上 下
31 / 56
番外編(本編の内容とは少し異なります。時系列バラバラです)

命の炎6

しおりを挟む
ゾイが何を言いたいのか分かったのかリオノーラは静かに頷いた。
一緒に居ると忘れてしまいそうになるが、精霊の存在は人間とは別で異質なのだ。


「……精霊は力を貸してくれるし自分の一番近くにいてくれる。けれど生きる時間も違うし、持ってる力も違う。勿論、本質的に悪さをしてしまう精霊だっている」

「ゾイ様……」

「彼らはいつも近くにいてくれるけれど、とても遠い所にいるのよね」



リオノーラはゾイにもう少し詳しく話を聞こうと問いかけようとした時だった。


「ーーーユーリンッ!」

「あっ……デリック」


珍しく酷く焦った様子のデリックが走ってきて、目の前を通り過ぎると真っ直ぐユーリンの元へ向かった。
そしてユーリンを強く抱きしめた後、何もない事を確認しするように体をペタペタ触ると安心したように息を吐き出した。


「良かった……!ユーリン」

「デリック、そんなに急いでどうしたの?」

「どうしたじゃない!急に居なくなるから心配したんだぞっ!?」


デリックは半ば怒鳴るようにユーリンに言った。
ユーリンはあまりの勢いに肩をびくりと揺らす。
すかさず大きくなったマリクソンがデリックとユーリンの間に入った。
そんなマリクソンを掻き分けながらデリックは大声を上げた。


「ッ、研究室にも薬草園にも居なくて……!」

「ご、ごめん……リオノーラが診療所に行くって言うから俺も行きたくてつい……」

「本当に、すごく心配したんだぞ……っ!?」

「でも……ちゃんと、父さんには報告したし」

「ユーリンが無事で良かった!」

「デリック……恥ずかしいよ」


デリックはユーリンの体を抱きしめている。
リオノーラそんな二人のやり取りをポカンと口を開けながら見ていた。
ゾイが困ったように微笑みながら「普段は隠してるけど、デリックは重度のブラコンなのよ」と苦笑いしながら呟いた。
ユーリンがデリックの事が大好きなのだと思っていたが、どうやらデリックの方がユーリンに依存気味のようだ。
リオノーラは温かい目で二人の可愛らしい姿を眺めて、うんうんと頷いていた。


「確かにユーリンは危なっかしくて守ってあげたい気持ちになるわよね」

「えッ……!?」

「それにデリックも普段は強がっていてもユーリンが居ないと不安になったり……意外と寂しがりやなのね!」

「……はぁ!?」

「二人共、まだまだ可愛らしいですね!ゾイ様」

「ふふっ、そうね」

「「!?!?」」


リオノーラがそう笑うとゾイは震えながら隣で吹き出している。
それを見てデリックとユーリンはポカンと口を開いた。


「ぶっ……!」

「「…………」」


目を見開いて放心状態で此方を見ているデリックとユーリンを見ていたリオノーラは生意気だった二人の姿を思い出してしみじみしていた。
ゾイが話題を変えるように口を開いた。


「それよりリオノーラ、しっかりと目元を冷やした方がいいわ。腫れが次の日に残っちゃうわよ?明日はパーティーでしょう?」

「あっ、そうですね。ユーリン、今日は本当にありがとう……!また、ゆっくり話しましょう」

「あっ……うん」

「ふふ、デリックもね」

「………………」

「では、失礼致します」


綺麗にお辞儀をしてリオノーラはメメと共に去っていく。
そんな後ろ姿をデリックとユーリンは複雑な気持ちで見送っていた。
今回のリオノーラの言葉でで全くもって異性として意識されてないどころか、可愛らしい、守ってあげたいと言われて二人で驚いていた。

リオノーラにとっては、危なっかしいユーリンと、寂しがりやのデリック……そしてトドメの一撃は"二人ともまだまだ可愛らしい"だ。

出会った時と何も変わらず、リオノーラだけは自分達を子供扱いしてくる。

((やっぱりフェリ兄が特別なんだ……))

唇を噛む二人を見てゾイはそっと背中を押した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

【完結】公女が死んだ、その後のこと

杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】 「お母様……」 冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。 古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。 「言いつけを、守ります」 最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。 こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。 そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。 「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」 「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」 「くっ……、な、ならば蘇生させ」 「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」 「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」 「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」 「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」 「まっ、待て!話を」 「嫌ぁ〜!」 「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」 「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」 「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」 「くっ……!」 「なっ、譲位せよだと!?」 「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」 「おのれ、謀りおったか!」 「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」 ◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。 ◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。 ◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった? ◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。 ◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。 ◆この作品は小説家になろうでも公開します。 ◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!

【完結】悪役令嬢エヴァンジェリンは静かに死にたい

小達出みかん
恋愛
私は、悪役令嬢。ヒロインの代わりに死ぬ役どころ。 エヴァンジェリンはそうわきまえて、冷たい婚約者のどんな扱いにも耐え、死ぬ日のためにもくもくとやるべき事をこなしていた。 しかし、ヒロインを虐めたと濡れ衣を着せられ、「やっていません」と初めて婚約者に歯向かったその日から、物語の歯車が狂いだす。 ――ヒロインの身代わりに死ぬ予定の悪役令嬢だったのに、愛されキャラにジョブチェンしちゃったみたい(無自覚)でなかなか死ねない! 幸薄令嬢のお話です。 安心してください、ハピエンです――

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

悪役令嬢に転生したので、すべて無視することにしたのですが……?

りーさん
恋愛
 気がついたら、生まれ変わっていた。自分が死んだ記憶もない。どうやら、悪役令嬢に生まれ変わったみたい。しかも、生まれ変わったタイミングが、学園の入学式の前日で、攻略対象からも嫌われまくってる!?  こうなったら、破滅回避は諦めよう。だって、悪役令嬢は、悪口しか言ってなかったんだから。それだけで、公の場で断罪するような婚約者など、こっちから願い下げだ。  他の攻略対象も、別にお前らは関係ないだろ!って感じなのに、一緒に断罪に参加するんだから!そんな奴らのご機嫌をとるだけ無駄なのよ。 もう攻略対象もヒロインもシナリオも全部無視!やりたいことをやらせてもらうわ!  そうやって無視していたら、なんでか攻略対象がこっちに来るんだけど……? ※恋愛はのんびりになります。タグにあるように、主人公が恋をし出すのは後半です。 1/31 タイトル変更 破滅寸前→ゲーム開始直前

婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。

待鳥園子
恋愛
婚約者が病弱な妹を見掛けて一目惚れし、私と婚約者を交換できないかと両親に聞いたらしい。 妹は清楚で可愛くて、しかも性格も良くて素直で可愛い。私が男でも、私よりもあの子が良いと、きっと思ってしまうはず。 ……これは、二人は悪くない。仕方ないこと。 けど、二人の邪魔者になるくらいなら、私が家出します! 自覚のない純粋培養貴族令嬢が腹黒策士な護衛騎士に囚われて何があっても抜け出せないほどに溺愛される話。

三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃

紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。 【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。