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Act.6.5 僕と兄様
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僕には、2人の兄様といっぱいの姉様がいる。
でも、僕が好きなのはたった1人だけ――僕とは父様が違うけど、母様にとってもよく似た優しい姉様だ。
金色の長い髪が真っ直ぐで、とっても綺麗な人なんだ。青い目が大きくてくりくりしてて、羨ましい。僕もあんな色の目が良かったな。
あ、姉様の名前はサラっていうんだ。可愛いでしょ?
姉様は、ユベール兄様とケッコンしたら、お城でいっぱいいじわるされて、いっぱい泣いてた。
だから僕は、ユベール兄様が嫌いだったんだ。
ネコになって歩けるようになって、僕は姉様を追いかけた。
姉様がお城を出て行っちゃったから、僕も姉様と同じところに行きたかったんだ。マーレ王国っていうところはちょっと遠かったけど、僕、姉様の匂いはわかるんだよ?
またいっぱい泣いてると思った姉様は、兄様にいっぱい抱っこしてもらって、いっぱい口と口をくっつけて、いっぱい笑ってた。
姉様は、兄様のことが大好きなんだ。
ずっと、こっそり姉様を見てたのに、兄様は僕に気づいてたんだよ。いっつも、ニッコリ笑って片目を瞑って……兄様は僕がジュストだってきっとわかったんだ。
だからね、僕は「仲良くしてね」って、お別れの挨拶をした。
ルミエール王国には帰りたくない。あそこは嫌い。姉様がいっぱい泣いたところだから。
でも行くところはなくて、僕、またひとりぼっちになっちゃって、海を泳いでた。
そしたら、ルーチェに会ったんだ。茶色と金色が混ざった髪の毛は姉様みたいに真っ直ぐで、茶色い目で僕を見てた。
そのとき、ルーチェは姉様みたいに泣いてた。
僕、ルーチェと一緒にいたい。
でも、ルーチェは僕のことをネコだと思ってた。いっぱい話しかけてたのに……全然気がついてくれないんだから!
***
「君、僕のことは嫌いだと思ってたけど?」
ルーチェが図書館に入っていって、僕とユベール兄様は入り口のベンチに座った。
茶色い髪の毛がくるくるしてる。お城にいたときより長くなったみたい。僕と同じ色の目で僕を見てる。僕が嫌い……だった、兄様。
本当は、ルーチェと一緒に行って魔法の本を借りてもらおうと思ったけど、僕は文字が読めないからユベール兄様に教えてもらうほうがいいよね?
ルーチェは僕の言いたいこと、ちょっとしかわかってくれないもん。
「にゃー」
ああ、僕、ちゃんと喋ってるのに……どうして「にゃー」しか言えないの?
「まぁ、君が僕を嫌いでも好きでもどうでもいいけどね。ていうか、君、なんだか不思議な魔法をかけられてるねぇ……なんだろ、これ?」
ユベール兄様は僕を持ち上げて、身体の隅々までじっくり見てる。
「にゃうん?」
「無理だね。僕はこういう魔法、得意じゃないし」
なんだ……ユベール兄様でも解けない魔法じゃ、僕はもう人間に戻れないのかも。
ロラン兄様のせいで身体もなくなっちゃったし。
「でも、あの子と話ができる呪文なら教えてあげるよ。マーレ王国には優秀なクラドールがたくさんいるし、診療所にでも連れて行ってもらえばいい。どう?」
「にゃー」
ルーチェと話ができるようになる!? 嬉しくてユベール兄様に飛びついたら笑われた。
「あの子のこと、そんなに好きなんだ?」
「にゃー」
もちろん好きだよ? だって、ルーチェは頑張り屋さんだし、僕のこといっぱい抱っこしてくれるし、たまに研修で失敗して泣いてるけど……僕にはいっぱい笑ってくれるもん。いっぱい怒ったりもするけど。
「うーん、そうじゃなくてさ……まぁいいや。えっと、『ほら、こうやって光に言葉を乗せて直接話しかけるんだよ』」
ユベール兄様の声が頭に響いてくる。
ほら、って言われても良くわからないんだけど。
『気は練れるんでしょ? 光属性のセントロは額にあるから意識を集中して、気で矢を作るみたいにして言葉を送るんだよ』
気、って……チャクラのことだよね? なんだか難しいなぁ。
「にゃぁ」
おでこにチャクラを集めてみるけど、ちょっとおでこが熱くなるだけで何にも起こらない。
「まぁ、そのうちできるようになるよ」
ユベール兄様はクスクス笑って僕を撫でた。
む……
「そんな顔しないでよ。僕、魔法を教えたことないし。あとは自分で練習してよ。僕はそろそろ帰らないといけないんだ。ほら、あの子も出てきたよ」
ユベール兄様が指差した方を見ると、ルーチェは分厚い本を2冊持って図書館から出てきたところだった。
急いで駆け寄って話しかけてみるけど、やっぱりダメみたい。
「――オロ、君も大変だね?」
「にゃう」
ユベール兄様は、僕が“オロ”って呼ばれるの嫌だってわかってて言ってるんだ。もう、やっぱりイジワルなんだ! 姉様が可哀相だよ!
「あれ、お子さんが生まれるんですか?」
ルーチェがユベール兄様の持ってる本を見て言う。
赤ちゃんの本なの?
「ああ、うん。生まれるのはまだ先だけどね。ついこの間、わかってさ」
「そうなんですか。おめでとうございます」
ユベール兄様はとっても嬉しそうに笑って、ルーチェに「ありがとう」って言った。
「にゃー?」
「そうだよ。大丈夫、僕の可愛い奥さんもちょっと悪阻がつらそうだけど、元気だから」
そっか。赤ちゃんが生まれるんだ。姉様の赤ちゃん、僕も見たいな。
「じゃあ、僕は帰るよ。可愛い奥さんと女の子……あ、男の子も待ってるから」
え? 赤ちゃんは2人いるの?
いつ生まれるの?
いつ会えるの?
いっぱい聞きたいことがあったのに、ユベール兄様は手を振りながら走って帰っちゃった。
「不思議な人だったね」
「にゃー」
その後、ルーチェは重い本を持ちながら僕のことも抱っこしてくれた。やっぱり、ルーチェはあったかい。
ルーチェ、僕、絶対魔法を使えるようになるからね――…
でも、僕が好きなのはたった1人だけ――僕とは父様が違うけど、母様にとってもよく似た優しい姉様だ。
金色の長い髪が真っ直ぐで、とっても綺麗な人なんだ。青い目が大きくてくりくりしてて、羨ましい。僕もあんな色の目が良かったな。
あ、姉様の名前はサラっていうんだ。可愛いでしょ?
姉様は、ユベール兄様とケッコンしたら、お城でいっぱいいじわるされて、いっぱい泣いてた。
だから僕は、ユベール兄様が嫌いだったんだ。
ネコになって歩けるようになって、僕は姉様を追いかけた。
姉様がお城を出て行っちゃったから、僕も姉様と同じところに行きたかったんだ。マーレ王国っていうところはちょっと遠かったけど、僕、姉様の匂いはわかるんだよ?
またいっぱい泣いてると思った姉様は、兄様にいっぱい抱っこしてもらって、いっぱい口と口をくっつけて、いっぱい笑ってた。
姉様は、兄様のことが大好きなんだ。
ずっと、こっそり姉様を見てたのに、兄様は僕に気づいてたんだよ。いっつも、ニッコリ笑って片目を瞑って……兄様は僕がジュストだってきっとわかったんだ。
だからね、僕は「仲良くしてね」って、お別れの挨拶をした。
ルミエール王国には帰りたくない。あそこは嫌い。姉様がいっぱい泣いたところだから。
でも行くところはなくて、僕、またひとりぼっちになっちゃって、海を泳いでた。
そしたら、ルーチェに会ったんだ。茶色と金色が混ざった髪の毛は姉様みたいに真っ直ぐで、茶色い目で僕を見てた。
そのとき、ルーチェは姉様みたいに泣いてた。
僕、ルーチェと一緒にいたい。
でも、ルーチェは僕のことをネコだと思ってた。いっぱい話しかけてたのに……全然気がついてくれないんだから!
***
「君、僕のことは嫌いだと思ってたけど?」
ルーチェが図書館に入っていって、僕とユベール兄様は入り口のベンチに座った。
茶色い髪の毛がくるくるしてる。お城にいたときより長くなったみたい。僕と同じ色の目で僕を見てる。僕が嫌い……だった、兄様。
本当は、ルーチェと一緒に行って魔法の本を借りてもらおうと思ったけど、僕は文字が読めないからユベール兄様に教えてもらうほうがいいよね?
ルーチェは僕の言いたいこと、ちょっとしかわかってくれないもん。
「にゃー」
ああ、僕、ちゃんと喋ってるのに……どうして「にゃー」しか言えないの?
「まぁ、君が僕を嫌いでも好きでもどうでもいいけどね。ていうか、君、なんだか不思議な魔法をかけられてるねぇ……なんだろ、これ?」
ユベール兄様は僕を持ち上げて、身体の隅々までじっくり見てる。
「にゃうん?」
「無理だね。僕はこういう魔法、得意じゃないし」
なんだ……ユベール兄様でも解けない魔法じゃ、僕はもう人間に戻れないのかも。
ロラン兄様のせいで身体もなくなっちゃったし。
「でも、あの子と話ができる呪文なら教えてあげるよ。マーレ王国には優秀なクラドールがたくさんいるし、診療所にでも連れて行ってもらえばいい。どう?」
「にゃー」
ルーチェと話ができるようになる!? 嬉しくてユベール兄様に飛びついたら笑われた。
「あの子のこと、そんなに好きなんだ?」
「にゃー」
もちろん好きだよ? だって、ルーチェは頑張り屋さんだし、僕のこといっぱい抱っこしてくれるし、たまに研修で失敗して泣いてるけど……僕にはいっぱい笑ってくれるもん。いっぱい怒ったりもするけど。
「うーん、そうじゃなくてさ……まぁいいや。えっと、『ほら、こうやって光に言葉を乗せて直接話しかけるんだよ』」
ユベール兄様の声が頭に響いてくる。
ほら、って言われても良くわからないんだけど。
『気は練れるんでしょ? 光属性のセントロは額にあるから意識を集中して、気で矢を作るみたいにして言葉を送るんだよ』
気、って……チャクラのことだよね? なんだか難しいなぁ。
「にゃぁ」
おでこにチャクラを集めてみるけど、ちょっとおでこが熱くなるだけで何にも起こらない。
「まぁ、そのうちできるようになるよ」
ユベール兄様はクスクス笑って僕を撫でた。
む……
「そんな顔しないでよ。僕、魔法を教えたことないし。あとは自分で練習してよ。僕はそろそろ帰らないといけないんだ。ほら、あの子も出てきたよ」
ユベール兄様が指差した方を見ると、ルーチェは分厚い本を2冊持って図書館から出てきたところだった。
急いで駆け寄って話しかけてみるけど、やっぱりダメみたい。
「――オロ、君も大変だね?」
「にゃう」
ユベール兄様は、僕が“オロ”って呼ばれるの嫌だってわかってて言ってるんだ。もう、やっぱりイジワルなんだ! 姉様が可哀相だよ!
「あれ、お子さんが生まれるんですか?」
ルーチェがユベール兄様の持ってる本を見て言う。
赤ちゃんの本なの?
「ああ、うん。生まれるのはまだ先だけどね。ついこの間、わかってさ」
「そうなんですか。おめでとうございます」
ユベール兄様はとっても嬉しそうに笑って、ルーチェに「ありがとう」って言った。
「にゃー?」
「そうだよ。大丈夫、僕の可愛い奥さんもちょっと悪阻がつらそうだけど、元気だから」
そっか。赤ちゃんが生まれるんだ。姉様の赤ちゃん、僕も見たいな。
「じゃあ、僕は帰るよ。可愛い奥さんと女の子……あ、男の子も待ってるから」
え? 赤ちゃんは2人いるの?
いつ生まれるの?
いつ会えるの?
いっぱい聞きたいことがあったのに、ユベール兄様は手を振りながら走って帰っちゃった。
「不思議な人だったね」
「にゃー」
その後、ルーチェは重い本を持ちながら僕のことも抱っこしてくれた。やっぱり、ルーチェはあったかい。
ルーチェ、僕、絶対魔法を使えるようになるからね――…
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