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Wie läuft's bei dir?
忘れられない人《side ウル》
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なんで……ここに……?
頭が真っ白になって動けない。なんで。なんで貴宮くんが。ここに?
「い、いらっしゃいませ。」
「注文、いいですか?」
「はい。」
少しもこっちを見てないから、気付いてないのかも。それかもう、忘れちゃったのかも。
きゅうっと胸が苦しくなった。どっちにしても、悲しい。
「……で、お願いします。」
「あっ……はい。」
こくこくと頷いて、オーダー票に書き込む。ホットコーヒーと……あと、なんだっけ……。どうしよう、聞いてなかった……。
「……フィレサンド。」
「申し訳ありません。」
ぺこりと頭を下げて、繰り返す。どうしよう、泣きそう。
落ち着け、落ち着け。耳とか尻尾とか。出たら大変。バレちゃう。
こくりと唾を飲み込んで、早足で厨房に戻る。駆け込むようにして戻った僕に、おばあちゃんが目を瞠った。
「どうしたの?ウル。」
「なんでもないよ。」
へらりと笑って頭を撫で付ける。良かった。出てない。尻尾も。だいじょぶ。うん。
「?そぅお?」
「うん。あ、ホットコーヒーとフィレサンド。入りました。」
「はぁい。」
間延びした声で返しつつ、てきぱき手を動かす、おばあちゃんの横からホールをそっと覗き見る。
タブレットを片手に、眉間に皺を寄せてる彼は 高等教育学校の時と少しも変わっていなかった。うぅん。もっとかっこよくなってるかも。
ぽぅっと見つめてると後ろから、すぱんと叩かれた。
「いたっ!」
「なに、ぼーっとしてやがる。」
振り返ると従兄弟の狗狼が腕を組んで仁王立ちしてた。手が早い。
「ひどいよ。」
「ぼさっとしてっからだろ。さくさく動け。」
「うん。」
ここはおばあちゃんが経営するカフェCarm。
安らぎって意味でつけたここは、その名の通り穏やかな雰囲気が魅力のカフェ。
僕はここで店員として働いている。主にホール。狗狼とおばあちゃんは調理。だから、もう一回。近くで見れる。
どうしよう。どきどきしてきた。
あれから二年。もう一度逢えるとは思わなかったから。
少しだけ。少しだけなら見ても良いかな?だって大好きだったんだもん。
頭が真っ白になって動けない。なんで。なんで貴宮くんが。ここに?
「い、いらっしゃいませ。」
「注文、いいですか?」
「はい。」
少しもこっちを見てないから、気付いてないのかも。それかもう、忘れちゃったのかも。
きゅうっと胸が苦しくなった。どっちにしても、悲しい。
「……で、お願いします。」
「あっ……はい。」
こくこくと頷いて、オーダー票に書き込む。ホットコーヒーと……あと、なんだっけ……。どうしよう、聞いてなかった……。
「……フィレサンド。」
「申し訳ありません。」
ぺこりと頭を下げて、繰り返す。どうしよう、泣きそう。
落ち着け、落ち着け。耳とか尻尾とか。出たら大変。バレちゃう。
こくりと唾を飲み込んで、早足で厨房に戻る。駆け込むようにして戻った僕に、おばあちゃんが目を瞠った。
「どうしたの?ウル。」
「なんでもないよ。」
へらりと笑って頭を撫で付ける。良かった。出てない。尻尾も。だいじょぶ。うん。
「?そぅお?」
「うん。あ、ホットコーヒーとフィレサンド。入りました。」
「はぁい。」
間延びした声で返しつつ、てきぱき手を動かす、おばあちゃんの横からホールをそっと覗き見る。
タブレットを片手に、眉間に皺を寄せてる彼は 高等教育学校の時と少しも変わっていなかった。うぅん。もっとかっこよくなってるかも。
ぽぅっと見つめてると後ろから、すぱんと叩かれた。
「いたっ!」
「なに、ぼーっとしてやがる。」
振り返ると従兄弟の狗狼が腕を組んで仁王立ちしてた。手が早い。
「ひどいよ。」
「ぼさっとしてっからだろ。さくさく動け。」
「うん。」
ここはおばあちゃんが経営するカフェCarm。
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僕はここで店員として働いている。主にホール。狗狼とおばあちゃんは調理。だから、もう一回。近くで見れる。
どうしよう。どきどきしてきた。
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