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第四章 ウージスパイン魔術大学校
3/魔術研究棟 -9 魔術研究棟
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ウージスパイン魔術大学校、十二時の門。
優に身長の三倍はある鉄柵門の前に、俺たちは立っていた。
幸い、見張りの姿はない。
「さて、どうする。私だけであれば跳び越えても行けるが」
「大丈夫だ。皆、ちょっと離れててくれ」
「お前、まさか──」
神剣を抜き放つ。
そして、柄を握り締めながら、右手の人差し指と小指を立てた。
──キュボッ!
白き炎が揺らめき立ち、瞬時に刀身を成す。
俺は、白き神剣の二振りで、鉄柵の一部を溶断した。
鉄の蒸発する音が周囲に響き、斬り落とされた幾つかの鉄棒が、がらんがらんと音を立てる。
後には、人ひとりがくぐり抜けるのに十分な隙間が開いていた。
「これでいい」
「わ、わ、……すごい!」
「すごーい、でし!」
「……とんでもないやつに、とんでもない物を与えてしまったのではないか?」
全優科の敷地を走る。
魔術研究棟への道のりは覚えている。
長大な直線水路。
涼やかな壁泉。
それを囲むように張られた、広々とした芝生。
たった二日ぶりの風景がこんなにも懐かしく思えるのは、ここに戻ってくることは二度とないと覚悟していたからだろう。
やがて、無骨な建造物が見えてくる。
「──さーて、どうすっか」
「中には無辜の研究員たちも多くいるであろう。デイコスと研究員の判別がつかない以上、こちらから攻撃を仕掛けるわけにも行くまい。まず、出方を窺うべきだ」
ヘレジナの言葉は当を得ている。
「わかった。プル、扉を開けてくれるか」
「う、……うん!」
プルが、扉に埋め込まれた半輝石に触れる。
だが──
「……あ、開かない。か、か、回路を切ってある、……みたい」
「わかった」
であれば、仕方あるまい。
「悪い、また下がっててくれ」
三人を下がらせ、灰燼術で再び神剣の刃を成す。
そして、今度は円形に扉を穿った。
円の中央を蹴り抜くと、扉に丸い穴が開く。
「行くぞ」
「もはや、何でもありであるな……」
扉の穴をくぐり、魔術研究棟へと侵入する。
灯術の明かりが目を灼いた。
ホールにいた人々が、ざわめく。
「──な、なんだ、君たちは!」
一人の研究員が、俺たちと距離を取りながら、誰何の声を上げる。
「イオタ=シャン、並びにツィゴニア=シャンを迎えに来ました」
そう言った瞬間、
──ぴたり、と、ざわめきが止んだ。
人々の顔に、驚愕、そして悲観が浮かぶ。
研究員の誰かが、叫んだ。
「こいつ──カタナ=ウドウだッ!」
「な──」
「……カタナ=ウドウだって!?」
ホールが混乱に満たされる。
「ま、待て!」
ヘレジナが、慌てて皆を諫める。
「我々は、デイコスに囚われたイオタとツィゴニアを助け出しに来ただけだ! お前たちに危害を加えるつもりはない!」
「どうして! 何故、こんなところに!」
「すべて上手く行くはずだった、それなのに……!」
「──…………」
俺は、灰燼術によって神剣の刃を成し、
──柱の一本を、叩き斬った。
「黙れ。動くな。許可なく喋ればデイコスと見なす」
ホールが沈黙に包まれる。
「そこのヒゲ面」
「──は、はひッ!」
「イオタとツィゴニアは、この魔術研究棟にいるか」
「い……、います……」
「どこだ」
「ち、地下……」
「案内しろ」
「ぼ、……僕ですかァ?」
男性研究員が、周囲を見渡す。
だが、他の研究員たちは、揃って目を逸らした。
「う、う……」
男性研究員が、震える足で、俺たちを案内しようとしたときのことだ。
「──やあ、やあ、やあ! カタナ=ウドウ君ではないか!」
ホールの奥から白衣を着た長身の男性が現れた。
「ぱ、パラガン教授……!」
「ははは、参観会の武術大会では大暴れだったね! たいへん興味深く拝見させてもらったよ! ところで、こんなところでも大暴れしているようだが?」
「イオタとツィゴニアを探している」
パラガンと呼ばれた男が、鷹揚に腕を開いた。
「ああ、彼らなら〈遊びに〉来ているとも! 何か問題でもあったかな」
「迎えに来た。案内してくれ」
「ああ、いいともいいとも。こちらへどうぞ」
俺たちに背を向け、パラガンが歩き出す。
案内すると言うからには、ついていくより他にない。
優に身長の三倍はある鉄柵門の前に、俺たちは立っていた。
幸い、見張りの姿はない。
「さて、どうする。私だけであれば跳び越えても行けるが」
「大丈夫だ。皆、ちょっと離れててくれ」
「お前、まさか──」
神剣を抜き放つ。
そして、柄を握り締めながら、右手の人差し指と小指を立てた。
──キュボッ!
白き炎が揺らめき立ち、瞬時に刀身を成す。
俺は、白き神剣の二振りで、鉄柵の一部を溶断した。
鉄の蒸発する音が周囲に響き、斬り落とされた幾つかの鉄棒が、がらんがらんと音を立てる。
後には、人ひとりがくぐり抜けるのに十分な隙間が開いていた。
「これでいい」
「わ、わ、……すごい!」
「すごーい、でし!」
「……とんでもないやつに、とんでもない物を与えてしまったのではないか?」
全優科の敷地を走る。
魔術研究棟への道のりは覚えている。
長大な直線水路。
涼やかな壁泉。
それを囲むように張られた、広々とした芝生。
たった二日ぶりの風景がこんなにも懐かしく思えるのは、ここに戻ってくることは二度とないと覚悟していたからだろう。
やがて、無骨な建造物が見えてくる。
「──さーて、どうすっか」
「中には無辜の研究員たちも多くいるであろう。デイコスと研究員の判別がつかない以上、こちらから攻撃を仕掛けるわけにも行くまい。まず、出方を窺うべきだ」
ヘレジナの言葉は当を得ている。
「わかった。プル、扉を開けてくれるか」
「う、……うん!」
プルが、扉に埋め込まれた半輝石に触れる。
だが──
「……あ、開かない。か、か、回路を切ってある、……みたい」
「わかった」
であれば、仕方あるまい。
「悪い、また下がっててくれ」
三人を下がらせ、灰燼術で再び神剣の刃を成す。
そして、今度は円形に扉を穿った。
円の中央を蹴り抜くと、扉に丸い穴が開く。
「行くぞ」
「もはや、何でもありであるな……」
扉の穴をくぐり、魔術研究棟へと侵入する。
灯術の明かりが目を灼いた。
ホールにいた人々が、ざわめく。
「──な、なんだ、君たちは!」
一人の研究員が、俺たちと距離を取りながら、誰何の声を上げる。
「イオタ=シャン、並びにツィゴニア=シャンを迎えに来ました」
そう言った瞬間、
──ぴたり、と、ざわめきが止んだ。
人々の顔に、驚愕、そして悲観が浮かぶ。
研究員の誰かが、叫んだ。
「こいつ──カタナ=ウドウだッ!」
「な──」
「……カタナ=ウドウだって!?」
ホールが混乱に満たされる。
「ま、待て!」
ヘレジナが、慌てて皆を諫める。
「我々は、デイコスに囚われたイオタとツィゴニアを助け出しに来ただけだ! お前たちに危害を加えるつもりはない!」
「どうして! 何故、こんなところに!」
「すべて上手く行くはずだった、それなのに……!」
「──…………」
俺は、灰燼術によって神剣の刃を成し、
──柱の一本を、叩き斬った。
「黙れ。動くな。許可なく喋ればデイコスと見なす」
ホールが沈黙に包まれる。
「そこのヒゲ面」
「──は、はひッ!」
「イオタとツィゴニアは、この魔術研究棟にいるか」
「い……、います……」
「どこだ」
「ち、地下……」
「案内しろ」
「ぼ、……僕ですかァ?」
男性研究員が、周囲を見渡す。
だが、他の研究員たちは、揃って目を逸らした。
「う、う……」
男性研究員が、震える足で、俺たちを案内しようとしたときのことだ。
「──やあ、やあ、やあ! カタナ=ウドウ君ではないか!」
ホールの奥から白衣を着た長身の男性が現れた。
「ぱ、パラガン教授……!」
「ははは、参観会の武術大会では大暴れだったね! たいへん興味深く拝見させてもらったよ! ところで、こんなところでも大暴れしているようだが?」
「イオタとツィゴニアを探している」
パラガンと呼ばれた男が、鷹揚に腕を開いた。
「ああ、彼らなら〈遊びに〉来ているとも! 何か問題でもあったかな」
「迎えに来た。案内してくれ」
「ああ、いいともいいとも。こちらへどうぞ」
俺たちに背を向け、パラガンが歩き出す。
案内すると言うからには、ついていくより他にない。
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