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Hauptteil Akt 6
zweiundfünfzig
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ホテルのベッドにうつ伏せで倒れ込むと、足をばたつかせた。けれどフルオーダーで作った靴はぴったりとクロエの足に沿っていて、それ位では脱げない。
諦めてそのまま、だらりと力を抜いた。
『あーあ。私の馬鹿。』
昔からの友だちも、新しく出来た友だちも、いっぺんに無くしてしまった。次々と涙が溢れ、シーツを濡らす。
あの篤臣が片時もウルを離さなかった。ずっと抱きしめ、匂いを嗅ぎ、頬擦りをしていた。人前だと言うのに何度もキスをして、泣き止むまで宥めていた。まるで嫌われたらこの世の終わりだとでも言うように。
いいなぁ。
あんな風に愛されたい。篤臣はウルしか見てなかった。常にウルにだけ意識が向いている、そんな感じだった。周囲が驚いていなかったところを見るにきっと普段からそうなのだろう。
彼が初恋の人だったのね。
一度だけ、聞いたことがある。ずっとその人が諦められないと、そう言った篤臣は切なそうな表情を隠しもしなかった。それを知って篤臣と自分は同じだと思った。報われない気持ち。相手に届かない想い。ひっそりと抱えて気持ちを押し殺す。
だから今回も、助けてもらえるかもしれないと縋ってしまった。でも篤臣は少しも自分と同じじゃなかった。諦めず、想いを伝え、ウルを手に入れていた。自分とは全然違う。
ウルを泣かせたクロエを見る篤臣の瞳は酷く冷めていて、とんでもないことをしてしまったとひどく後悔した。再会を喜んだのは本当だが、抱きついてキスをしたのはやり過ぎだった。あわよくばゴシップに載らないかと期待したのだ。篤臣を利用した。最低だ。利用されることがどれだけ不快か知っているのに。そのせいで篤臣の最愛を傷付けた。きっと許しては貰えない。
新もそうだ。大事な親友を傷付けたクロエをきっと許してはくれないだろう。思えば彼は最初から真摯で誠実な人だった。話したくなければ無理に話す必要はないと、上手く線引きしてくれていたおかげで一緒にいる時はいつも居心地が良かった。彼の言う通りだ、そもそも嘘を吐く必要なんてなかった。これまでのように、話したくなければそう言えば。彼は興味本位で踏み込むような人じゃない。分かっていたから友だちになりたいと思ったのに。
『謝る機会が、貰えるかしら。』
ウルさんにも、ちゃんと謝りたい……彼、瞳が溶けるんじゃないかってくらい泣いてた……。
当たり前だ。目の前でマッシブにキスされたのだから。自分がされたら絶対嫌だし、なんなら怒り狂って罵っただろう。篤臣が巣に連れ帰ったのも納得だった。今頃全力でウルを囲い込んでいるだろう。本当に浅はかだった。篤臣に言われた言葉を思い出す。
『いい加減、向き合いなよ。か……。』
そうね。もうこの気持ちにけじめをつけなくちゃ。フィンレーに告白して、どんな返事でも受け止めるよう。そして振られたら、その時は……。
その時は、フィンレーを諦めて誰か適当な相手とゲレンク-パラをすませるわ。彼じゃないなら相手は誰でも良い。
シーツを握りしめると声を上げて泣いた。振られたらきっと、もっと泣いてしまうだろう。でも、もう本当に疲れてしまった。
流れる赤褐色の髪。晒された形のいい額。黄金色の瞳はまるで太陽みたいで。笑うと途端に幼くなるフィンレー。誰よりもあの大きな手が欲しかった。独り占めしたかった。
私だけを愛して欲しかった。
諦めてそのまま、だらりと力を抜いた。
『あーあ。私の馬鹿。』
昔からの友だちも、新しく出来た友だちも、いっぺんに無くしてしまった。次々と涙が溢れ、シーツを濡らす。
あの篤臣が片時もウルを離さなかった。ずっと抱きしめ、匂いを嗅ぎ、頬擦りをしていた。人前だと言うのに何度もキスをして、泣き止むまで宥めていた。まるで嫌われたらこの世の終わりだとでも言うように。
いいなぁ。
あんな風に愛されたい。篤臣はウルしか見てなかった。常にウルにだけ意識が向いている、そんな感じだった。周囲が驚いていなかったところを見るにきっと普段からそうなのだろう。
彼が初恋の人だったのね。
一度だけ、聞いたことがある。ずっとその人が諦められないと、そう言った篤臣は切なそうな表情を隠しもしなかった。それを知って篤臣と自分は同じだと思った。報われない気持ち。相手に届かない想い。ひっそりと抱えて気持ちを押し殺す。
だから今回も、助けてもらえるかもしれないと縋ってしまった。でも篤臣は少しも自分と同じじゃなかった。諦めず、想いを伝え、ウルを手に入れていた。自分とは全然違う。
ウルを泣かせたクロエを見る篤臣の瞳は酷く冷めていて、とんでもないことをしてしまったとひどく後悔した。再会を喜んだのは本当だが、抱きついてキスをしたのはやり過ぎだった。あわよくばゴシップに載らないかと期待したのだ。篤臣を利用した。最低だ。利用されることがどれだけ不快か知っているのに。そのせいで篤臣の最愛を傷付けた。きっと許しては貰えない。
新もそうだ。大事な親友を傷付けたクロエをきっと許してはくれないだろう。思えば彼は最初から真摯で誠実な人だった。話したくなければ無理に話す必要はないと、上手く線引きしてくれていたおかげで一緒にいる時はいつも居心地が良かった。彼の言う通りだ、そもそも嘘を吐く必要なんてなかった。これまでのように、話したくなければそう言えば。彼は興味本位で踏み込むような人じゃない。分かっていたから友だちになりたいと思ったのに。
『謝る機会が、貰えるかしら。』
ウルさんにも、ちゃんと謝りたい……彼、瞳が溶けるんじゃないかってくらい泣いてた……。
当たり前だ。目の前でマッシブにキスされたのだから。自分がされたら絶対嫌だし、なんなら怒り狂って罵っただろう。篤臣が巣に連れ帰ったのも納得だった。今頃全力でウルを囲い込んでいるだろう。本当に浅はかだった。篤臣に言われた言葉を思い出す。
『いい加減、向き合いなよ。か……。』
そうね。もうこの気持ちにけじめをつけなくちゃ。フィンレーに告白して、どんな返事でも受け止めるよう。そして振られたら、その時は……。
その時は、フィンレーを諦めて誰か適当な相手とゲレンク-パラをすませるわ。彼じゃないなら相手は誰でも良い。
シーツを握りしめると声を上げて泣いた。振られたらきっと、もっと泣いてしまうだろう。でも、もう本当に疲れてしまった。
流れる赤褐色の髪。晒された形のいい額。黄金色の瞳はまるで太陽みたいで。笑うと途端に幼くなるフィンレー。誰よりもあの大きな手が欲しかった。独り占めしたかった。
私だけを愛して欲しかった。
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