18 / 24
番外編
真っ赤な薔薇を貴女に(マルナ&パルファン)
しおりを挟む赤い髪が好き
吊り上がった目が好き
男らしくて努力している姿が好き
一生懸命、騎士になろうとしている姿を見て心が熱くなる。
だんだん知っていく度に好きになっていく‥
兄の友人で騎士団長の息子、パルファン・ヒューレッド
マルナは恋をしていた。
でもそれは叶わない恋だった。
まだ何も分からなかった小さい頃、出来るだけパルファンの側に居たかったマルナは、用もないのに兄の元へ行っていた。
パルファンはマルナに優しく笑いかけてくれた。
それだけでも幼いマルナは天にも登る気持ちだった。
しかし成長していくに連れて、自分の王女という立場を理解していく。
(ずっと想いを隠し続けていこう‥)
マルナはそう思っていた。
そんな時、ローズレイ・ヒューレッドが転入してきた。
パルファンの妹だから‥そう思って近付いた。
そんなマルナに、とても嬉しそうに話しかけるローズレイを見ていると、胸が痛んだ。
モヤモヤした気持ちを抱えたままお茶会の約束をしたものの、マルナの心は晴れなかった。
実現したのは父と母に頼んでから暫く経った後だった。
薄ピンクのドレスを纏ったローズレイは、この世のものとは思えないほどに美しかった。
パルファンが好きだと伝えると、口をポカンと開けて驚くローズレイ。
そして、ずっと突き刺さっていたトゲのような罪悪感。
マルナは今日、ローズレイに言わなければならない事があった。
「本当にごめんなさい。こんな理由で話しかけた自分が情けなくなってしまったの‥」
マルナが謝るとローズレイは怒るどころか、優しくマルナに微笑んで許してくれた。
やっとローズレイと本当の友達になれた気がして、マルナは嬉しかった。
マルナは叶わない苦しい胸の内を誰かに聞いて欲しかったのかもしれない。
そんなマルナの考えを、ローズレイは一蹴してくれた。
「きっと‥運命は変わるわ!」
全力で、ぶつかっていい。
初めて言われた言葉に困惑はしてしまうのと同時に嬉しくて仕方なかった。
初めから諦めていたマルナに、ローズレイは勇気を与えてくれた。
この出来事が本当に運命を変える事になるとは、この時はまだ知る由もなかった。
「‥パルファン様!」
「マルナ王女‥」
「私は昔みたいに名前で呼んでほしいわ」
「はぁ‥どうしたんだ、マルナ」
「ふふ、ありがとうございます」
パルファンがマルナを妹のようにしか思ってない事も知っていた。
遠回しの好意はパルファンには全く意味が無い事にも気付いたマルナは、全力で想いを伝えていく事を選択した。
「今日も世界で一番素敵です!訓練頑張って下さいね」
「‥‥マルナ、俺は」
「分かってるわ、私が勝手に好きでいたいの‥」
「‥‥」
「困らせてしまってごめんなさい‥でも、私は後悔したくないの」
ローズレイの協力もあってか、マルナは本当に幸せな時間を過ごせた。
振り向いて欲しいなんて、そんな贅沢な事は思わない。
いずれパルファンも婚約者を作り、公爵家の跡を継ぐだろう。
年々、美しさに磨きが掛かり逞しく成長していくパルファン。
騎士として、公爵家の跡取りとして本当に立派に自分の責務を果たしている。
婚約者を作らないパルファンは、学園ではモテモテであった。
誇らしいようなハラハラするような‥そんな毎日を過ごしていた。
しかしある時、マルナに隣国の王子から結婚の申し込みが来た。
国王に呼び出され、告げられた時は胸が苦しくなった。
もう自分がパルファンを好きでいられる時間は、あと僅かだ。
隣国に嫁げば、マルナは国の代表として役割を果たさなければならない。
けれど不思議なもので、悲しみは全く無かった。
この想いを伝えられていなかったら、マルナはずっと後悔していただろう。
ローズレイには本当に感謝している。
前に進もう‥この気持ちをそっと胸に閉まって。
(‥‥パルファン様、好きでいさせてくれて本当にありがとう)
何も言わないでくれたのは、パルファンなりの優しさだろう。
もう全てを忘れて思い出にしなければならない。
そう思っていたのに‥
「‥‥俺と、結婚して欲しい」
「え‥‥」
一瞬、時が止まった。
パルファンがマルナの前に跪き、手の甲に口付ける。
薔薇に囲まれた公爵家の庭‥‥マルナは瞳に涙を溜めて首を振る。
「‥‥う、嘘よ」
「嘘じゃない」
「だって‥っ、ぅ」
涙を流すマルナを、そっとパルファンは抱きしめる。
そんな温かい体温を感じながら幸せに心を震わせていた。
「ずっと前から好きだったんだ」
「‥!?」
「いつ言おうか迷っていた‥マルナはいつも"私が好きなだけだから"と、言うものだから‥」
「パルファン様‥」
「タイミングが‥分からなかったんだ」
耳まで真っ赤にしたパルファンに、マルナは思わず笑ってしまった。
こんなにも愛おしく思える。
「パルファン様、私は‥」
「マルナが好きだ‥」
「‥‥っ!!」
「俺の気持ちを受け取ってくれないか?」
「勿論です‥!!」
END
大分前からマルナに気があったが、恥ずかしくて言えなかった模様です
23
お気に入りに追加
4,717
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
異世界で捨て子を育てたら王女だった話
せいめ
ファンタジー
数年前に没落してしまった元貴族令嬢のエリーゼは、市井で逞しく生きていた。
元貴族令嬢なのに、どうして市井で逞しく生きれるのか…?それは、私には前世の記憶があるからだ。
毒親に殴られたショックで、日本人の庶民の記憶を思い出した私は、毒親を捨てて一人で生きていくことに決めたのだ。
そんな私は15歳の時、仕事終わりに赤ちゃんを見つける。
「えぇー!この赤ちゃんかわいい。天使だわ!」
こんな場所に置いておけないから、とりあえず町の孤児院に連れて行くが…
「拾ったって言っておきながら、本当はアンタが産んで育てられないからって連れてきたんだろう?
若いから育てられないなんて言うな!責任を持ちな!」
孤児院の職員からは引き取りを拒否される私…
はあ?ムカつくー!
だったら私が育ててやるわ!
しかし私は知らなかった。この赤ちゃんが、この後の私の人生に波乱を呼ぶことに…。
誤字脱字、いつも申し訳ありません。
ご都合主義です。
第15回ファンタジー小説大賞で成り上がり令嬢賞を頂きました。
ありがとうございました。
実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~
空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」
氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。
「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」
ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。
成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。