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番外編(本編の内容とは少し異なります。時系列バラバラです)
⑦お姫様に憧れて(スフレside)
しおりを挟む生まれた時から体が弱かった。
よく熱を出し、体が痛くなるほど咳が止まらない時もあった。
お母様とは毎日一緒に居るけれど、お父様は仕事で忙しく毎日会う事が出来ずに寂しい思いをしていた。
けれど仕事が休みの日にはスフレにプレゼントを持って会いに来てくれた。
抱っこをしてもらったり、二人に挟まれながら絵本を読んだり話をしたりと、とても幸せだった。
それと二つ離れた姉がいることは知っていた。
何故、一緒に暮らさないのかと聞くと、お母様は悲しそうな顔で笑うとこう言った。
「いつか必ず、一緒に暮らせる日が来るわ」と。
スフレは高熱に魘されてベッドから出られない日もあったが体調が良くなると外で走り回って遊んだ。
お母様とクッキーを作ったり、刺繍を習ったり、美味しいご飯を沢山食べた。
お父様は最近お洒落に興味を持ったからと可愛いドレスをプレゼントしてくれた。
そんな両親が大好きだった。
「スフレもお父様の住んでいる所に行ってみたいわ!」
「スフレ……」
「お姉様ばかりお父様と一緒にいられてずるいもの!」
「…………」
「それにわたしもお姉様に会いたいわ!」
姉のリオノーラの話をすると、両親は必ず困った顔をする。
それでも本邸で暮らすことに憧れがあったからか、何度か両親に頼んでいたが首を横に振るだけだった。
そんな時だった。
侍女達が姉であるリオノーラの話をしているのを、こっそりと聞いてしまった。
『また、ドレスと宝石を強請った』
『我儘を言って皆を困らせている』
『意地悪で大嫌い』
どうやらリオノーラが"我儘お嬢様"として嫌われていたのだ。
(私のお姉様って、そんなに我儘なのかな……)
少しリオノーラに会うのが不安になった。
*
今日はお母様が友達から手紙を貰い、リオノーラに会いにいくのだと言っていた。
「スフレ行きたい」と言ったが「今回はダメよ」と言われて頷いた。
初めて屋敷でこんなに長い間、一人で過ごした。
(…………お母様、まだ帰ってこない)
寂しくて外でお母様が帰ってくるのを待っていた。
けれど日が落ちて暗くなってもお母様は帰ってこなかった。侍女に連れられて部屋で涙を流していると、侍女が帰ってきたと教えてくれた。
嬉しくて堪らなかった。
そして一人で過ごせた事をお母様に褒めてもらおうと急いで玄関に駆けていく。
「おかえりなさい、お母様!」
玄関には悲しげな表情を浮かべ、目を真っ赤に腫らした母の姿があった。
「お母様、どうしたの?」
「……スフレ、遅くなってごめんなさい」
問いかけても、お母様は何も答えてくれなかった。
もしかしたら『リオノーラ』と、何かあったのかもしれないと……そう思った。
「お母様、かなしいの?」
「……そうね」
「どこか、痛い?」
母は静かに首を振る。
そしていつもより強い力でスフレを抱きしめた。
「……お母様?」
「ごめんなさいっ」
「お姉様は、やっぱりワガママだったの?」
「───違うわッ!」
大きな声を出した母にビクリと肩を揺らした。
「違うの、スフレ……あなたのお姉様は我儘なんかじゃないわ!」
「あ……」
「ごめんなさい!ごめんね……っ!全部私達のせいだわ……本当にごめんなさい」
何度も何度も謝っていた。
それは誰かに言っているような気がした。
お母様は侍女に支えられながらフラフラと歩いていった。
もう夜も遅かった為、侍女に連れられて部屋に戻った。
モヤモヤとした気持ちを抱えたまま、お父様に貰ったぬいぐるみをギュッと抱きしめた。
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