47 / 62
Clive and Elliot you treasures from Theresa・Argan
愛恋
しおりを挟む
王宮にて行われる、褒賞授与式。アーガン伯爵家として招待を受けたテレジアは、薄い緑のドレスを選びアクセサリーはダイヤモンドを合わせた。本来、夫や婚約者の色を纏うのが装いの習わしとされ、それに即するのであれば夫であるクリスの色を纏うものである。
しかし、テレジアは金髪金瞳でクリスの色は、くすんだ銀色と黄色。どちらを選んでも目にうるさい色合いとなる為、普段から気にせず色を選び纏ってきた。
良かったわ、この色でも不審に思われることはないから。
テレジアの気持ちでは、夫はただ一人クライヴだけ。だから迷うことなくこの色を選び、纏った。特に今夜はクライヴが褒賞を受けるのだ。人前では義理の姉と夫の義弟。だからそれに応じた対応を。祝いの言葉を述べ、功績を労う。アーガン伯爵家当主夫人として。
何年振りかしら。元気に過ごしていることは知っているけれど。
会場で、そっとクライヴを見つめる。気付かれるわけにはいかない。瞳に熱を灯してはいけない。火照る身体を知られるわけにはいかない。
「義姉上。」
「クライヴ殿。この度は、おめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
「お元気そうで、なによりですわ。」
「そちらも。今宵の装いもお美しい。」
「ありがとう。このドレス、今夜のために誂えたのよ。そう言って貰えると嬉しいわ。」
「よくお似合いです。」
「まぁ、ふふふ。」
ぬけぬけと自分の色が良く似合うと言うクライヴに笑った。尤も自分も、クライヴを祝う為に誂えたのだと匂わせた。周囲に人がおらず、適度にざわめいているからこそ出来た、言葉遊びだった。
本当は、こんなことも控えるべきなんでしょうね。
「エリオットは、どうしていますか?」
「ああ。色々と扱いておりますが、どれをやらせても楽しそうで。いい騎士になると思いますよ。」
「そう。騎士団団長の言葉なら、期待出来るわね。これからも、よろしくお願いしますわ。」
「はい、もちろん。」
クライヴの口からエリオットの話が聞けるのは嬉しい。
「王都滞在中は、色々と回られるのでしょう?」
「はい。駐屯や討伐でお世話になった家門から招待を受けておりますので。」
本来ならタウンハウスに滞在するものだが、滅多に王都へ出てこない私設騎士団団長たるクライヴが登城したのだ。どこの家門も我先にと招待状を送ってきており、王都滞在中はそういった家門で催される夜会に宿泊込みで参加するらしい。
「そう。是非、タウンハウスにも顔を出してちょうだい。ベントリーが寂しがっているわ。」
「ベントリーが?それはないでしょう。」
軽口を叩き合い、笑う。こんな風に、あなたと笑い合える日が来るなんて。
少しも寂しくないのかと言われれば嘘になる。でも色を形を変えて心に身体に確かにある。あなたへの愛が。激しく溢れ出すような、そんな愛から静かに満ちる愛へと変わってきたの。
「領地へ戻る前に、必ず顔を出します。」
「ええ、待っているわ。」
その後、クライヴは約束通りタウンハウスを訪れテレジアと庭でお茶を楽しむとアーガン伯爵領へと帰っていった。カラマツソウが咲き乱れる庭。それは二人が過ごした、あの保養地に咲いていた花だった。
それが、二人が逢った、最後だった。
しかし、テレジアは金髪金瞳でクリスの色は、くすんだ銀色と黄色。どちらを選んでも目にうるさい色合いとなる為、普段から気にせず色を選び纏ってきた。
良かったわ、この色でも不審に思われることはないから。
テレジアの気持ちでは、夫はただ一人クライヴだけ。だから迷うことなくこの色を選び、纏った。特に今夜はクライヴが褒賞を受けるのだ。人前では義理の姉と夫の義弟。だからそれに応じた対応を。祝いの言葉を述べ、功績を労う。アーガン伯爵家当主夫人として。
何年振りかしら。元気に過ごしていることは知っているけれど。
会場で、そっとクライヴを見つめる。気付かれるわけにはいかない。瞳に熱を灯してはいけない。火照る身体を知られるわけにはいかない。
「義姉上。」
「クライヴ殿。この度は、おめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
「お元気そうで、なによりですわ。」
「そちらも。今宵の装いもお美しい。」
「ありがとう。このドレス、今夜のために誂えたのよ。そう言って貰えると嬉しいわ。」
「よくお似合いです。」
「まぁ、ふふふ。」
ぬけぬけと自分の色が良く似合うと言うクライヴに笑った。尤も自分も、クライヴを祝う為に誂えたのだと匂わせた。周囲に人がおらず、適度にざわめいているからこそ出来た、言葉遊びだった。
本当は、こんなことも控えるべきなんでしょうね。
「エリオットは、どうしていますか?」
「ああ。色々と扱いておりますが、どれをやらせても楽しそうで。いい騎士になると思いますよ。」
「そう。騎士団団長の言葉なら、期待出来るわね。これからも、よろしくお願いしますわ。」
「はい、もちろん。」
クライヴの口からエリオットの話が聞けるのは嬉しい。
「王都滞在中は、色々と回られるのでしょう?」
「はい。駐屯や討伐でお世話になった家門から招待を受けておりますので。」
本来ならタウンハウスに滞在するものだが、滅多に王都へ出てこない私設騎士団団長たるクライヴが登城したのだ。どこの家門も我先にと招待状を送ってきており、王都滞在中はそういった家門で催される夜会に宿泊込みで参加するらしい。
「そう。是非、タウンハウスにも顔を出してちょうだい。ベントリーが寂しがっているわ。」
「ベントリーが?それはないでしょう。」
軽口を叩き合い、笑う。こんな風に、あなたと笑い合える日が来るなんて。
少しも寂しくないのかと言われれば嘘になる。でも色を形を変えて心に身体に確かにある。あなたへの愛が。激しく溢れ出すような、そんな愛から静かに満ちる愛へと変わってきたの。
「領地へ戻る前に、必ず顔を出します。」
「ええ、待っているわ。」
その後、クライヴは約束通りタウンハウスを訪れテレジアと庭でお茶を楽しむとアーガン伯爵領へと帰っていった。カラマツソウが咲き乱れる庭。それは二人が過ごした、あの保養地に咲いていた花だった。
それが、二人が逢った、最後だった。
22
お気に入りに追加
69
あなたにおすすめの小説
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる