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Hauptteil Akt 6
vierundfünfzig
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あの後ウルと、いちゃいちゃしながらご飯を食べてCarmまで送り届けた篤臣の機嫌はすこぶる良かった。ウルが恥ずかしがるので揶揄うのはやめて、いつも通り膝に乗せるだけでそれ以上はしなかったが部屋にはウルが着ていたカットソーがある。
先走りで裾に小さなシミが出来ていたそれは、ウルの匂いが濃く残っていた。
やばい。夜使うの楽しみ過ぎる。
鼻歌まじりにハンドルを切り、専用駐車スペースに停めると投資事業部本部長室へと向かった。行き交う人々から立ち止まって会釈される度、軽く微笑んで返す。役員専用エレベーターに乗り込むと、そのまま最上階フロアのボタンを押した。
軽い音を立て、扉が開く。廊下を歩いて前室の秘書室に入るとそこには訪問客が二人いた。
「やぁ、篤臣。」
「……。」
「急に訪ねてきて、すまないね。久しぶり。」
外向きの笑顔で話しかけてくるフィンレーに、どう答えたものかと戸惑う。確か密かに入国すると聞いていた。名前も偽名を使うと。
「イーサン様、やはり先にアポイントを取るべきでした。申し訳ございません。」
「ジェット。私が必要ないと言ったせいだ。篤臣、機嫌を直してくれ。」
どうやらフィンレーの偽名はイーサン、ジュードの偽名はジェットらしい。
「いや、驚いただけだ。久しぶりだね、イーサン。ジェットも。」
促して部屋へと向かう。
「コーヒーを頼む。」
「畏まりました。」
秘書に指示して自らドアを開けるとそのまま三人で中に入り、すぐに閉めた。振り向いて口を開く。
『もう入国していたんだな。驚いたよ。』
『?彪束には連絡を入れたはずだが?』
『……そうか、それは済まない。行き違いがあったようだ、悪かった。』
どうやら氷午の小さな悪戯だろう。全く、嫌な汗をかいた。
ソファを勧め、三人で腰掛ける。滞在中フィンレーは彪束家が経営する複合企業、ミスク-コンサーンに籍を置く役員で、普段は各国を飛び回っていると言う設定らしい。ジュードはと言うとバトラーではなくフィンレー直属の部下として振る舞う手筈になっていると説明された。
『滞在中は篤臣のマンションに住むことになったんだけど。聞いてるかい?』
『……いや。』
『とは言っても君が住んでるウエストタワーじゃなくて、対になってるイーストタワーの方なんだ。君がサポートするから近い方がいいだろうと配慮してくれた。』
なるほどと頷いた。
と、そこにノックが鳴り秘書がコーヒーを持って入室した。防音が施された上に念の為、共通言語で話していたから内容を知られる心配はない。秘書が退室してから、各々コーヒーに口をつけた。
『今後のこともあるから、何処か落ち着けるところで話しがしたい。今夜時間は取れるかい?』
フィンレーの申し出に篤臣はひっそりと溜め息を押し殺した。せっかくウルが着ていた服があると言うのに。しかも初めてのシミ付き。
当てが外れてお預けを食らった篤臣は渋々頷いた。
先走りで裾に小さなシミが出来ていたそれは、ウルの匂いが濃く残っていた。
やばい。夜使うの楽しみ過ぎる。
鼻歌まじりにハンドルを切り、専用駐車スペースに停めると投資事業部本部長室へと向かった。行き交う人々から立ち止まって会釈される度、軽く微笑んで返す。役員専用エレベーターに乗り込むと、そのまま最上階フロアのボタンを押した。
軽い音を立て、扉が開く。廊下を歩いて前室の秘書室に入るとそこには訪問客が二人いた。
「やぁ、篤臣。」
「……。」
「急に訪ねてきて、すまないね。久しぶり。」
外向きの笑顔で話しかけてくるフィンレーに、どう答えたものかと戸惑う。確か密かに入国すると聞いていた。名前も偽名を使うと。
「イーサン様、やはり先にアポイントを取るべきでした。申し訳ございません。」
「ジェット。私が必要ないと言ったせいだ。篤臣、機嫌を直してくれ。」
どうやらフィンレーの偽名はイーサン、ジュードの偽名はジェットらしい。
「いや、驚いただけだ。久しぶりだね、イーサン。ジェットも。」
促して部屋へと向かう。
「コーヒーを頼む。」
「畏まりました。」
秘書に指示して自らドアを開けるとそのまま三人で中に入り、すぐに閉めた。振り向いて口を開く。
『もう入国していたんだな。驚いたよ。』
『?彪束には連絡を入れたはずだが?』
『……そうか、それは済まない。行き違いがあったようだ、悪かった。』
どうやら氷午の小さな悪戯だろう。全く、嫌な汗をかいた。
ソファを勧め、三人で腰掛ける。滞在中フィンレーは彪束家が経営する複合企業、ミスク-コンサーンに籍を置く役員で、普段は各国を飛び回っていると言う設定らしい。ジュードはと言うとバトラーではなくフィンレー直属の部下として振る舞う手筈になっていると説明された。
『滞在中は篤臣のマンションに住むことになったんだけど。聞いてるかい?』
『……いや。』
『とは言っても君が住んでるウエストタワーじゃなくて、対になってるイーストタワーの方なんだ。君がサポートするから近い方がいいだろうと配慮してくれた。』
なるほどと頷いた。
と、そこにノックが鳴り秘書がコーヒーを持って入室した。防音が施された上に念の為、共通言語で話していたから内容を知られる心配はない。秘書が退室してから、各々コーヒーに口をつけた。
『今後のこともあるから、何処か落ち着けるところで話しがしたい。今夜時間は取れるかい?』
フィンレーの申し出に篤臣はひっそりと溜め息を押し殺した。せっかくウルが着ていた服があると言うのに。しかも初めてのシミ付き。
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