【完結】R-15 私はお兄様を愛している《番外編》〜あのとき、あれから〜

what I should love and protect from Cassia･Argan

妄執

　カシアがテレジアと初めて会ったのは、彼女が15歳の時だった。それまで何度か会おうとはしたが、領地にいるカシアと王都にいるテレジアとでは距離があると言ってクラークが頷かなかった。だが、本当の理由はそうではなかったのだと、彼女を見た瞬間カシアは思い知った。

　自分と同じ、金髪金瞳。

　夫は何一つ、諦めてなどいなかった。今度は孫に待ち望んだ色が出ることを期待したのだ。そのために、あの歳までクリスに婚約者を与えなかった。

　オルドリッジ子爵夫妻と交わす、応接室での寒々しい会話。上辺だけの微笑み。隣に座る夫が心底悍ましい。この幼い少女は自分のように買い叩かれたのだろうか。両親はどう思っているのだろう。カシアは胸が張り裂けそうだった。

　やがてクラークとの顔合わせの為に、テレジアを庭にある四阿へエスコートするようクライヴが呼ばれた。貴族学園の騎士科を卒業して一年、もうすぐアークライト子爵家へ養子に入る予定のクライヴは騎士の礼をしたのち、テレジアへと手を差し出した。1歳違いの二人の方が余程婚約者として釣り合いが取れている。二人仲良く庭へと向かう後ろ姿を眺めたカシアは何か囁いたクライヴにテレジアが、うっすらと頬を染め見つめ返している横顔を見てしまった。

　ああ、なんてこと。

　人が恋に落ちる瞬間を初めて見てしまった。それが他でもない義理の息子と実の息子の婚約者だなんて。