らく協力してくれると思います。」
「ありがとう。不安かも知れないが、安心して欲しい。アゲンツはその道のプロだ。目立たないよう付くから普段通り生活してもらって構わない。」
「ありがとうございます。」
 新がほっと息を吐いた。
 
「その由月 藍里さんも。手掛かりがないか調べてみるよ。」
「ありがとう、貴宮くん。」
「いや。大変だったね。」
「うん……。」
 弱々しく笑った新を見て、何としても助けたいと。そう思った。
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