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第四章 ウージスパイン魔術大学校
2/魔術大学校 -34 これが完成品だ!
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ドズマが、考え込むように腕を組む。
「しかし、どうだろうな。そこそこ美味いけど、これでエイザン黙らせられっかな……」
俺は、不敵に笑ってみせた。
「タコ焼きは、まだ完成してないぞ」
「え、そうなんですか?」
「タコ焼き専用ってわけでもないが、定番の調味料があるんだよ」
「ああ、それで、砂糖だの果実酢だの瓶詰めのソースだの持ってきてたのか」
「その通り」
材料となりそうなものを、片っ端から机に置いていく。
「タコ焼きに使う調味料は、二種類。マヨネーズとソースだ」
鰹節も欲しいところだが、さすがに存在しないだろう。
「マヨネーズ、ですか。初めて聞く調味料だ」
「ソースって、随分幅が広いな。そのガンビーズソースでいいのか?」
「マヨネーズは材料覚えてるからなんとか行ける、……はず。ソースのほうは、うちの地元ではただソースって言えばそれを指すから、名前らしい名前ってよく知らないんだよな。ガンビーズソースと風味は似てるから、ここから魔改造するぞ」
ドズマが頷く。
「じゃ、ソースから行くか。一から作るよか早いだろ」
「ああ」
ペーストを湿らせたようなガンビーズソースをスプーンでボウルに落とし、指で舐める。
「……塩辛い」
「そのソースはどんな味なんですか?」
「甘味と酸味があって、甘味が強めだな。砂糖とリンゴ酢でも混ぜてみるか。イオタ、混ぜたものメモってくれるか。良いものができたとして、再現性は必要だろ」
「はい、わかりました」
イオタが机からノートを取り出し、鉛筆で材料を記入していく。
それを横目に、ガンビーズソースに砂糖とリンゴ酢を軽く混ぜ、味を調える。
「……ちょっと甘すぎるかな」
「塩でも足すか?」
用意した材料を、思いついた通りに足していく。
最初は不可能と思われたが、案外なんとかなるもので、
「──これ、近いわ。すげー近い」
やがて、味も香りもよく似たソースが完成した。
「どれ」
ドズマとイオタがソースを指に取り、舐める。
「あ、これ行けるな。タコ焼きにこれだけ塗っても美味そう」
「たしかに。ありそうでなかったソースと言いますか……」
ソースの入ったボウルを取り置く。
「じゃ、最後にマヨネーズだな。これはわりと簡単で、卵の黄身、酢、塩、コショウ、そして植物油。これを適当な分量で、乳化しながら混ぜるだけだ」
ドズマが眉をひそめる。
「……材料だけ聞いたら不味そうなんだが」
「まあ、食べてのお楽しみだな」
ソースとは別のボウルに材料を取り、味見をしながらマヨネーズを作り上げていく。
しばらくすると、納得の行くマヨネーズが完成した。
「ほら、これがマヨネーズ」
ドズマにボウルを差し出す。
「……すっぱそう」
「酸味は強いが、言うほどじゃあない。酢を少なめにしたからまろやかな仕上がりだ」
ドズマが、恐る恐る、マヨネーズの一部を操術で口へと運ぶ。
「──…………」
「どうです?」
「お前も舐めてみ」
マヨネーズを指に取り、それをくわえたイオタが、目を見開いた。
「あ、美味しいかも……」
「だよな。味の想像がまったくつかなかったんだが、悪くない」
「だろ?」
マヨネーズは好みが分かれるから、気に入ってもらえてよかった。
「で、さっきのタコ焼きに、この二つの調味料を塗るわけだ。印象、ぜんぜん変わるはずだぞ」
「りょーかい」
慣れた手順で、二人がタコ焼きを作り上げる。
そして、完成したソースとマヨネーズを塗りたくり、火傷に注意して口へ入れた。
サクッ。
「!」
「……!」
顔を見合わせた二人が、目をまるくして頷き合う。
「どうだ、完成品は」
「これ美味いぞ! かなり!」
「はい! これなら票稼げますよ!」
「そうかそうか」
うんうんと頷き、完成版のタコ焼きを口へと運ぶ。
「──よし、良い出来だ。まさか、こっち来てタコ焼き食べられるとはなあ」
豆醤に続いて、里心のつくものを口にしてしまった。
「でもよ。これ、タコいるか? このままでよくねえ?」
「気付いてしまったか……」
出汁が入っていないせいで、タコとの親和性が悪くなっている。
有り体に言えば、タコを入れる必要がないのだ。
「まあ、もともと生地と調味料がメインの料理だからな。タコはあってもなくても」
「タコ焼きなのに」
「こういう形状の食べ物をタコ焼きって呼んでるだけだから」
実際、タコ焼きパーティーなどでは、タコ不在のタコ焼きが量産される。
タコが入っているか否かは重要ではないのだ。
「なら、名前変えとくか。仮で銀組焼きとかに」
ドズマの案に、俺とイオタが頷く。
「いいじゃないですか、銀組焼き」
「わかりやすくていいじゃん。明日はそれでプレゼンしてみっか」
「ああ。エイザンの度肝抜いてやろうぜ!」
「おう!」
「おー!」
イオタとドズマは美味しいと言ってくれたが、クラスメイトたちはどう感じるだろう。
不安と期待の双方が入り混じる中、俺とイオタはドズマを見送り、本日の修練を開始するのだった。
「しかし、どうだろうな。そこそこ美味いけど、これでエイザン黙らせられっかな……」
俺は、不敵に笑ってみせた。
「タコ焼きは、まだ完成してないぞ」
「え、そうなんですか?」
「タコ焼き専用ってわけでもないが、定番の調味料があるんだよ」
「ああ、それで、砂糖だの果実酢だの瓶詰めのソースだの持ってきてたのか」
「その通り」
材料となりそうなものを、片っ端から机に置いていく。
「タコ焼きに使う調味料は、二種類。マヨネーズとソースだ」
鰹節も欲しいところだが、さすがに存在しないだろう。
「マヨネーズ、ですか。初めて聞く調味料だ」
「ソースって、随分幅が広いな。そのガンビーズソースでいいのか?」
「マヨネーズは材料覚えてるからなんとか行ける、……はず。ソースのほうは、うちの地元ではただソースって言えばそれを指すから、名前らしい名前ってよく知らないんだよな。ガンビーズソースと風味は似てるから、ここから魔改造するぞ」
ドズマが頷く。
「じゃ、ソースから行くか。一から作るよか早いだろ」
「ああ」
ペーストを湿らせたようなガンビーズソースをスプーンでボウルに落とし、指で舐める。
「……塩辛い」
「そのソースはどんな味なんですか?」
「甘味と酸味があって、甘味が強めだな。砂糖とリンゴ酢でも混ぜてみるか。イオタ、混ぜたものメモってくれるか。良いものができたとして、再現性は必要だろ」
「はい、わかりました」
イオタが机からノートを取り出し、鉛筆で材料を記入していく。
それを横目に、ガンビーズソースに砂糖とリンゴ酢を軽く混ぜ、味を調える。
「……ちょっと甘すぎるかな」
「塩でも足すか?」
用意した材料を、思いついた通りに足していく。
最初は不可能と思われたが、案外なんとかなるもので、
「──これ、近いわ。すげー近い」
やがて、味も香りもよく似たソースが完成した。
「どれ」
ドズマとイオタがソースを指に取り、舐める。
「あ、これ行けるな。タコ焼きにこれだけ塗っても美味そう」
「たしかに。ありそうでなかったソースと言いますか……」
ソースの入ったボウルを取り置く。
「じゃ、最後にマヨネーズだな。これはわりと簡単で、卵の黄身、酢、塩、コショウ、そして植物油。これを適当な分量で、乳化しながら混ぜるだけだ」
ドズマが眉をひそめる。
「……材料だけ聞いたら不味そうなんだが」
「まあ、食べてのお楽しみだな」
ソースとは別のボウルに材料を取り、味見をしながらマヨネーズを作り上げていく。
しばらくすると、納得の行くマヨネーズが完成した。
「ほら、これがマヨネーズ」
ドズマにボウルを差し出す。
「……すっぱそう」
「酸味は強いが、言うほどじゃあない。酢を少なめにしたからまろやかな仕上がりだ」
ドズマが、恐る恐る、マヨネーズの一部を操術で口へと運ぶ。
「──…………」
「どうです?」
「お前も舐めてみ」
マヨネーズを指に取り、それをくわえたイオタが、目を見開いた。
「あ、美味しいかも……」
「だよな。味の想像がまったくつかなかったんだが、悪くない」
「だろ?」
マヨネーズは好みが分かれるから、気に入ってもらえてよかった。
「で、さっきのタコ焼きに、この二つの調味料を塗るわけだ。印象、ぜんぜん変わるはずだぞ」
「りょーかい」
慣れた手順で、二人がタコ焼きを作り上げる。
そして、完成したソースとマヨネーズを塗りたくり、火傷に注意して口へ入れた。
サクッ。
「!」
「……!」
顔を見合わせた二人が、目をまるくして頷き合う。
「どうだ、完成品は」
「これ美味いぞ! かなり!」
「はい! これなら票稼げますよ!」
「そうかそうか」
うんうんと頷き、完成版のタコ焼きを口へと運ぶ。
「──よし、良い出来だ。まさか、こっち来てタコ焼き食べられるとはなあ」
豆醤に続いて、里心のつくものを口にしてしまった。
「でもよ。これ、タコいるか? このままでよくねえ?」
「気付いてしまったか……」
出汁が入っていないせいで、タコとの親和性が悪くなっている。
有り体に言えば、タコを入れる必要がないのだ。
「まあ、もともと生地と調味料がメインの料理だからな。タコはあってもなくても」
「タコ焼きなのに」
「こういう形状の食べ物をタコ焼きって呼んでるだけだから」
実際、タコ焼きパーティーなどでは、タコ不在のタコ焼きが量産される。
タコが入っているか否かは重要ではないのだ。
「なら、名前変えとくか。仮で銀組焼きとかに」
ドズマの案に、俺とイオタが頷く。
「いいじゃないですか、銀組焼き」
「わかりやすくていいじゃん。明日はそれでプレゼンしてみっか」
「ああ。エイザンの度肝抜いてやろうぜ!」
「おう!」
「おー!」
イオタとドズマは美味しいと言ってくれたが、クラスメイトたちはどう感じるだろう。
不安と期待の双方が入り混じる中、俺とイオタはドズマを見送り、本日の修練を開始するのだった。
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