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しかし毒属性は未知な魔法で、その性質上とイメージから恐怖を与え易く、その事でドウェインはずっと傷ついてきた。

きっと、この後ドウェインは酷く落ち込んでしまうだろう。
それが分かっていたからこそ、敢えてドウェインの手に頬を擦り寄せたのだ。
ドウェインに触れる事は怖くないのだと知って欲しかったのかもしれない。

(……この手は、絶対にわたくしを傷付けないわ)

ドウェインは震える手をそっと伸ばして後にすぐに下げた。


「ごめん、なさい……マデリーン様」

「大丈夫ですわ。寧ろ掃除がし易くなりましたもの……ね?」


笑顔を浮かべると侍女達に問いかけると皆、首を縦に振った。
顔を上げたドウェインは申し訳なさそうにしている。


「……マデリーン様」

「わたくしを守ろうとしてくれたのですね……ありがとうございます。ドウェイン様」


今にも泣きそうなドウェインを慰めるように頬に指を滑らせた。


「…………ローズマリー様を玄関まで送って差し上げて」

「ですが、お嬢様……!騎士団に連絡をした方が!!」

「それよりもお父様に連絡して……今すぐに」

「そう、ですわね……そう致しましょう」

「かしこまりました」


侍女達は力強く頷き、ローズマリーの腕を引いて無理矢理立たせた後にグイグイと背を押した。
今度は抵抗する事なく、大人しく玄関へと向かったようだ。

本当は手際よく連絡をしたい所ではあるが、それでは簡単に終わってしまう。
それに少々意地悪ではあるが此方の方がローズマリーにとっては辛い事になるだろう。
そして、それはパトリックも同じだ……。

(ローズマリー様には……己の罪をキチンと自覚してもらいましょう)

静まり返った部屋の中でスッと体を離した。
ドウェインは顔を真っ青にして口元を押さえてから、小さく首を横に振っている。


「…………申し訳、ございません」

「いいえ……」

「傷付けるつもりはなかったのですが、マデリーン様の事を言われて……つい、感情的になってしまいました」

「ドウェイン様……」

「………どうして、僕は」


唇を噛むドウェインをそっと包み込むように抱き締めた。
彼の不安や恐怖が少しでも和らげばと思ったからだ。


「大丈夫ですわ」

「……!!」

「わたくしはこの手が好きです……優しい手ですから」


そう言うと、ドウェインの硬くなっていた表情が少しだけ和らいだ気がした。
枯れた花びらの上に立ちながら、二人で笑い合っていた。

(良かった……いつものドウェイン殿下だわ)

ふと枯れた花びらの茶色の廊下の上、足を引き摺りながら歩こうとすると、ドウェインが抱き抱えてくれた。


「きゃ……!?」

「どこか、行きたいところがあるのですか?」

「ドウェイン様が持って来て下さった花束を……」

「……!!」


ドウェインが部屋の中に入りベッドに体を下ろした後、踵を返してから花束を拾い上げた。
ドウェインがその場に跪いて花束を此方に渡した。
どうやらこの向日葵の花束だけは枯れずにいてくれたようだ。


「ありがとうございます、ドウェイン殿下……!」

「すみません……少し枯れてしまいました」

「花瓶に生けたら元気になりますわ」

「はい……後でお部屋を掃除してもらわないとですね」

「……ふふっ、そうですわね」


先程も言った通り、ドウェインのお陰でボリュームがなくなり掃除がしやすくなったようだ。


「今日は……お見苦しいところを見せて申し訳ございません」

「……いえ」

「貴女に伝えたい事があって参りました」

「ドウェイン殿下……?」

「卒業パーティーの前に伝えられたら……そう思いました」


顔を真っ赤にしながら視線を逸らしたドウェインを見て「もう嘘をつきたくない」そう思った。


「………わたくしも」

「え……?」

「わたくしも、ドウェイン様に伝えたい事があるんです……!」


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