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「おかしいのは其方だ」と、声を大にして言ってやりたいところではあるが、パトリックと婚約を解消した以上、もう何の感情も湧かなかった。
今まで何があっても耐えてきたのは、昔の約束と王妃という立場への執着、それとプライドにしがみついていたからだ。
「……わたくしにはよく分かりませんが、お父様に聞く限りではわたくしと殿下は、もう無関係ですのでローズマリー様の好きになさったら良いのではないでしょうか?」
和やかに言うと、ローズマリーはパァっと顔を輝かせた。
「そうですよね!ありがとうございます、マデリーン様……!すぐにパトリック殿下に報告しに行かなくちゃ!パトリック殿下ってば、私に"いつでも会いに来ていい"って言ってくれたんですよ!フフッ、きっと喜ぶわ」
「……そうなのですねぇ、それはそれは」
「数日前からお父様も怒ってばかりいるし、変だなって思ってたんですけど…………やっぱり『あの本』の通り、私は王子様と結ばれるんだわ!!」
「……!?」
『あの本』という言葉が妙に引っ掛かっていた。
何故だか自分の手元にあった日記帳が頭に思い浮かび、ローズマリーにどんな本か問いかけようとした時だった。
「ローズマリー様、あの本とは……っ」
「それにマデリーン様がこんなに良い人だったなんて、気付きませんでした!これからは仲良く出来そうですねッ!」
「…………えぇ、そうね」
再び遮られる言葉に息が詰まる。
ローズマリーにとって"良い人"とは、恐らく都合よく動いている人を指すのだろう。
それでも男性は、このような無垢で可愛らしい女性が好きなのかと思うと複雑な気分だ。
此方から見ると、この無知さが何の役に立つのか分からない。
やはり自分はここまで出来そうにないなと思っていた。
そんなローズマリーは急に手を握りながら嬉しそうにブンブンと振っている。
そろそろ彼女の相手をするのも、表情も作り込むのも疲れたと思っていた時だった。
「………これは、一体ッ!?君は何をしているんだ」
少し離れた場所に目を見開いて驚いているドウェインが立っていた。
向日葵の花束がパサリと地面に落ちる。
直ぐにドウェインの元へ向かいたかったが、ローズマリーに手を握られている為、不可能だった。
それに今はローズマリーと仲が良いフリをしなければならない。
ピクピクと痙攣する筋肉を動かしながら、ヘラリと笑みを浮かべた。
「ごきげんよう、ドウェイン殿下!ドウェイン殿下はご存知かもしれませんが、此方はわたくしの友人の……」
「ーーー今すぐマデリーン様から離れろっ……!!」
「痛っ……」
「……!?」
ドウェインは勢いよく部屋に入ると、ローズマリーの手を思いきり振り払った。
そして此方の体を引き寄せるようにして腰に手を回す。
突然の行動に「あの……」と声を上げたまま固まっていた。
ローズマリーと手が離れた代わりにドウェインの胸の中である。
ドウェインから激しい怒りを感じて顔を上げた。
いつもの優しい筈の魔力は荒々しく肌に突き刺さるようだと思った。
初めて見る彼の厳しい表情に驚きを隠せなかった。
「……っ、よくも平然とマデリーン様の前に顔を出せたなッ!」
「えっ……私ですか!?そんなに怒って、一体どうしたんですか!?」
「君がっ……マデリーン様の幸せを壊したんだぞ!?それなのにッ!!」
ドウェインはローズマリーに対して敵意を剥き出しにしている。
怒りが収まらないのか、肩が上下に揺れている。
"幸せを壊した"
ドウェインには、そう見えているのだろうか。
「ひっ、ひどいです……!」
「……」
「……私ッ、何もしてません!!」
瞳を潤ませて周囲に助けを求めるように訴えかけているが、此処には誰一人としてローズマリーを助けるものは居ない。
むしろドウェインの言う通りだと言わんばかりに頷いている。
今まで何があっても耐えてきたのは、昔の約束と王妃という立場への執着、それとプライドにしがみついていたからだ。
「……わたくしにはよく分かりませんが、お父様に聞く限りではわたくしと殿下は、もう無関係ですのでローズマリー様の好きになさったら良いのではないでしょうか?」
和やかに言うと、ローズマリーはパァっと顔を輝かせた。
「そうですよね!ありがとうございます、マデリーン様……!すぐにパトリック殿下に報告しに行かなくちゃ!パトリック殿下ってば、私に"いつでも会いに来ていい"って言ってくれたんですよ!フフッ、きっと喜ぶわ」
「……そうなのですねぇ、それはそれは」
「数日前からお父様も怒ってばかりいるし、変だなって思ってたんですけど…………やっぱり『あの本』の通り、私は王子様と結ばれるんだわ!!」
「……!?」
『あの本』という言葉が妙に引っ掛かっていた。
何故だか自分の手元にあった日記帳が頭に思い浮かび、ローズマリーにどんな本か問いかけようとした時だった。
「ローズマリー様、あの本とは……っ」
「それにマデリーン様がこんなに良い人だったなんて、気付きませんでした!これからは仲良く出来そうですねッ!」
「…………えぇ、そうね」
再び遮られる言葉に息が詰まる。
ローズマリーにとって"良い人"とは、恐らく都合よく動いている人を指すのだろう。
それでも男性は、このような無垢で可愛らしい女性が好きなのかと思うと複雑な気分だ。
此方から見ると、この無知さが何の役に立つのか分からない。
やはり自分はここまで出来そうにないなと思っていた。
そんなローズマリーは急に手を握りながら嬉しそうにブンブンと振っている。
そろそろ彼女の相手をするのも、表情も作り込むのも疲れたと思っていた時だった。
「………これは、一体ッ!?君は何をしているんだ」
少し離れた場所に目を見開いて驚いているドウェインが立っていた。
向日葵の花束がパサリと地面に落ちる。
直ぐにドウェインの元へ向かいたかったが、ローズマリーに手を握られている為、不可能だった。
それに今はローズマリーと仲が良いフリをしなければならない。
ピクピクと痙攣する筋肉を動かしながら、ヘラリと笑みを浮かべた。
「ごきげんよう、ドウェイン殿下!ドウェイン殿下はご存知かもしれませんが、此方はわたくしの友人の……」
「ーーー今すぐマデリーン様から離れろっ……!!」
「痛っ……」
「……!?」
ドウェインは勢いよく部屋に入ると、ローズマリーの手を思いきり振り払った。
そして此方の体を引き寄せるようにして腰に手を回す。
突然の行動に「あの……」と声を上げたまま固まっていた。
ローズマリーと手が離れた代わりにドウェインの胸の中である。
ドウェインから激しい怒りを感じて顔を上げた。
いつもの優しい筈の魔力は荒々しく肌に突き刺さるようだと思った。
初めて見る彼の厳しい表情に驚きを隠せなかった。
「……っ、よくも平然とマデリーン様の前に顔を出せたなッ!」
「えっ……私ですか!?そんなに怒って、一体どうしたんですか!?」
「君がっ……マデリーン様の幸せを壊したんだぞ!?それなのにッ!!」
ドウェインはローズマリーに対して敵意を剥き出しにしている。
怒りが収まらないのか、肩が上下に揺れている。
"幸せを壊した"
ドウェインには、そう見えているのだろうか。
「ひっ、ひどいです……!」
「……」
「……私ッ、何もしてません!!」
瞳を潤ませて周囲に助けを求めるように訴えかけているが、此処には誰一人としてローズマリーを助けるものは居ない。
むしろドウェインの言う通りだと言わんばかりに頷いている。
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