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Hauptteil Akt 4

fünfzig

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 栢杠から少し離れた山の中腹にあるペントハウスにリーウェンはいた。一人の側近とオークションにかける男女を七人、工作員たちを十人連れて密かに天蒼入りを果たしたリーウェンは、ワインを飲みながら静かな怒りに燃えていた。

 とうとうアゲンツの侵入を許してしまい、本拠地を棄てることになった上、一番のお気に入りまで失った。あの日からずっと最悪な気分が続いている。しかも初めて訪れたこの国はあまり好きにはなれなかった。リーウェンが好みとするグラスが少ないのだ。

 せっかく、いやらしい身体に育ってきたというのに。あのグラスを奪われた。

『リーウェン様。ユェルン様からお電話が入りました。』
『よこせ。』
 携帯を受け取ると、可愛がっているユェルンの声が鼓膜に響いた。

『リーウェン様、グラスを一人手に入れました。』
『ふぅん。どっちだ?』
『女です。馬の純血種になります。』
『馬か。』
『はい。しかも珍しく小柄です。バランスのいい美しい脚を持っています。』
『それは高く売れそうだな。』
『はい、きっと。』
『他には?』
『今のところは、まだ。』
『そうか、久しぶりにワレも狩りに出るか。ここは退屈だ。』
『それも一興かと。栢杠の街は平和で。ふふ。人が良いものばかりです。グラスは少ないですが、狩りはしやすいかと。』
『グラスが多いディストリクトが良かったんだがなぁ。』
『それは確かに。私もそう思っていました。ですがここも中々良いものですよ。』
『ほぅ。そうか。お前がそこまで言うなら。』
『ええ、是非。』
『女はいつ連れて来る?』
『すぐにでも。』
『売る前に味見するか。』
 ニヤニヤと笑う。

『それがどうやら処女のようです。』
『チッ!ならば手をつけるのは勿体無いな。』
『値が落ちてしまいますから。』
『仕方ない。他を探すか。』
『女をそちらへ運びます。その後私と栢杠へ戻って狩りをしましょう。』
『それもいいな。考えておこう。』
 携帯を切り、テーブルへ放る。

『ユェルンは女ばかり捕まえてくる。ワレは男が欲しいんだが。』
『オークションでは女がよく売れますから。』
『仕方ない、ワレのものはワレで見つけるか。掘り出し物があるやもしれんしな。』
『掘り出し物、ですか。』
『ああ。例えばミックス。奴等は数が少ない上に、隠れているからなぁ。もし見つけたら必ず捕まえろ。途方もない高値がつく。最後に売ったのは美しい女だった……。客どもが挙って欲しがったなぁ。』
 目を瞑り、思い出す。

『買った男はそれはそれは非情な男だった。散々嬲って何度も孕ませたらしい。はは。怖い怖い。』
『……ミックスの子はなんと言うのでしょうか。』
『さぁなぁ。生存率が著しく低いから、すぐ死ぬらしい。育たないなら呼びようもないだろ。』
『左様ですか……。』
『どこかにいるかなぁ、男のミックス。性質はグラスがいい。大人しくて従順だからなぁ。』
 想像して笑う。

『いなければ下位種が欲しいなぁ。』
『現存数がかなり少ない種ですね。』
『ああ。別名"生き残れない種"だからな。だからこそ価値がある。見つけたら売らずに飼い殺すぞ。ワレのものだ。はは。』
 考えるだけで陰茎に熱が集まった。硬く勃ち上がり、犯したくて堪らなくなる。

『おい。男でも女でもいい。どれか連れてこい。』
『畏まりました。』
 立ち上がってベッドルームへと向かう。お気に入りのグラスを奪われてから、今はオークションにかける男女の中で適当に見繕い遊んでいる。どれも美しく、高値がつくものたちばかりだが、満たされない。やはり返す返すもあのグラスが惜しい。

『次からは首輪に細工するか。奪われるくらいなら殺してやろう。』
 不穏な独り言を口にしてドアを開けた。
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